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文芸批評時評・11月 中沢忠之 先に掲載された文芸時評(11月)で荒木優太が、桜庭鴻巣論争も、柳美里・岸田國士戯曲賞選評問題も、出禁ラーメン評論家の「おじさん構文」も、小田嶋隆の綿野恵太批判も話題にしなかったからということで、これらすべて文芸批評時評にまかせたというのだけれど、残念ながらどれも話題にできる能力がない。そこそこの割合で私と同類のオッサンがからんでいることは気になるが、スルーしたい。 ただ一点、私の前回の文芸批評時評(9月)で言及した桜庭鴻巣論争について、今回話
【書評】高原到『暴力論』 評者:川村のどか 折られてなくなった歯を見つけ出してそこから被害者の「顔」を復元するような営みがあったとする。フィリピン戦の舞台の一つとなったミンドロ島で、ヒロシマやナガサキで、あるいはアウシュヴィッツで、折られてしまった歯を探し求め、持ち主の「顔」を蘇らせる行為。それは歴史から隠蔽されてきた人たちへの想像力を駆使し、今は亡き人々に寄り添うためのものだろう。同時にそれは、そんな人がいたことなど誰一人覚えていないような人物を思い出す挑戦でもある。こう