見出し画像

【インスタントフィクション】夢見るソファ

 ソファたちの墓場のように見えた。

 色とりどりの、革の、布の、ナイロンのカバーをかけられた新作ソファたちを横目に、アウトレットコーナーに並ぶ彼らには、カバーがかけられていなかった。

 彼らは一様に白か灰色だった。

 空調も効いていないし、カーテンもないし、照明もついていない。曇り空から差し込む温かみの損なわれた光だけが、冷たくソファたちの墓場を照らしている。

 見れば見るほど、彼らに魅力はなかった。形状にも、座り心地にも、これといった優れた点はなかった。彼らは売れ残るか、中古で売り払われここに集まった。来るべくして。

 彼らを買う客がいるとは思えなかった。わざわざソファを買いに来て、わずかに安くなっただけの、魅力のないソファを誰が買うというのだろう。

 彼らはもうどこにも行きつかないのだろうと私は思った。

 この静かな光を浴び、こんこんと眠り続けるのだ。誰にも必要とされることなく。誰かの部屋で、生活の一部になる日を夢見て。
 

いいなと思ったら応援しよう!