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音楽の星 狭間美帆&デンマークラジオ・ビッグバンド

秋の京都、というのは大変な混雑をする。

それは、行楽シーズンであり、方方の寺社仏閣を彩る紅葉の鮮やかさのせいに他ならないが、おかげで市内からの脱出もままならない。

車で1時間、市内から脱出し、そこから更に事故渋滞に苛まれながら、ようやく目的地のフェニーチェ堺に到着する。
狭間美帆&デンマークラジオ・ビッグバンドの大阪公演のためである。



狭間美帆さんは、ジャズの作曲家であり、指揮者である。
『竜とそばかすの姫』にも楽曲を提供されている。

そして、デンマークラジオビッグバンドはヨーロッパの実力派揃いのビッグバンドである。JAZZ、というと、私も好きだがそれほど詳しくない。
やはり本場はアメリカ、それもニューヨークなのだろうが、ヨーロッパでのJAZZ、というと、どうしても『ブルージャイアントシュプリーム』を思い起こしてならない。

あれも宮本大がヨーロッパで国籍の違うメンバーとバンドを組んで、最後のライブでは泣かされたものだが、今回の演奏では泣かされることもなく、楽しい、まさに、音を楽しませてもらった。

狭間美帆さんは2019年にデンマークラジオ・ビッグバンドの首席指揮者に就任したという。
私は素人だし、耳も取り立てていいわけではないので、音楽に関しては素晴らしかったとしか言いようがないが、然し、なんと言っても良かったのはこのバンドメンバーの持つ空気感であり、何よりも、狭間美帆さんの指揮する立ち姿の美しさだろうか。私は、指揮者を見て美しいと感じたのは初めてだったし、その指揮者が率いるメンバーたちもまた、また美しいのである。
言うなれば、音と品とが調和を成しているというか、指揮する指先の一つ一つ、楽器を演奏する指先の一つ一つが綺麗で、ステージ全体が、貴く上品な色合いに満ちていくのである。キャンバスに色が塗られていくかのように、耳を飾り付けてもらっているような多幸感である。

私が一番良かった曲は『Green』で、この曲の作曲時のお話も良かったが、とても郷愁に満ちていて、何だかガトー・バルビエリを思い出した。『ラストタンゴ・イン・パリ』である。
甘くて苦い曲である。


お客さんも終始音楽に酔ったようにリズムに乗っていて、時間が溶けていくようである。
メンバーたちが時折隣の人と何やら談笑している、その緩さがたまらなく心地よいのである。

公演が終わって家に帰ると23時を回りそうで、車から降りて一息をついて夜空を見上げると、普段は見えないような星星が瞬いていて、ああ、綺麗だと思うのと同時に、そういえば、あのバンドもまた、空の星座を見るがごとくに美しい、音楽の星たちであることに思い至り、それならば、彼らは星座で、それを踊らせる指揮者はΜοῦσαなのかもしれないと、そう納得した。

この来日ツアーは11月19日と20日の愛知公演がまだ残っているので、興味のある方は是非聴きに行って頂きたい。

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