ペン字の線質を極める
こんにちは、書家の榎本剛です。
普段は一般企業の人事をやりながら、
副業で書家・美文字系YouTuberをしています。
以前、YouTube配信の際に、
視聴者の方からこんな質問がありました。
「線質について教えて欲しいです。
独学でペン字を勉強しているのですが、
市販のテキストやYouTubeでは、
線質について解説されていません。
独学全員が突き当たる壁です。
先生の見識を聞きたいです。」
独学でよく勉強されていて素晴らしいですね。
あなたは普段、
線質という言葉を使いますか?
まず使わないですよね。
もはや聞いたことすら無いかもしれません。
僕も視聴者の方から、
「線質」という言葉が出てきて驚きました。
実は、この線質という言葉、
書道の世界では割とよく使う言葉です。
例えば、
書道の作品を鑑賞するときや、
展覧会で審査するときなどに、
墨で描かれた線に淀みがなく、
スカッと爽やかな線や、
ゆったりと落ち着いた線で描かれている時には、「この人は線質が良いねぇ、上手だね」
と、こうなるわけです。
逆に、
余計な墨を載せすぎて、
線が湿っぽくてゲジゲジしていたり、
墨が少なすぎて、ガサガサの線だと、
「この人線が汚いね」
「せっかく字の形がいいのに勿体無い」
とか、こうなります。
お子さんの書き初め作品を
イメージしてみてください。
元気に書いているのは良いけど、
真っ黒で字が潰れて
何が書いてあるのかわからないとか、
逆に墨が足りなくて、
幽霊みたいな線になっているとか、
ありますよね。
この線質ですが、
一見専門的に思えて、
実は誰にでもすぐに意識して
取り入れられるお得なコツです。
極限まで分かりやすく解説しますので、
ぜひ最後までご覧ください。
ちなみに今回は、こちらのスライドにそって、
お話していきます。
まず、僕が考えるペン字の線質のポイントは、
これだけです!
①緩急
②基本点画
この2つのポイント、
どちらも実は筆の書き方の基本が
ベースになっています。
筆で線を引くスピードの緩急、
そして基本点画、いわゆるトメハネハライや点、角など、基本的なお作法的の部分です。
これをペン字にそのまま活用する、
という考え方です。
さて、
皆さんは書道教室に通われた経験はありますか?
一般的な書道教室では、
毛筆と硬筆(ペン字)を習うことになります。
僕の経験上、特に大人の方に多いのが、
「普段の字をキレイに描きたいから、
ペン字を習いたい。」という方。
ただ、一般的な書道教室であれば、
ペン字だけでなく毛筆をやれ、
と言われるはずです。
なぜなら、
毛筆の練習をして筆の基本が身についた人、
テニスで言えばラリーは続くよ、
大会で勝てるかはわからないけど、
ぐらいの人は、
ペン字もそこそこ書けてしまいます。
でも、
ペン字の基本を身につけた人が、
いざ筆を取って書こうとしても、
字の形はそれなりだとしても、
筆の基本を抑えたキレイな線は
なかなか引けません。
もう一つ言えることとして、
大きい字を小さく書くのは簡単ですが、
逆に小さい字を大きくするのは、
アラが目立ってしまって難しい。
例えるなら、
スマホとかで画像を拡大すると
ピクセルが荒くなっていく感じ。
一旦まとめると、
僕が考えるペン字の線質とは、
筆の書き方を前提とした、
線の緩急と正確な基本点画が
押さえられていること、
つまり、筆らしさが感じられることです。
それでは、この2つのポイントを、もう少し詳しく解説していきましょう。
緩急
基本ゆったりで、時に素早くです。
基本はゆったりと線を引きつつも、
時折、要所要所で素早く引く部分も
入れましょうということ。
ゆったりでポイントになるのが、
止まらないことです。
止まらないというのは、
一筆書きしろとか息を止めて
一気に書けということではなくて、
1画、つまり1本の線を引く時には、
途中で止まらないでね、ということです。
なぜ止まったらダメかというと、
例えば横画を引く時には、
右上がりに書きますが、
途中で止まると、そこから角度が変わったり、
インクがそこに溜まってしまったりして、
線が歪んでしまうからです。
では、時に素早くについて、
どこを素早く書けばいいのかというと、
ハライ、ハネです。
ここで注意したいのは、
筆圧は常に一定で書くということです。
ボールペンや筆などの筆記具は、
力を入れずにキレイな線が引けるように
作られています。
特に、
ボールペンはインクが常に一定量出るので、
力を加える必要は全くありません。
ただ、
素早く書くところは線もシャープにしたいので、
力加減ではなく、スピードに変化をつけて、
線に濃淡をつけましょう。
基本点画
まず、基本点画には正確性が重要です。
トメハネハライをしっかりマスターしましょう。
マスターするというのは、
常に自分が思ったとおりに
トメハネハライが再現できるレベルまで
訓練するということです。
要するに、
1本の線を引くにしても、
始まりから終わりまでブレの無い線で
書けるようになりましょう、ということです。
これは、
意識して手を動かして訓練すれば
誰でもできるようになります。
これに加えて、
今回は線質の話ではありますが、
見た目の印象という面では、
字形の取り方も大切です。
特に横画の角度です。
横画を右上がりに書くことは
基本中の基本なのですが、
ただ右上がりにすればいいのではなく、
角度を揃えましょう、ということです。
それによって、
画と画の間の空間が揃い、
キレイに見えるわけです。
この線質に関しては、
ポイントが分かっていれば、
すぐに出来るかというと、
やはり訓練が必要です、
訓練を重ねて、
もっとこうしたらいいんじゃないか、
これはやりすぎかもな
と自分の頭で考えて書くことで、
身についていくものと思います。
「なんだよー、結局すぐに出来ないじゃん」
と思った方、気持ちは分かります。
最短最速で身につけたいですよね。
ただ、
人間というのは、頭で分かったと思っても、
それを手で再現出来るまでには、
時間がかかる生き物です。
実際に手を動かしながら訓練をして、
初めて思い通りに線が引けるようになります。
自分の字がみるみるオシャレな、
大人っぽい素敵な字になっていくはずです。
こうなったら本当に字を書くのが
楽しくて仕方なくなると思います。
ちなみに、
僕は字を書くのが楽しくてしょうがない側の
人間になりました。
以上のことを踏まえると、
もし独学でペン字を勉強されるのであれば、
市販のテキストやYouTubeを
活用すれば良いとは思います。
それに加えて、
毛筆の基本も勉強しておいた方が、
絶対に効果的ですし、上達も早いと思います。
ということで、
今回はペン字の線質について、お話ししました。
僕が主宰する『美文字コーチング』では、
線質も含めて徹底的に指導し、
一撃で人を惹きつける
“本物”のペン字を身につけることができます。
書家|榎本剛
-Soundtrack for The Post-