【戯曲】「人間スコア」 尾崎太祐
2030年。日本国内どこかの研究施設。
白い空間。検査着を着て、マスクをしたA・Bが入ってくる。
A 「なんだか独特な匂いがしますね」
B 「ええ、検査に使う薬剤の匂いでしょう。無菌室とまでは行きませんが、厳密に管理していますので」
A 「皆さんこんなところでずっと作業されていて、辛くないんですか?」
B 「はは、すぐ慣れます。ま、プレッシャーでやめていっちゃう方もいますけど」
A 「なんだか自信無くなってきました」
B 「大丈夫、ただの健康診断みたいなものだから」
C、入ってくる。
B 「あ、所長。お疲れ様です」
C 「ああ、新人さん?」
A 「秋山です」
C 「所長の今野です。よろしく」
A 「よろしくお願いします!」
B 「いま、ちょうどオリエンテーションで」
C 「変なところでしょう?」
A 「ええ、いや、まあ……」
C 「はは、無理ないよ。人間の格付けなんて、上の人も変なこと考えたよね」
B 「それで、ここではDNAを調べて、被験者の体質をスコアにしてるってわけ」
C 「まいっちゃうよね、僕なんか去年と今年で75点も違うんだから。体重は増える一方なのに、スコアは減っていく一方……」
B 「不摂生しているからですよ。電子タバコ、そろそろやめたらどうですか? じゃないと来年危ない」
A 「あのう……」
B 「ああ、ごめんごめん、どうした?」
A 「質問いいですか」
B 「どうぞ」
A 「スコアってあとはどんなことで測られるんですか?」
B 「収入、持ってるスキル……」
C 「あとは、日々の行いとか、ね?」
B 「所長……」
(続く)
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