番外編 タツヤ
高校1年に上がった時、やたらうるさい男がいた。
タツヤだ。
背が小さく、ロン毛茶髪の腰パン。
何かと理由無く先生に食ってかかる言えばめんどくさい男だ。
ヤンキーは何人もいたが、タツヤは少し浮いていた。
中学が違った為にどんな奴か知らなかったが、タツヤと同じ中学だった友人にタツヤって奴知ってる?と聞いた事がある。
あ〜、タツヤかw
あいつイジメられてたよw
あいつが悪いのよ、いきなり自分に似合わない事しだしてさw
小学の時から何かイジメられ気味だったけど、中学に上がった瞬間に髪染めたり色々さ。。。
そう言う事か。
納得した。
凄く自分に嘘をついている感じが出ていたからだ。
弱そうな奴には上から当たり散らす所を見ると、自分がやられて来た事を弱い奴をターゲットに理不尽に同じ事をしてる様に見えた。結果、皆避けるのも理解出来る。
ヤンキーからも煙たがれていた。
あいつタツヤとか言う奴マジダルくね?w
何か違うよなw
同じクラスのメガネかけたゲーマーみたいな奴に当たり散らしてて、うぜ〜から後ろからケツ蹴ったらさw
あ、、、す、すいません。。。とか言ってどっかいっちゃったよww
あいつ無理だわぁww
タツヤらしいなとその話を聞いていた。
俺は美術部を密かにしていた。
学校の終わりに美術室にいって絵を描いていた。
その時にあいつが来た。
そう、タツヤだ。
おい、お前。
学校終わってんのにこんな所で何してんだよ?
ん?絵描いてる。
そんなのわかってんだよ!
絵とかダセーから早く帰れよ
いや、まだ描きたいから帰らないww
。。。お前名前何だ?
ブル
ブルか、俺はタツヤ。
お前どこの中学?
3中だよ。
3中か!あそこは悪い奴多いからな!
ブル仲間になってやるよ!
あ、ありがとうww
それからタツヤは学校終わりの美術室によく来るようになった。
そんなある日
タツヤどしたの?その顔
。。。あ?喧嘩だよ喧嘩
ブルにはわかんねー世界だよ。
シメてやろーと呼び出したけど抵抗されちってさ。
まぁ、俺なんかより相手ボコボコだけどさww
すぐに嘘とわかった。
きっと一方的に殴られたのだろう。
目は腫れて口の横はデカい痣があった。
とても抵抗されて付けられた傷とはかけ離れた傷だったからだ。
そっか、あんまり無理すんなよー?
そんな言葉をかけた時少したじろいだ顔を見せた。が、すぐに顔つきを変えた。
は?無理してねーし。
あんま調子乗ってるとお前もやっちゃうよ?
ごめんごめんwやめてww
また来るわ!じゃーなブル
これがタツヤとの最後の記憶。
それから何日経ってもタツヤを見なかった。
でも、学校俺辞めるわ。ダルいから。とか言ってたし辞めたのかな?くらいに思ってた。
それから何日かして全校集会が開かれた。
校長が体育館の壇上に上がって喋りだした。
タツヤが自殺をしたと言う話だった。
危うい奴だなと思ってはいたが自殺はさすがに予想していなかった。
残念でならなかった。
後から聞いたら、中学時代の同級生から毎日の様に呼び出されては暴力をふるわれていたらしい。
シンナーをした状態でクローゼットで首を吊っていたのを母親が見つけたらしい。
口の中からは大量の画鋲が見つかったみたいだ。
画鋲を飲みこんだけど死にきれずに首を吊ったのだろう。
話を聞いて辛すぎた。
確かにウザったい奴ではあったけど、どこか憎めない奴だった。
それは、どこか同じ匂いをしてたのかもしれない。
形は違うけど、タツヤも当時イジメを受けていて自分なりに変えたくて無理をしていたんだと思う。
人は簡単に壊れる。
俺だってタイミングが違ったら分からない。
タツヤを殴って蹴ってた奴らは憎い。本当に許せない。
でも、死んだら終わりだ。
腹立つ事も、喜ぶ事も後悔する事さえ出来ない。
だからタツヤの死は仕方ないとは思わない。絶対死んじゃダメだ。
お葬式ではGLAYのHOWEVERがかかっていたらしい。
当時タツヤが好きだった曲だ。
どこかで流れる度に思い出す。
もっとタツヤと関わっていたら。。。とか、あの時一緒に帰っていたら。。。とか当時は考えた。
でも、そんな後悔無意味なのだ。
死んだらそこは変えられない。
残された者は何も出来ない。
でも、そのくらい追い込まれていたタツヤには少しだけ寄り添いたい。
辛かったねって。
明日がある事は幸せな事。
寄り道してでも前は常に見ていないといけない。
そんな高校時代の苦い思い出でした。