転生してローマ帝国で無双するロバート・マッコールさん主演 『グラディエーターⅡ』
Tジョイ京都で『グラディエーターⅡ:英雄を呼ぶ声』を鑑賞。
以下、普通にネタバレする。
レイトショー。
大きなスクリーンで、今日はお客さん多そうだ、と思ったら、15人もいなかった。吹替版。
私は吹替版が好きだ。吹替版だと、物語がすんなりと頭に入るし、会話も違和感のない台詞の応酬に仕上げられているから、寧ろ、全て吹替版でいいくらい。
今作は、武内駿輔、大塚明夫に山寺宏一、沢海陽子、宮野真守、梶裕貴、と、吹替版も最強の布陣だ。
原題はただのグラディエーターⅡ、このアラビア数字が重要だ。グラディエーターⅡは重厚に感じるが、グラディエーター2だと安っぽい。
それから、副題の英雄を呼ぶ声、これいる?という感じで、いつも、テレビやラジオでCMやナレーションで聞くたび、長くて余計な仕事が増えてるよ!と思わずにはいられない。
で、肝心の映画、リドリー・スコット監督の最新作、実は此処最近の、『ハウス・オブ・グッチ』はまだ未見。リドリー・スコットは、かなりの打率でヒットを放つが、へんてこな映画も多い印象。私の中のリドリーランキングとしては、
みたいな感じであり、史劇系は基本的には観ている。『ナポレオン』や『コロンブス』はまだだが。
長くなってしまったが、まぁ、今作は、前作から16年後が舞台で、平和に暮らしていた主人公ルシアスの国ヌミディアを襲うローマ帝国。そこで一緒に闘った愛する妻が殺されてしまい、ルシアスは海に落ちる(海沿いの都市なので)。そして目覚めると街は制圧されて、ルシアスは奴隷としてローマへ連れて行かれる。そこで、まさかの奴隷を買って剣闘士にさせて、それで設けているロバート・マッコールさんに見初められる……というお話。
まぁ、完全にネタバレだが、主人公のルシアスは前作の主人公の煽り屋であるマキシマスの息子。彼は、正統なローマ帝国の皇位継承者なのダ。
然し、幼い頃にママンに外国に逃されて、それを恨みに思ってる。で、妻も殺されて、ローマに怒り心頭で、最早投げやり気味にコロシアムで闘いまくる。彼の狙う首はヌミディアを襲った帝国の指揮官のマルクス・アカシアス、なのだが、然し、アカシアス、冒頭から指揮を取りつつも浮かない顔。ローマに戻ってからわかるが、アカシアス的には、暴力で他国を蹂躙して圧政も強いるゲタ皇帝、カラカラ皇帝の二人に内心付き合ってられんわ、という感じであり、クーデターを引き起こそうとしていたのだった……。
今作は、ゲタ帝、カラカラ帝、そして、ロバート・マッコールことマクリヌスの話をベースに作られたストーリーであり、クセ強なキャラクターがたくさん出てくる。
中でも一番クセが凄いのが、マクリヌス、デンゼル・ワシントンが素晴らしい演技で演じている。ロバート・マッコールさん並に、今作のマクリヌスは良かったなぁ。動きがいちいちいいんだよね。
それから、主人公のポール・メスカル、かっこいいし、いい役者、でもやっぱり華がないなぁ、普通に仲間の一人、的な感じで、スターオーラがないんだよな。
ペドロ・パスカルは良かったなぁ、実直な軍人役で、戦闘能力は最強だったね。ただ、話の進行の仕方で、後半無能感が出てて……。
と、いうのも、今作、まるでダイジェストのようであり、いつものディレクターズ・カット版を作るのか知らんが、いや、そうはならんやろ、という展開が多く、演出の冴えもなく、本当にリドリー・スコットかいな、という感じだった。出来栄え的には、『エクソダス』辺りが一番近く、期待袋をパンパンに膨らませるとガッカリしちゃうタイプかもしれない。
とにかく、展開が早すぎるし、キャラクターや演者はいいのに、彼らの策謀などが、え、何だったの?的な感じで、もう業務的に流されていき、結局、要は、やんごとなき血筋の者が腐敗した帝国に戻り、困難の末それを再興する、貴種流離譚の典型であり、物語的な驚きはない。予定調和しかない。
然し、けれども、マッコールさんだけは良かった。本当にスクリーンで輝いていた。
アクションに関しては、冒頭10分くらいで始まるヌミディア侵攻戦が凄まじく、ここがピーク、つかハイライトであり、海戦、というか、軍船が何十艘も攻めてくる、ここはすごいなぁ、どうやって撮影したの、というくらい、激しい合戦でね、それから、冒頭小さな民営コロシアムかよ、的な所でヤクを打たれて興奮状態にあるヒヒと闘うんだけど、こんなヒヒいるのかよっていうくらい怖くて、多分このヒヒが最強だね。
で、犀も出る。犀はめちゃくちゃ重量級で、これはやべーってなるんだけど、意外とね、犀さんは直進しか出来ないから、すぐにやられてね、可哀想だったよ、まぁ、犀は死なないから安心して欲しい。
それからね、まさかのコロシアムに水を溜めて海を作っていたのね、そこに鱶、まぁ、サメね、サメを解き放つ。まさかのサメ映画だったね。海水とかどうやって運んだんだよって、いうか、排水が大変だろ、とか、寧ろ、コロシアムを水で満たすプロジェクトXの方が観たかったね。
ポール・メスカルはね、医者のおっさんと仲良くなるんだけど、その時阿片吸って手術してもらう。で、その時の演技が、まぁ、『異人たち』を思い起こすような、同性愛的な感じでね、うーん、色気があるなぁってね。
ただなんかね、全体的に前作ほどの荘厳さ、というか、高級感がなくて、安い感じがするんだよね。これは何故かはわからないが。予算は潤沢にあるはずだし、スターだって、一応は出てるし。
ローマとかもいつもよりセット感が半端なくて、こう、リドリー、といえば、スモーク、もしくは、照明や汚しの神様みたいな感じで、実在感や、文化の再現が半端ないと思うんだけど、今作はなんかね、カラカラ帝とかゲタ帝がね、安いジョーカーみたいで学芸会みたいなんだよね、そんで若干セットっぽかったり、メイン以外のキャラクターが書き割り的で、いや、下手したら、今作はマッコール以外書き割りかもしれない、それくらい、物凄く安い感じで、でも、それなりには面白いですし、私は好きな映画ですね。
ロバート・マッコールさん、ローマに転生、的な映画としてみたらね、マッコールさん、今作も芸術的に人を殺めてますし、実際、メインキャラクターのほとんどは彼が狩りつくしてるし、彼が主人公ですし、リドリーも、彼に愛情の目線を注いでいますね、ポール・メスカルは、面白みもないキャラなので、まぁ、物語を推進させるための駒でしかないキャラクターですね。
なのでね、総括すると、まぁ、タイトルはグラディエーター2で、安っぽい方があってましたよ。
最後に、ルシアスが、誰もいないコロシアムで、砂を手に、どうすればいいのか答えておくれよ、お父上様……と、呟くのだが、まぁ、今のリドリー・スコットも、最早その境地なのかもしれない。