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【Feature PEOPLE】飯森沙百合 Vol.1

韓国国立コンテンポラリーダンスカンパニーのオーディションを通過し、韓国に3ヶ月滞在、最新作のクリエイション〜プレミアを終えて帰国したばかりの飯森沙百合さんに、お話を伺いました!

聞き手:山田うん

DMAU(Dance Makes Asia become the Universe) 『INIT』

[HP] Korea National Contemporary Dance Company  

お帰りなさい!

帰国した今、改めてどのような心境ですか?

ただいま!3ヶ月、あっという間でした。
韓国にいる間は日本が恋しくて早く帰りたかったけど、今はすごく寂しい。
そこで出会ったダンサーや友達、韓国の空気や匂い、刺激の多い食べ物と街の雰囲気…
沢山笑って泣いた濃い3ヶ月だったのにその感覚を忘れてしまいそうで、それが寂しいですね。

舞台を見て…

私は舞台を観て、とにかく野生味のあるダンサー一人一人の動きが印象的でした。みんな技術が高く柔軟で繊細で力強い。でも、その力をこれ見よがしに見せたりがないんですよね。凄いことやってるけど箸持つみたいに、全くそう見えない。身体より高度なマインドみたいなことが見えてきました。
芸術監督で振付家のソンヨンさんと、どんなクリエイションでしたか?

ひたすらインプロヴィゼーションとリサーチの日々で、毎日気の遠くなるような地道な作業でした。ソンヨンさんは具体的な言葉やイメージからシーンを作りません。いくつかキーワードはあっても、ドラマとか物語性みたいなことを最初のうちはなるべく排除していって、ダンサーたちの身体とエネルギーを通して「何が見えてくるのか」を見つめる。ダンサーがその瞬間何を感じ、選び、表現するのかを。ソンヨンさんとたくさん話し合い、作品を積み重ねていきました。

ダンサーはソンヨンさんの生み出したインプロヴィゼーションのメソッド「Process in it 」(プロセス・イン・イット) を使って、自分の身体に起こった動きの衝動を振付にしていくことを求められました。「 Listen to your body」といって体の声に耳を傾けることに集中する。その声、感覚を何度でも再現可能な振付に起こしていく。いわゆるダンステクニックじゃなく、ダンスになる前のエネルギーを掬ってそれをかたちにしていく感覚です。「自分の得意なこと、今までやってきたダンスに逃げないで」と言われたことも思い出しますね。

グループワークでも、振付を作るんじゃなく、それぞれのエネルギーで会話するようにシーンを作っていきました。今回集まったダンサーはみんな尊敬する素敵なダンサーたちだったんですが、個性が全くバラバラ!。共通言語を持たない人たちが一緒に会話して、汗かきながら粘土をこねて何か作る、みたいなクリエーションが面白かったですね。

そもそも、今回のオーディションはなぜエントリーしようと思ったのですか?

まず「アジアにルーツを持つダンサーを集めて」ダンスを作るというコンセプトが面白そう!と思ったから。アジアって言っても広いし、文化、体型、顔の雰囲気も違うけど、アジアって括られている。自分をアジア人だって特別に意識したことはないけど、私はアジア人なんだ、私のアジアらしさって何?アジアのダンサーってどんな共通した身体があるの?と。

あと、今ダンスしてるのが楽しくて。今が一番楽しいかも!。もっと貪欲に踊りと向き合いたかったんです。全然違う環境でダンスしたら自分にどんな変化があるの?どうなっちゃうの?どんなハッピーや困難があるの?と、まだ知らない自分を発見したいという気持ちもありました。

一体どのようなオーディションでしたか?

4日間の連続オーディションでした。ひたすらインプロヴィゼーションです。与えられたお題に対して全身でアイディアを提案していきます。4日間誰かが途中で落ちることなく全員で最後まで終える。こんなオーディションは韓国では珍しいみたいで、ソンヨンさんも「ワークショップだと思って。みんなとも友達みたいな感じで気楽に受けてね。」と言ってくださったので、緊張感はありつつも、楽しい時間でした。

そして、オーディションで集まったダンサーたちの熱量がものすごかった。刺激を沢山もらいました。面白いダンサーがこんなに沢山いる!みんな素敵!もうこれで自分は選ばれなくてもいいや!と思うくらいでした。オーディションの時に出会ったダンサー達とは、その期間で本当に仲良くなって、みんなでご飯に行ったり、今回の滞在時も連絡をとったりと、とてもありがたい機会だったなと思います。 

選ばれたダンサーはどのような人達がいましたか?

私の他に、韓国、中国、台湾、香港、シンガポール、ベトナム、ラオス、オランダ、フランスから合計11人。
エネルギーがとにかく高くて、テクニックはもちろんあるけど、それを武器にせず、アイディアに対してどんどん身体を投げ出せる。こんなに投げ出すの?!って笑っちゃうくらい。毎日インスピレーションをたくさんもらってました。

個性も得意なこともバラバラでしたが、みんな優しくて明るくて、ポジティブなエネルギーに満ちたダンサーたちでした。英語のレベルもそれぞれで私も沢山助けてもらって、辛い時にはフォローしあって、良いチームワークでした。

みんなダンサーとして自立していて、クリエーションに対して積極的なところも刺激をもらいました。活動する国や地域の事情によってダンサーとして生きることの大変さは違ってそれぞれでいろいろあるんだなと思ったし、その中でダンサーを選んで生きているみんなを本当に尊敬しています。

『INIT』

3ヶ月の生活の中で自分自身にどの様な変化がありましたか?

毎日踊って暮らせる生活なんて、私にとっては夢のようで…。毎日トレーニングして踊ってるから身体少しは変わってるかな?って思ったんです。で、帰国してすぐ、ずっと診てくれてる整体の先生のところ行ったら「相変わらず背中硬いねぇ、変わってないねぇ」と言われて…大ショックでした。だから実際、そんなに変わったことはないのかもしれませんね。変化って自分じゃなかなか気づけないから…外から見て変化があれば逆に教えてほしいです。

また、3ヶ月意識してたのは、分からなかったら聞く!できなかったら助けを求める!どんどん影響される!です。


ダンサーたち、ソンヨン監督、ドラマトゥルグかなさんと

ダンサー 飯森沙百合

早稲田大学スポーツ科学部卒。これまでに、三東瑠璃、平原慎太郎、白井晃、向井山朋子、安田登など、多数演出家の作品に出演。アーティストのバックダンサー、ライブステージング、ミュージックビデオ振付、絵本の朗読など多岐にわたる活動の他に、西山友責とダンスユニット<Atachitachi>でも精力的に活動を行う。近年では、呼吸法の資格を取得し、ボディワークの指導、普及活動も行なっている。NPO法人丹田呼吸法普及会理事。

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