憧れの鳥探しに挑戦! 第2回《アオシギを見つけ出せ》
Author:髙野丈(編集部)
こんにちは、文一総合出版編集部の髙野丈です。プロバードガイド・石田光史さんの新刊『旬の鳥、憧れの鳥の探し方』のテーマに合わせた憧れの鳥探しの実践編。第1回《ムギマキに会いたい!》では、憧れのムギマキを見つけ、興味深い観察も楽しめました。第2回となる今回は、見つけるのがとても難しいといわれるアオシギ探しに挑戦します。
*参照:
憧れの鳥探しに挑戦! 第1回《ムギマキに会いたい》
憧れの鳥探しに挑戦! 第3回《降りてこなかったトラツグミ》
憧れの鳥探しに挑戦! 第4回《シマエナガをかわいく撮りたい》
未だ見ぬ憧れの鳥、アオシギ
誌面で紹介している11月のミッションは5本。そのうち、わたしが見たことのない鳥は掲載順にカリガネ、トウゾクカモメ、アオシギの3種でした。トウゾクカモメは船で沖に出なければならないし、カリガネは東北あたりまで足を延ばさないと難しそう。アオシギは隠蔽色で環境に溶け込むようにカムフラージュしていて、見つけるのが難しい鳥です。鳥探しの達人である石田光史さんでも、見つからないことがたまにあるそう。鳥を見つけ出すのが好きなわたしとしては、かえってその難しさにそそられます。今回はアオシギ探しに挑戦することにしました。
探鳥地はこの本で紹介している奥日光(栃木県)にしました。アオシギが生息するであろう渓流を目指していると、ジュリンという聞き覚えのある地鳴きが。(マヒワかと思いつつ)確認してみるとベニヒワでした。北海道では2008年が当たり年で、300羽の大群に出会ったこともありましたが、わたしはそれ以降観察していません。関東ではなかなか見られない鳥です。
アオシギ探しのポイント
今回も誌面に掲載されている探し方の3つのポイントを参考にします。なんかこれ、3つの策を授けられているようで、虎の巻感があって楽しいです。
1 渓流沿いを歩きながら浅瀬を探す
水深のある場所では採食しにくいので、アオシギは浅瀬で行動するそうです。なるほど広いフィールドで、いる可能性のないところまで見ていては大変だし、時間がいくらあっても足りないですよね。
2 流木や岩の裏側は、角度を変えて必ず確認する
アオシギは隠蔽擬態(カムフラージュ)するので、同じ場所でも角度を変えて探すことが見つけ出すコツ。
3 肉眼で流し見せず、双眼鏡でじっくり探す
ふつうは鳥の動きやとまっている形を肉眼で見つけ、双眼鏡で確認するのが観察の流れです。だが、アオシギのカムフラージュを肉眼で見抜くのは達人でも困難。最初から双眼鏡を使い、アオシギがいそうな場所を満遍なく探すのだそうです。こりゃ、たいへんだ。
渓流の小鳥に怒られる?
スタート地点からガチの探索モード。どこにアオシギが潜んでいてもおかしくないような環境です。水深がある位置と流れが速いところはさっと見て、それ以外の位置を双眼鏡で丹念に探します。一応、最初は肉眼で探そうと試みました。たまにマヒワかベニヒワのジュリンという声が聞こえますが、上空を通過しているようでした。少し進むと渓流に飛び込む黒っぽい鳥の影。潜水したカワガラスが、なにかをくわえて上がってきました。カワガラスはもう1羽いて、石の上でじっと動きません。食べ物を与えられるのを待っているかのように見えました。もう1羽は何度も潜水し、獲物をくわえて上がってきますが、それを与えるでもなく、自分で食べているようす。もしかすると、狩りのようすを幼鳥に見せて、自立を促しているのかもしれません。
その後、チュッチュチュという地鳴きが連続して聞こえました。ミソサザイの地鳴きです。舌打ちのような音がウグイスの地鳴きにやや似ていますが、ウグイスがチャッチャッという乾いた音なのに対し、ミソサザイのそれは湿った音に聞こえます。ミソサザイはどうも通りすがりの人を威嚇するように、連続して鳴いているようす。果たしてわたしが通りかかったときも、目の前に出てきてチュッチュッチュッと地鳴きを続けました。繁殖期であれば、近くに巣があって子育てしているのだと見当がつくのでさっさと退散するところですが、今は11月。ミソサザイの生活史を考えると繁殖期は3~8月ですから、この行動は不可解です。温暖化が生態を変えているのか、単に気が強くて相手が人間だろうと臆さずになわばりから追い出そうとするのでしょうか。
ミッション未達成でも楽しい
渓流の鳥の興味深い行動を観察して楽しみましたが、今回のターゲットはアオシギ。探索を続けますが、なかなか見つかりません。渓流をさらに下流方向に歩いて探そうと思ったところ、思いがけないことに。渓流沿いの道が危険箇所がある関係で通行止めになっていました。これではどうしようもありません。歩ける範囲を丹念に探して一周しましたが、残念ながらアオシギを見つけることはできませんでした。スタート地点に戻り、「見落としてはいない。絶対、通行止めの区間にいるんだ」と自分に言い聞かせました。
今回の憧れの鳥探し実践編第2弾では、絶対見つけ出すと意気込んでいたアオシギを見つけることは残念ながらできませんでした。でも、見つけられなかったからこそ、いつか出会えたときの喜びがより一層大きくなるというもの。難しいからこそ楽しいのです。それに、お目当て以外の鳥の観察をたっぷり楽しむこともできました。当地はまもなく雪に閉ざされるでしょうから、再挑戦は来年になるでしょう。来シーズンの目標が一つ増えました。次回は、誌面で紹介している1月のミッションから、お目当ての鳥を選んで挑みたいと思います。
オンライントーク開催決定!
『旬の鳥、憧れの鳥の探し方』著者、石田光史さんの講演「プロバードガイド石田光史が語る 鳥探しの神髄」を開催します。
日時:2023年12月22日(金)19:00〜20:00
参加費無料。詳細・参加申込は以下Peatixのイベントページにてお願いいたします。
Author Profile
髙野丈
文一総合出版編集部所属。自然科学分野を中心に、図鑑、一般書、児童書の編集に携わる。その傍ら、2005年から続けている井の頭公園での毎日の観察と撮影をベースに、自然写真家として活動中。自然観察会やサイエンスカフェ、オンライントークなどを通してサイエンスコミュニケーションにも取り組んでいる。得意分野は野鳥と変形菌(粘菌)。著書に『探す、出あう、楽しむ 身近な野鳥の観察図鑑』(ナツメ社)、『世にも美しい変形菌 身近な宝探しの楽しみ方』(文一総合出版)、『井の頭公園いきもの図鑑 改訂版』(ぶんしん出版)、『美しい変形菌』(パイ・インターナショナル)、共著書に『変形菌 発見と観察を楽しむ自然図鑑』(山と溪谷社)がある。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?