会話劇に笑わされる『コタキ兄弟と四苦八苦』
行きつけの喫茶店メニューは、レトルトカレーにレンチンピラフ……(『俺の話は長い』の満の実家が懐かしい)。生き方のセンスが両極端な兄弟、明るいいい子に見えるけれど何を考えているのかよく分からない喫茶店のアルバイト店員、兄弟に「レンタルおやじ」の仕事を持ってくる社長。いつも店の隅で居眠りしている、実は喫茶店のマスターであるお爺さん。
レギュラー陣を見ても、結構なクセの強さだ。
1話ごとにレンタルおやじを依頼してくる人物(ゲスト)も、またクセが強い。
(以下、ネタバレあります)
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第4話の樋口可南子さん演じる島須弥子は、「あと三ヵ月で世界が終わる」と話し、少々宗教じみた雰囲気。生真面目な無職の兄・一路(イチロー)と、ちゃらんぽらんに生きてきた弟・二路(ジロー)をレンタルし、奴隷のように扱って買い物三昧だ。レンタルおやじ二人を「ナニロー」と呼び、好き勝手やり放題な須弥子に、兄弟は振り回されていく。
しかし、その後須弥子が余命三ヵ月だと知ることに。須弥子は自分の余命を誰にも知らせることなく、独りで人生を終えるために住まいも何もかも始末して、医療施設に入居したのだ。
相手が見ず知らずの二人「ナニロー」だから気楽に話せると笑っていたのに、次第に兄弟に親しみを覚えてしまった須弥子は、レンタルおやじの契約をひと月残したまま打ち切った。そして本当に誰にも知られずに、あっさりと亡くなるのだった。
このドラマ自体が会話メインのドラマだけれども、この回は圧倒的な会話劇で、まるで舞台を観劇しているようだった。そして人間の弱さと無常の中に見つけた温もりに、ほろりとさせられた。
それ以前の回も、兄弟の心根や依頼者の人間臭さがにじみ出ていたので、「会話で淡々と物語が進むけれども(いや、時間軸から考えたらあまり進まない……笑)、クスッと笑える人間の味わいが散りばめられたドラマ」と認識していた。テンポの良い会話もそれを後押しする。
そういえば第3話で片思い中の若い依頼者が、A・水族館に行く、B・依頼者の部屋で「耳を澄ませば」を観る、という相手が提案してきたデートのどちらを選ぶべきかと悩む場面。あそこも面白かった。
兄・一路はAの水族館を推す。その理由として、「耳を澄ませば」のあるシーンについて話しはじめる。
「あれはー、ラストでプロポーズするんだぞ! 結婚してくださいって。声変わりする前の高橋一生が、中学生の高橋一生が言うんだよ!」
高橋一生を2回出す感覚が可笑しくて、笑いが込み上げてきてしまった。ここがツボにはまったの、私だけ?
とにかく、この先も会話で魅せるドラマなんだと思っていた。そしたら見事に裏切られたよ、第5話。だって会話がほとんどない!(笑) ほぼレギュラー陣のひとりごと、脳内一人詮索だった。しかもさっちゃんが思った通りの人間で、またまたクスクス笑い。
観た人にしかわからんと思うが、「慮る(おもんぱかる)」という言葉が、こんなに注目される話がかつてあっただろうか。いや、無いね。
気になる人は、配信でご覧あれ。※2020.2/15(土)00:51配信終了
来週の第6話は、いつもセット利用されている兄弟が別々の依頼者の元へ。果たしてひとりで遂行できるのか!?
もちろんTVerで観ますよ! うちはテレ東さん映らないんで。