見出し画像

【Feature PEOPLE】飯森沙百合 Vol.2

韓国国立コンテンポラリーダンスカンパニーのオーディションを通過し、韓国に3ヶ月滞在、最新作のクリエイション〜プレミアを終えて帰国したばかりの飯森沙百合さんへのインタビューVol.2です!

聞き手:山田うん

カンパニーの稽古場環境を教えてください

ソウルの江南(カンナム)エリアに「芸術の殿堂」という劇場や美術館、アート大学などが集まる場所があって、そこにある大きなスタジオで稽古していました。町の中ですが、スタジオのすぐ裏は山で、緑に囲まれたとても気持ちのいいところです。敷地内で野生のうさぎに遭遇したこともあります。

スタジオは、コンテンポラリーのカンパニーだけでなく、バレエカンパニーのスタジオ、オペラやその他のアーティストが使えるリハーサルスタジオもあります。カンパニーの利用時間以外は子供のバレエ教室やワークショップなど、多くの人に解放されているようです。いくつもあるスタジオや事務所の他にトレーニングルームやフィジオルーム、休憩できるスペースも沢山あります。

私の一番のお気に入りスポットは、スタジオ最上階にあるルーフトップ!目の前に見えるソウルの街と背後に広がる森のあいだで太陽の日を浴びながら、ボーッとしたり、作品のこと考えたり、踊ってみたり…。

滞在期間はどんなスケジュールで過ごしてたのですか?

リハーサルは平日13時〜18時。12時からウォーミングアップ用にスタジオが使えます。今回、スタジオから徒歩で通える家を借りたんですが、半地下だったので朝なのに陽の光が全く入らない!スタジオも遮光カーテンで覆われて暗いので、このままだと太陽不足!辛い!と思って、朝は少し早めに起きてコーヒー片手に敷地内を散歩するのが日課でした。

リハーサルが終わったら、ダンサーたちとほぼ毎日韓国料理を食べに行ってました。最初のうちは自炊してたんですが、スーパーの物価がとにかく高すぎるのと (量多いけどトマト1パック1400円!) 韓国の調味料でなかなか美味しく料理が作れなくて…。 自炊は諦めて後半はほぼ外食でした。食べてない韓国料理はないんじゃないかってくらい制覇したと思います。

土日は近所でゆっくり過ごしたり、ダンサーたちとリフレッシュに出かけたり、ショッピングしたり、川辺でピクニックしたり、朝まで公園で語り合ったり…チェジュ島にも行ってきました。どの思い出も最高すぎて忘れられません!

舞台写真©️Kim Jungyeop

プロジェクトの中で壁はありましたか?そしてどう乗り越えましたか?

「 Process in it 」では自分で動く理由を選択し、決定することがとても重要です。自分自身と向き合う作業が続くので、途中とてもしんどかったです。ディスカッションの時間も多くて、自分の考えを言葉にするのも慣れなくて大変でした。
でもある日「borrow」(相手の動きを借りて自分なりに解釈する) っていうワークの中で、全然違う相手の身体の中に自分の一部を見つけた瞬間があったんです。形は全然違うけど、動きの質感やアイディアに共通したものを色んな場所で見つけ始めて…これは面白い!と思いました。

そしたら、自分は一人じゃないんだ、と思えたというか…。それまでは何かや誰かを「分かる」とか「分かりあう」ことの正解を求め続けてたんです。でも、私は知らないうちに誰かの影響を受けていて、誰かにも知らずに影響を与えているんですよね。私は相手に溶けていて、相手は私に溶けていて、ビビンパみたいに混ざり合ってる。全てを分けて分かる必要はないんだ、と思ったらフッと楽になりました。

これが乗り越えたって言えるのかは正直分からないんですが…。ソンヨンさんが繰り返していた「シンプルさの中の複雑さ」「意識と無意識」を自分の肉体の内側だけじゃなく、人や空間や時間を通して感じた出来事でした。

滞在期間で一番得たものは何ですか?

さっき(インタビューVol.1にて)身体はそんなに変わってない、と言ったんですが、実は変わったなと感じてる部分もあって。ソウルって坂がすごく多いんですよ。少し歩くだけで結構足を使います。駅も階段が多くてしかも長い。エスカレーターもあるけど、日本よりも階段を登る機会が多かった気が。だから、下半身がどっしりした感じがします。バスもめっちゃ揺れるし、電車の椅子も日本みたいにふかふかしてなくて硬いから自然と座る姿勢がピシッとなる。ソウルの電車はどんなに混んでいても空席がある、というのも印的でした。そういえば人々の立ち姿が美しいなと感じました。

トレーニングではなく、その土地で生活して得た身体感覚。これは私にとって貴重なお土産です。そして、今回韓国で出会った沢山の人たちとの出会い、そして経験して感じたこと全てが人生のお土産です!


ダンサー 飯森沙百合

早稲田大学スポーツ科学部卒。これまでに、三東瑠璃、平原慎太郎、白井晃、向井山朋子、安田登など、多数演出家の作品に出演。アーティストのバックダンサー、ライブステージング、ミュージックビデオ振付、絵本の朗読など多岐にわたる活動の他に、西山友責とダンスユニット<Atachitachi>でも精力的に活動を行う。近年では、呼吸法の資格を取得し、ボディワークの指導、普及活動も行なっている。NPO法人丹田呼吸法普及会理事。


いいなと思ったら応援しよう!