【戯曲】肩ロース 中村はじめ
「肩ロース」
聡史とレナが歩いている。
聡史「レナってさ、」
レナ「ん?」
聡史「肉でいったら肩ロースだよね」
レナ「は?」
聡史「いやだからさ、ヒレとかモモじゃないんだよ。」
レナ「筋張ってるっていいたいの?」
聡史「そうじゃなくて、」
レナ「だってそうでしょ。どうせ女のくせに肩幅広いとか、ヒレみたいな高級感がないとかそういうことが言いたいんだよね!」
聡史「ってか何怒ってるの?」
レナ「怒ってないよ」
聡史「怒ってるじゃん。怒ってないって言ってる人ほど怒ってるじゃん」
レナ「なにそれ」
聡史「だってさ、怒ってる?って聞いて怒ってないって言う人はだいたい怒 ってるよ。ホントに怒ってない人は怒ってる?って聞かれても、怒ってないよ。ただちょっとお腹が空いてるだけだよ、ってちゃんと受け答えってものができるからね」
レナ「なに?今度はそういうタイプのディスり?」
聡史「なに言ってるんだよ。そうじゃないよ。なんで伝わらないんだよ。肩ロースって言ったら味は濃厚なのに脂身も多くて、肉質は柔らかくてきめ細かくて、すき焼きとかしゃぶしゃぶとか、いろんな食べ方ができる部位なんだよ。」
レナ「で?」
聡史「え?」
レナ「それがなんなの?私とどういう関係があるの?」
聡史「・・・すごく良い部位なんだよ?」
レナ「ちょっと意味がわかんない。なんで肉に例えるわけ?」
聡史「だから・・・好きなんだよ。」
レナ「・・・私のことが?」
聡史「肩ロースが好きなんだよ。だからレナに喩えたら素敵だなって思って喩えたんだよ。」
レナ「私のことは好きじゃないわけ?」
聡史「いや、だからさ、レナは肉じゃないじゃん。人間じゃん」
レナ「あーもーいいわ。わかった」
聡史「え?」
レナ「あんたが私をどんな風に喩えたいのかわかんないけど、私は焼肉屋行ってもカルビくらいしか頼まないし、凝った料理がどうのとかより、がっつり食べて後はカラオケとかして、終わったらランニングでもしてた方が楽しいって感じだから。あんたとは趣味合わないと思う。」
聡史「やっぱり、レナは肩ロースだよ。」
レナ「だからもういいって」
聡史「肩ロースって、結構カロリー高めなんだよ。」
おわり
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