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劇光仮面

書店にて、山口貴由氏の最新作、『劇光仮面』の第1集を購入。

そういえば、『エグゾスカル零』は途中で読むのを止めていて、読まなければなるまい。

『虎鶫』の5巻も発売していたが、これはまたの機会に買わねばなるまい。

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『劇光仮面』、傑作である。

いや、まだ1集だが、傑作の香りが濃厚に鼻孔を擽る。今作は、特撮美術をテーマにした作品である。

特撮美術研究会に所属していた実相寺が主人公。実相寺は29歳になってもアルバイトで生計を立てていて、家は無味乾燥、身体を鍛えて、全身を削っている。
物語は、実相寺が大学の頃に所属していた特撮美術研究会の発起人である切通の死から始まる。
彼の死で、過去の友人たちが集まる。大学の頃、特撮ヒーローたちのこの特撮美術の衣装のデザインの美しさよ。惚れ惚れするほどに美しいのは、やはり『エグゾスカル零』や『覚悟のススメ』、『衛府の七忍』で美しいヒーロー造形、衣装デザインを手掛けていた作者の本領の発揮、全力の発露が今作である。

いや、今作で描かれる特撮ヒーローの空気軍神ミカドヴェヒターこそは、デザイン的には究極的にカッコいい、完成形のようである。

この衣装を、切通の遺言で葬式の折に主人公は着ることになるが、仲間たちは皆大人になり、特撮ヒーローは所詮は趣味の延長、架空の世界の遊び事である。

けれども、実相寺にはこれは宗教であり、信仰である。彼は極限まで身体を鍛え抜いて、自らがその衣装を纏うために、身体を清めていく。これはまさしくイエズス・キリスト的であり、即身仏的な所業である(実際に作中でもそのように表現される言葉が出てくる)。

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コスプレ、はコスチュームプレイであるが、衣装を着ると別人のような気持ちになるという。その気持ちは、おそらくは男装や女装も同様だろう。自らの魂を、仮面を被ることに喚び起こす。

然し、彼のコスプレは遊びではない。本気である。それは神事のようでもある(私はすごく『ハニワット』を思い出した。これも超面白い)。

例えば、仮面ライダーの衣装を着る際に、真に仮面ライダーになるべく、身を削ることはほとんどの人は行わないだろう。バットマンだろうが、スパイダーマンだろうが、それは同じである。
けれども、真の意味でも肉体を磨き上げて、その衣装に相応しい魂と肉体を持ってしてコスプレをしたのならば、それは真にヒーロー、或いは神を顕現することになり、主人公の実相寺はその命がけの使命を仲間たちの前で見せる。
美しい装束は、崇高な肉体を纏うことで、神へと到達する。
なによりも、この空気軍神ミカドヴェヒターの武器である日本刀、この組み合わせが最高にカッコええ……。

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これはもう、山口先生以外には描けない造形だ…。

恐るべき漫画であり、まごうことなき傑作である。
この濃厚な密度でまだ1集、無論、これから発展していく物語は恐らくはとてつもないものになるのだろうが……。

今から読むべき作品で、オススメでございます。


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