「いい試合を見たい」5000兆時間PUBG ESPORTSを見続けるシンプルな理由
「ゲームはeスポーツじゃない。ゲームは遊びだ」
eスポーツという言葉がゲームをしない人たちの間にも広まりつつある一方で、ゲームをeスポーツと表現することに強い抵抗を覚えている人も少なくありません。
eスポーツを観るのが好きな人たちは、俗に「観戦勢」と言われています。
今回、推し活について話をうかがったのは、その観戦勢の若林源三さんです。若林さんは、PC版のPUBG ESPORTSの熱狂的な観戦勢で、PUBGの観戦勢の間でも名の知れた存在です。
若林さんはどんなきっかけでPUBGに出会い、寝る間も惜しんで観戦するようになったのでしょうか。eスポーツの一種であるPUBG ESPORTSの魅力についてもうかがいました。
観戦時間5000兆時間!
――では、自己紹介をお願いします。
若林です。男性で今は愛媛県に住んでいます。普通の会社員です。
――ちなみに、若林さんのお勤め先って、もしかしてPUBG JAPANなんですか?
あはは!違いますよ。PUBG JAPANで働いているわけではありません。
――若林さんって、PUBGの大会はもちろんスクリム(プロ選手が出る練習試合。配信される場合がある)も観られているイメージなので、ひょっとしてPUBGの中の人なのかな?ってずっと思っていました。
いやいや…。確かにいつもPUBGを観ていますけれど、PUBGとは全く関係のない仕事をしています。
――それは失礼しました。でもいつもPUBGを観戦されていますよね?
はい、そうですね。以前は自分の観戦時間をずっと記録していました。5000時間に達したところでやめてしまいましたが。だからTwitterのプロフィールには、観戦時間5000兆時間と書いているんです。
寝るか働くかPUBGを観るか
――ご、5000時間!?すごいですね!若林さんはいつからPUBGの競技シーンを観られていますか?
寝ている時間と働いている時間以外はずっとPUBGを観戦していましたからね。
初めて観た大会は、2017年にドイツで開催されたgamescomの中で実施された大会PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS Invitationalです。
日本からは、ストリーマーチームDetonatorの4人衆が出場していました。この大会以前も、コミュニティ大会とかストリーマーが配信するPUBGを観ていたんですけど、このドイツの大会は全然違ったんですよ。
――どんなところが違いましたか?
初めてプロの動きを見ました。打ち合いの強さだったり、キャラコン(キャラクター・コントロールのこと。ゲーム内のキャラクターの動き)だったり。その大会では、出場している選手みんなが勝つためにプレイをしていて。競技として戦っている姿を観て、プロだなと。
――なるほど、レベルが違ったんですね。
はい。その前は、ドンカップというPUBGの大会をよく観ていました。ドンカップは僕が初めて観たPUBGのコミュニティ大会で、勝つためにプレイする人もいれば、観ている人を楽しませようとプレイする人もいるんですよ。
でも、このドイツの大会は、出ている選手みんなのレベルが高く、勝利を目指してプレイしていました。まさに競技だなと思ったんです。
――それで競技シーンにハマってしまった?
そうですね。その後2017年に初めて日本で開催された公式大会PUBG JAPAN CHAMPIONSHIP 2017 (以下、PJC 2017)と、その上位4チームが出場したアジア大会PUBG ASIA INVITATIONAL at G-STAR 2017を観て、完全にハマりました。
そのアジア大会では日本語の実況と解説があったんです。カメラが何台もあって、これはおもしろい、と。
――実況と解説はeスポーツならではですからね。
ええ、その2017年の冬には、日本国内でもスクリムが本格化し始めたと記憶しています。DMMが2018年に日本国内の公式リーグPUBG JAPAN SERIES(PJS)を開催することを発表していましたからね。
――スクリムもPJSも観ていたんですか?
観ていましたね。日本以外の海外のリーグも観ていましたよ。EU、韓国…。
以前はスクリムの結果速報をツイートしていました。「このマッチでは、こんなムーブがありました」とかマッチ毎にひとつずつ。月曜から金曜まで自主的にやっていましたね。
あとは、自分で得点結果を集計していました。初期の大会では自動集計が導入されていませんでしたしね。
――もうスコアラーじゃないですか!?
(笑いながら)はい。
――PUBGの日本国内の競技シーンをはじめから今までずっと追いかけていらっしゃるわけですね。ちなみに、PUBG以外のeスポーツは観戦されないのですか?
はい。PUBGだけですね。PUBGにしか興味がないです。他の競技も観ることは観るんですが、PUBGがおもしろいですね。ちなみにプレイをするのもPUBGだけです。
小学生の頃から観戦勢だった
――PUBGに出会う前は、どんなゲームをプレイしていたんですか?
子供の頃はゲーム機を持っていなかったので、僕はゲームをプレイしてこなかったんです。友達がプレイしている様子を横で見るのが好きで、時にはアドバイスしてみたり。
――えー!じゃあ子供の頃から観戦勢だったわけですね!?
はは、そうですね。中学生の頃はパソコンを持っていたので、少しはゲームをプレイしていました。『信長の野望』とかゴルフのゲームとか。今思えば、全然パソコンを使いこなせていなかったですね。僕は外で遊ぶのが好きだったので。サッカーをずっとしていました。
――今プレイしているゲームは?
PUBGだけですね。2017年に初めてPUBGをプレイしました。ネットカフェにPUBGに対応したゲーミングPCが入り始めた頃です。DMMのアカウントを作ってプレイしましたね。
初めてPUBGをプレイしたその日にドン勝したんですよ。キ―マウ(キーボードとマウス)でゲームをするのも初めてでしたけど。
――(大声で)えー!それめちゃくちゃすごくないですか?
いや、その次にドン勝するまで3か月くらいかかりましたよ…。当時はプレイしている人が多かったですし、まあ、PUBGを観てはいましたからね。
――では、若林さんがゲームの配信を観始めたきっかけはどんなものだったのでしょうか?先ほど、PUBGのドイツの大会の前にもPUBGの配信を観ていたとおっしゃっていましたが。
2016年に『メタルギアソリッド』の実況動画をYouTubeで探していたら、2BRO.の弟者さんの動画が出てきたので見てみたんです。
まさに子供の頃に友達がゲームをプレイする様子を隣で見ていたあの頃と同じ感覚でした。その後、2017年の秋頃だと思うんですが、2BRO.の弟者のPUBGの実況動画を見つけたんです。
なんだこれは!おもしろい!と思って。当時は僕、都内に住んでいたんですが、通勤時間はもちろん、昼休みもずっと弟者のPUBGの動画を見ていましたね。弟者のPUBGの動画は#100まであるんですけれど、全部見ました。
――2BRO.の弟者さんの動画がきっかけでPUBGを知った人は多いですね。以前インタビューをしたMOMAさんもそうでした。
そうですね。そういう人は多いと思いますよ。
サッカーとPUBG ESPORTSは似ている
――若林さんは、いわゆる「ゲーマー」のタイプではなく、サッカー少年だったのに、PUBGの競技シーンにハマったんですね。
ええ。これは僕の持論なんですが、PUBGとかバトルロイヤルゲームって、サッカーと近いんですよ。はっきりした攻守がなくて、守っていても、攻めないといけないし。
「サッカーはカオスである」という理論があるんですよ。サッカーは常にカオスなんですよね。一方で、PUBGも常にカオスじゃないですか。だから、僕はPUBGが好きなのかもしれません。
――確かにそうですね。そう言われてみると、サッカーとPUBGは似ているかもしれません。
バトロワがサッカーだとしたら、いわゆる5 vs 5のVALORANTとかのFPSゲームは、野球と似ていると思っています。攻守が分かれていて、フィールドも決まっている。その中にはもちろんセットプレイもアドリブもあると思います。FPSの緻密に積み上げていくあの感じは野球に近いなと。
――そうですね!すごい!確かに、バトロワやFPSの観戦をしている人は、サッカーや野球も観ている人が多いように感じます。
そうですね。一度統計を取ってみたいですね。
「いい試合が見たい。それだけ」
――PUBGの観戦勢として有名な若林さん。Twitterのフォロワー数は、現在7,400人以上いらっしゃいます。そこで若林さんのTwitterのプロフに、「いい試合が見たい。それだけ」とあるのですが、それについてくわしくうかがってもいいですか。
僕にとってのいい試合は、僕の心が動く試合ですね。想像を超えるプレイとか、選手の気持ちが伝わってくるようなプレイとか。観ていて気持ちがポジティブな方向に動く試合が「いい試合」ですね。
たとえば、4対4の正面からのぶつかり合いも好きだし、洗練されたキャラコン、美しいエイムも。試合中盤に、敵が薄そうなところにぐるっと回り込んでいくとか、逆に中央に突貫するのもいいし。
――いろんなムーブが観られるのも醍醐味ですよね。
ドン勝もいいんですけど、初動ファイトで仲間の3人がやられて残りひとりになっても、2位になるまでハイドして、順位ポイントをしっかり獲得したり。
僕も少しPUBGをプレイするので、やっぱりプロのプレイがすごいなって手に取るようにわかるわけです。キャラコン、エイム…。どんな練習をしたら、そんなプレイができるのかがわからないんです。100mとか200m先の敵をフルオートで倒したりするんですよ!自分には再現できないプロのプレイです。それが観られるのが競技であり、競技の魅力です。
――でも若林さんのように数多くの試合を観ていたら、そういういい試合を観られる機会は減ってきているのでは?
いえいえ、どんだけ観ていても想像を超えてくるのが一流の選手ですよ。これからも観る側の想像を超えるプレイを期待しています。
PUBGの観戦をやめる日
――そんな若林さんがPUBGの観戦を止める日が来るとしたら、それはどんな日だと思いますか?
それは…もうPUBGの大会がおもしろいと感じなくなったら、でしょうね。あくまでもPUBGの大会がおもしろいから観ているのであって、おもしろいと感じなくなったら、もう観なくなると思いますよ。
――え!そうなんですね。正直な話、若林さんは死ぬまでPUBGを観続けるのかなって私は思っていましたが。
いやいやいや…。まあ正直、去年はやばかったですけどね。MCルールは本当に失策だったと思います。
実際に観ていて、ドン勝だけが心が動くのかといったら決してそうではないわけですよ。
(選手が)試合の序盤でファイトしまくって、13キルとかして、最終的には7位で落ちたとしても、観ている側からしたらおもしろいじゃないですか。こういう心が動かされるプレイが全く価値のないプレイになってしまうルールなので、MCルールは。
――そうですよね。私もあの頃は観戦していてしんどかったです。それとMCルールの場合、ムーブがどのチームも似通っていたじゃないですか。ちょっとなあと。
ですよね。第3フェーズくらいでどのチームも安置の中央にある建物に入っていましたよね。僕もあの頃はなんとか自分を奮い立たせて観ていましたよ。
オフライン観戦もオンライン観戦もおもしろい
――コロナ禍でここ数年はずっとオンラインで開催されていたPUBGの大会ですが、11月に久しぶりにオフラインの国際大会プレデターリーグが日本で開催されます。
――オフライン大会の思い出を聞かせていただけますか?
オフライン大会は、PUBG JAPAN SERIES WINTER INVITATIONAL 2018(以下、PWI2018)を観に行きましたね。
元々、僕はサッカーもスタジアムで観るよりも家で観る方が好きなんですよ。でもPWI2018のときに、現地で観るのもいいなって思いました。
――家で観る大会と現地で観る大会は何が一番違うなと感じましたか?
選手の声が聞こえるんです。マッチの直前に、「行くぞ!」とか「行こうぜ!」とか声を掛け合っていたんですよ。マッチが始まったら、実況と解説の声しか聞こえなかったんですけど。
eスポーツは、オンラインでの観戦も楽しめるじゃないですか。でも実際に現地で観戦してみると、オフライン大会もいいなと思いました。
今は東京を離れてしまったこともあって、プレデターリーグはオンラインで観戦する予定です。でも、もし僕がまだ都内に住んでいたら、プレデターリーグを絶対現地に観に行っていますね。
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