小川洋子さんの本 心覚え
♡「シュガータイム 薬指の標本 ホテルアイリス」
描写のうまいこと。さりげなく選び取られた天候や情景の効果。
比喩が美しくもあり、ぞっとするほど冷徹であったりすること。
こころを探るようにいささか執拗なくらい、人間の体のパーツに向けられる視線。
欠けているものの存在感
無機質なもの、当たり前にそこにある物質が息づくように意味のあるものになっていくその自然な流れ。
逸脱しながら魅力的であること。
♡「完璧な病室」
死に行く弟を見つめる姉の瞳。こころを病んだ母親のこと。
腐りゆくものへの嫌悪。ぞっとするような比喩。
禊のように流れ落ちる水滴のイメージ。無機質への憧れ。
医者の言葉
「抽象的に考えるのはよくないと思います。抽象的な考え方から出てくる結論は、やっぱり抽象的なものでそれじゃ自分を納得させるのに力不足なのです。
だからもっと具体的に考えましょう。例えば弟さんが背中が痛いと言ったらあなたは背中をさすってあげることができるでしょう?薬を飲み忘れないように声をかけることもできるし、二人で思い出話をしたり、ナースに噂話したりできるじゃないですか。あなたにできる具体的な事柄はいくらでもあります」
具体的な言葉掛けは慰め。
♡サーカスの夜に
サーカスという居場所はなんとせつなくきびしくあたたかなのだろう。
変えようのない運命と折り合いをつけることを教えてくれるその場所で、ソリャンカという生き方を見つけた少年に幸あれ。
♡ことり
兄弟のしあわせのかたち。
小さな世界の豊かさを思う。
世の中と切り結ぶことで傷ついていく小父さんを追うのが、つらくてせつなくて、キリキリとこころ痛んで、なかなか読み進められなかった。
たどり着くところが冒頭の哀しい場面。
♡いつも彼らはどこかに
小さいころから宝箱にそっとしまわれた自分だけの「たいせつ」なもの、まつわる思い出、伸びていくふわっとした世界。
いつも小川さんはそこで語ってくれる
♡猫を抱いて象と泳ぐ
命なきものの命、心なきものの心を読み解く美しい言葉たち。
♡最果てアーケード
最果てアーケードにある過ぎ去った時間のどれもがいとおしく、せつない。
ずーっと最後の章が読めずにいた。
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読んでくださってありがとうございます😊
また読んでいただければ、幸いです❣️