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史上初!掲載種すべてが飛翔写真の、華麗な野鳥図鑑
Author:髙野丈(編集部)
掲載種すべてが飛翔写真! そんな野鳥図鑑を作ったら、編集した自分自身が欲しくなってしまうなぁ……そんな妄想が本書を企画する出発点でした。
問題は飛翔写真がどれくらい集まるかということ。水鳥やワシタカの飛翔写真はふつうに撮影できますし写真もありますが、動きが素早い小鳥の飛翔写真は撮影が容易ではありません。正直、図鑑として掲載する写真を集めるのがちょっと難しいかなと考えていました。でも、ほどなく企画は前に進むことになります。
きっかけは、生物系イラストレーター・自然写真家である小堀文彦さんの飛翔写真。私は見事で思わず見惚れてしまう作品の数々を小堀さんのSNSで拝見し、写真を担当していただくことをお願いしました。以前から別の仕事でお世話になっている小堀さんは、モノづくりの職人さん。生物系のイラストを中心に、写真、切り絵、アクセサリー作り、何をやらせても高いレベルで形にする方です。始めて数年だという野鳥写真も、あっという間にモノにしていました。SNSをフォローしていると、期待を上回る驚きの作品が次々にアップされ、こんなん撮れるかいな!と思うような素早い小鳥の飛翔写真も多数。ただ、図鑑となると掲載種数が多いのでいかに小堀さんといえども、一人ではまかないきれません。サブで写真を担当する共著者が必要です。
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わたしは一応、25年以上野鳥を撮っていますが、飛翔写真なんて難しくて自分には無理と思っていました。でもこの企画ではサブ担当として写真を撮る必要があり、小堀さんとは違うフィールドで、異なる被写体を狙って、サポート的な撮影に取り組むことに。撮影は失敗の連続ですが、たまに成功してカメラの液晶モニタで華麗な飛翔姿を確認したときには、思わず感激します。 とくに、サンコウチョウの飛翔撮影に成功した体験と感動によって、すっかり飛翔撮影がやみつきになってしまいました。やがて、わたしのInstagramの野鳥アカウントは、飛んでいる鳥の写真だらけになっていきました。
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写真集ではなく図鑑ですから、もちろん解説文が必要です。野鳥図鑑の一般的な解説なら、書くのは難しくありません。でも本書は「飛翔図鑑」ですから、一般的な野鳥図鑑には書かれていない、その鳥の飛翔に関わる生態を紹介したいところです。そこで、解説は我孫子市鳥の博物館の元館長、齊藤安行さんにお願いしました。齊藤さんは、航空力学や野鳥の飛翔に明るい専門家です。本文の各種の解説文はもちろん、「そもそも飛ぶとは」「鳥が飛ぶための体のつくり」「鳥が飛べる仕組み」など、豊富なコラムを執筆していただきました。さらに齊藤さんの提案で、翼の形を定義・分類した黒田長久博士による翼の形の分類、翼を広げた大きさである翼開長、初列風切・次列風切(スズメ目は三列も)・尾羽の枚数といった玄人好みで資料的価値の高いデータも誌面に掲載しました。
これで本書は、野鳥の飛翔写真を眺めて楽しむだけでなく、飛翔に関する本格的な知識も得ることができる専門的図鑑に昇華したのです。
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飛翔写真、専門的な原稿が揃いましたが、誌面にはまだまだ情報が必要です。すべて飛翔写真だと、翼をたたんでとまっているときの姿がわからないのではないか。また飛翔写真は撮影するのが容易ではないので、姿勢や角度を選べるほど写真が豊富ではなく、掲載する飛び姿は種によってさまざまで角度の統一はできません。これらの課題を解決するため、全種にとまっているときのイラストと、翼を広げた状態を真俯瞰したイラストを添えることにしました。
そう決めたのですが、掲載種161種のイラストをどう調達するか。そう、著者の小堀さんは生物系イラストレーターです。描き下ろすのは気が遠くなるような作業量ですが、小堀さんもやはりここは職人として他人には任せられない領域。長い期間をかけて描いてくださいました。鳥がとまっているイラストは資料が豊富ですが、翼を広げた開翼イラストを描くための資料はほとんどなく、小堀さんを悩ませました。そこで、我孫子市鳥の博物館に協力していただきました。翼を広げた本剥製をお借りし、真上から撮影して資料にしたのです。このように試行錯誤しながら、イラスト製作を進めていただきました。
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こうして、史上初の「掲載種すべてが飛んでいる」野鳥飛翔図鑑が誕生しました。眺めれば鳥たちの華麗な飛び姿を楽しめ、読めば野鳥の飛翔に関わる生態や航空力学の興味深い知識が得られる本格的な図鑑。やみつきになる野鳥飛翔撮影の世界に読者を誘う、飛翔撮影の方法も巻末で紹介しています。「鳥は飛ぶ」という常識にあらためて注目し、ビジュアルにこだわって紹介した本書を読めば、野外での鳥の見え方が変わり、野鳥観察の楽しさがぐんと増すことでしょう。
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ブンイチサイエンストークを11月29日(金)に開催します
本書の出版を記念して、11月29日(金)に著者の小堀文彦さんとわたくし髙野がオンライン講演「野鳥飛翔撮影の楽しみ方」を開催します。当日は「華麗な」飛翔作品をお目にかけながら、撮影時のエピソードや撮影方法を紹介します。どうぞお楽しみに。
講師:小堀文彦(自然写真家)
講師兼司会:髙野丈(自然写真家・文一総合出版)
参加費:無料
詳細・お申込みは文一総合出版のPeatix(下記)よりどうぞ。
Author Profile
髙野丈
文一総合出版編集部所属。自然科学分野を中心に、図鑑、一般書、児童書の編集に携わる。その傍ら、2005年から続けている井の頭公園での毎日の観察と撮影をベースに、自然写真家として活動中。自然観察会やサイエンスカフェ、オンライントークなどを通してサイエンスコミュニケーションにも取り組んでいる。好きな分野は野鳥と変形菌(粘菌)。著書に『探す、出あう、楽しむ 身近な野鳥の観察図鑑 増補改訂版』(ナツメ社)、『世にも美しい変形菌 身近な宝探しの楽しみ方』(文一総合出版)、『井の頭公園いきもの図鑑 改訂版』(ぶんしん出版)、『美しい変形菌』(パイ・インターナショナル)、共著書に『変形菌 発見と観察を楽しむ自然図鑑』(山と溪谷社)がある。