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ぶらんこ
風がやんだ雨上がりの夕方5時、チャイム『ななつのこ』が鳴る頃 、おつかい帰りの道筋のうす暗くなった公園に人影はなく、ただ向こう側の出入り口に黒い犬を連れたおじいさんが、ゆっくり歩く姿が見えた。
公園のこちら側には、座席がふたつ並んだ小さなぶらんこがある。
ふたつのぶらんこには誰も乗っていないのに、ふたつそろって、シンクロするようにリズム良く揺れ続けていた。
だれか仲よしさんふたりが、 5時のチャイムを聞いて慌てていちにのさん!で飛び降りて
走って家に帰ったのかしら?と思ってみるが、あたりにそんな人影はなかった。
あたしが公園に入ってから 近寄って、真横を通って、通り過ぎても、ぶらんこはずっと同じリズムで揺れ続けた。
もしかして、透明人間なの? なんて思いが湧く。
透明人間がふたりいたら透明人間同士はお互いのことわかるのかしらん?なんて疑問も続いて湧いてくるのだけど、ふっと我に返ってなに考えてんだかと苦笑する。
出口近くでもう一度振り返るとぶらんこは変わらぬリズムで、揺れ続けていた。
ふっと、そこにいるのは、見えない少女たちなのかもしれないという気がした。
長く生きられなかった少女たちの魂がこんな日のこんな時間に人知れず公園を訪れているのかもしれない。
ふわりとしたワンピースを着て肩までの髪をなびかせてふふふ、ふふふと笑いあいながら小さなぶらんこを揺らし続けているのかもしれない。
双子かもしれない。ふたりして長く生きられなかったのか。だからずっとずっと揺れてるのか。
どんよりした雲の下でそんなことを思うとなんだか切なくて、食料品で満ちている腕に食い込む荷物の重さがどうにもいとおしくなった。
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