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BUNGU SQUAD STORY #8『礎石』

この物語は、BUNGU SQUADというアナログゲームがどういう経緯で生まれて、どのように世界に羽ばたいていくかを、現在進行形で書き残していく自叙伝です。

#1はこちら

2019年4月30日。
平成最後の日。
僕は渋谷にいた。

駅から直結の高層複合施設「ヒカリエ」の中の、「Creative Lounge MOV (クリエイティブラウンジ モブ)」というコワーキングスペースで、とある人物と待ち合わせをしていた。

その人物というのは「藤岡千尋さん」というゲームクリエイターで、代表的な作品でいうとスーパーマリオRPGシリーズのディレクションをされていた方である。

実は藤岡さんにはもう一つ顔があって、ミュージシャンとして今でも国内外で音楽活動をされている。
10年ほど前に知人を通じてライブハウスで知り合ったのが、出会いのきっかけだった。

その時からゲームクリエイターとしてのお話も聞いていたが、まさか将来自分がそっち側の業界に足を踏み入れるなんて思いもしなかった。

2019年の4月中旬にライブを観に行った時に、今度ゲームの相談に乗ってほしいと伝えたところ、快く承諾してくれた。

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✒︎  初めての企画書
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僕が約束の時間より少し早めに到着して待っていたら、スタッフの方が誰も使ってないからと会議室まで通してくれた。

待っている間の不安や期待が入り混じった緊張感は今でも思い出せば喉が渇いてくる程。

少し経ってから、藤岡さんが来られた。

僕は、相変わらず着慣れないスーツに、文具が詰まったアタッシュケースを携える標準装備。

そこから、これまで一度も作った事も見たことも無い見様見真似で作成した“企画書もどき”を取り出して、このゲームのルールや位置付け、展望を説明した上で、実際にゲームも遊んでもらった。

どんな言葉をかけてもらったか、今となっては忘れてしまったが、見てもらったのはミニゲームの「ブングースリー」だけだったにも関わらず、とても良いリアクションをしてくれていたと思う。

当時持参した企画書が残っていた
PowerPointを使って必死に作成した力作(?)
裏面には藤岡さんのメモが書かれている



あっという間に、予約していた60分が過ぎた。

帰り道は、どんな事を考えていただろう。

明日から「令和」になる事なんて、きっと忘れていたと思う。

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✒︎  世界観を揃える
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相談&プレゼン会が終わって解散した後、藤岡さんはその日のうちに、思った事や気づいた点をまとめた3,000文字以上のメモを送ってくれた。

そこには、企画書の書き方、表現や名称の統一、コンセプトの提案、ルール説明の修正などが事細かに書かれていた。

ダメ出しというよりは、「こうすればもっとわかりやすくなる・良くなる」といった観点で指摘してくれていて、その時に採用させてもらったほとんどが今も残っている。

まさに、このゲームの礎を築いてくれた恩人だった。

そして更に後日、今度はミニゲームじゃなく本ルールの方も遊んでみたいと言ってもらえたので、2週間後にも会いに行ってきた。

そこでも色んな意見や感想をもらったが、中でも一番印象に残っている提案は、スキルの名称の世界観を揃えること。

それは、ゲームの中で行うアクション【えんぴつでマークか、壁を書く】という所の“壁”という表現を引き合いに出して、

「他のスキルも“壁”と同じように、現実世界の現象や物に例えて、世界観を揃えた方がよりイメージしやすくなるのでは」

と聞いて、確かにそうだなと。

そこから急いでスキル名を考えた。

例えば、はさみでラインを切った時は「溝」、
マークを切った時は「落とし穴」みたいな具合に、なるべくスケールを合わせていった。

それから4年後、ゲーム名を改名して世界観をリニューアルした際にはまたスキル名が変わるのだが、それはまた別のお話。



〜BUNGU SQUAD STORY #9 へ続く〜

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