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「ルックバック」をルックバックする。
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学生新聞で4コマ漫画を連載し、クラスメイトからも称賛されている小学4年生の藤野。そんなある日、先生から、同学年の不登校の生徒・京本の描いた4コマ漫画を新聞に載せたいと告げられる。自分の才能に自信を抱く藤野と、引きこもりで学校にも来られない京本。正反対な2人の少女は、漫画へのひたむきな思いでつながっていく。しかし、ある時、すべてを打ち砕く出来事が起こる。
2024年製作/58分/G/日本
配給:エイベックス・ピクチャーズ
劇場公開日:2024年6月28日
監督 押山清高
原作 藤本タツキ
脚本 押山清高
キャラクターデザイン 押山清高
美術監督 さめしまきよし
美術監督補佐 針﨑義士 大森崇
色彩設計 楠本麻耶
撮影監督 出水田和人
編集 廣瀬清志
音響監督 木村絵理子
音楽 haruka nakamura
主題歌 urara
アニメーション制作 スタジオドリアン
風の噂で「クリエイター界隈での評価が高いアニメ映画があるらしい」とルックバックの名前は耳に入っていたのですが、なかなか自分でタイミングを見つけられずにいました。
そんな時知り合いが観たいと話していたので便乗して観に行けました~!
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既に公開から2か月過ぎていたので不安だったのですが、まだまだ上映している映画館が多くて人気の高さに驚きました。
私は事前情報を調べずに観に行ったのでエンドロールに「藤本タツキ」の名前を見つけてビックリしました。
作品についての考察は色んな方がしていらっしゃるので私は音響の部分で気になった所を・・・
エンドロールに木村絵里子さんのお名前があったので2回観に行ってしまいました🙈
フィルムスコアリング
音楽家 haruka nakamura さんのインタビューでフィルムスコアリングの手法を用いたとありましたが
「大体は映像を見ながら感じたままに即興演奏をしたピアノを土台に、アンビエントなどの様々な音や、徳澤青弦さんによる素晴らしいストリングス・アレンジをつけていただいたりした上で完成しています」
あの繊細さは即興演奏だったのか~!と驚きました。
で、そのフィルムスコアリングって何?と疑問に思う方もいらっしゃると思いますので説明させてください。
▪通常のアニメダビング作業
シナリオや出来上がった絵コンテを参考にしながら作曲家さんに音楽メニューを発注
参考までに
・TVアニメ『響け!ユーフォニアム3』オリジナルサウンドトラック「つながるメロディ」59曲
・TVアニメ『葬送のフリーレン』Original Soundtrack 70曲
・TVアニメ『ザ・ファブル』 オリジナル・サウンドトラック 56曲
1クール以上のものは前半と後半など分けて発注します。
他予算と納期によりますが追加で発注したりします。
↓
出来上がった楽曲を監督にチェックしてもらう
↓
アフレコ
↓
仕込み ※出来上がった楽曲をシーンに合わせて貼っていく
↓
ダビング作業 ※効果さんと録音さんのデータと仕込んだ劇伴を映像に合わせてバランスやタイミングを調整していく。
↓
V編
↓
納品
なのですが、フィルムスコアリングは映像に合わせて音楽を作っていくのです。
通常DB→既存の曲を使用したいシーンの映像に合わせて尺を調整していく
フィルムスコアリング→シーンに合わせて1から音楽を作っていく
フィルムスコアリングの手間暇をかけられる「贅沢さ」が伝わりましたでしょうか?
アニメも劇場版ではフィルムスコアリングの場合が多いのですが、ルックバックはさらに「即興演奏」が加わります。
声優を務められた田美月喜さんがインタビューで
吉田:オーディションにあたって、最初にボイスサンプルを送って、次にスタジオで……という流れだったんですけれども、そのふたつの声が違っていたようで。ただ「会った時に(テープオーディション)の時の声が良かった」と言われたんですね。それで「もうこれ以上は練習をしないで欲しい」と言われまして(笑)。
とお話されていました。
ルックバックという作品がいかに「その瞬間生まれるもの」を大事にしているかのこだわりが伝わってきます。
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個人的に気になった所
【無音でめっちゃ攻める!】
劇伴をつける箇所の目安としては「セリフがない部分」や「観客の心理を誘導」や「感情を増幅」させるなどがあるのですが
ルックバックは「ここに入れたら盛り上がる!」という所がことごとく無音なのです。
確かにノンモンを作って印象付ける手法もあるのですが、私は無音の演出をみて観客と作り手の関係性を信頼しているなと感じました。
音楽をつけるのは「観客を飽きさせないため」という部分もあると思います。
ここは絵に動きもないから観客が飽きないように音楽で盛り上げて注意力を引き付けよう。や
絵は変わってないけど時間経過しているから、それが分かりやすくなるように音楽をつけよう。などがあるのです。
例えば京本が初めて部屋から出てくるシーン
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劇場版では扉の向こうから光が溢れてきてとても躍動感があるのですが、音楽はついていないのです。
そして京本と別れた帰り道、雨が降ってくる空のアップから音楽が始まっていました。
動きのない会話劇に音楽をつけないのは「つけなくても成立する」という自信と信頼故だと思いました。
パフォーマー(声優)とクリエイターの力を信じて、極限まで華美にせずシンプルに・ナチュラルに・・・・
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やめろっ!出てくるなハリソン山中!!!!
お前がプリミティブってめっちゃ言うせいで私は使いにくくなったんだぞ!!!(八つ当たり)
いや、でも本当にハリソン山中の言う通り「プリミティブ」という言葉がピッタリなんです。
【効果音】
上記の通りあまり音楽が使用されていない(ように私は感じた)のですが
ルックバックは全然飽きがこないのです。
なんでかなぁ?と思いながら見ていたのですが「環境音(ベースノイズ)」が緩急をつけているなと思いました。
例えば
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全て音量と種類が違うのです~!
当たり前じゃん。と思う方もいらっしゃるかと思いますが、私がこの部分に感動しているということから察してくださいませ。
また原作漫画でも効果音が少ないと話題になっていましたので、どんな風に音を付けるのかな?と気になっていました。
アニメ的に誇張したものはなく邦画的にひとつづつ丁寧に一挙手一投足を追っているなぁとう印象を受けました。
音楽と効果さんの仕事がシームレスに続いているのでとても綺麗。
お互いにパスを回しながら作品を繋げていっているなぁと。
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映画を見ながら暗闇の中でメモをしていたので、いつにもまして字が汚い&漢字が書けていませんが💦
2回目はメモを取りながら映画を観ました。
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今なら分かるメモ少年の気持ち。
「自分だったらどうするか」と考えながら見てみると、まだまだこんな発想にはならないので所先輩方のクリエイティブ力に感服するしかないです。
私も早く自分の表現で作品の底上げになれるようになりたいなぁ・・・。
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