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ライアン・ゴズリングという神

私が一番好きな映画は『ブレードランナー2049』だと、何度も書いているのだが、一番好きな俳優はマーロン・ブランド、そしてルトガー・ハウアーで、どちらも故人だが、もう一人、ライアン・ゴズリングがいる。ライアン・ゴズリングは本当に最高の俳優である。

ライアン・ゴズリングといえば、傑作映画に出すぎている問題があり、その一つが『ブルーバレンタイン』だろう。

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恋愛の喜びと悲しみ、始まりと終焉を描いた作品で、その美しい詩情的な場面場面には、ライアン・ゴズリングの佇まいが無ければ成し得なかっただろうと思われる。
この映画はそもそも制作費は1億円ほどで、アメリカ映画ならば相当に低予算であるが、ライアン・ゴズリングとミシェル・ウィリアムズという最高のキャストが、本の強さと監督の熱意に惚れ込んで出演しただけあり、傑作である。
ライアン・ゴズリングは同じ映画の中で、感受性豊かな優しい若者と、頭髪の薄くなった人生に疲れていつつも、小さな満足を覚えている哀しい男を同時に演じており、その姿にはユーモアと哀しみの両方が同居している。

そして、監督のデレク・シアンフランスの2作目の監督作である『ブルーバレンタイン』に続いて、『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』に再び主演するが、この作品もまた、父と子を描いた激烈な傑作である。
ライアン・ゴズリングは今作では金髪に染め上げて、バイクスタントのショーで生計を立てる主人公を演じている。が、彼は大体1時間も立たずに退場する。然し、彼の演技というか、作品内への貢献は計り知れないものがあり、父と子をテーマとする作品に、まさに父=神として、作品世界を覆うように存在し続けている。

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ライアン・ゴズリングは、ルイ・アームストロングを演じた『ファーストマン』では、今度は亡くなった娘に会いに行くために、月という地獄へ向かう主人公を、あの『ブレードランナー2049』のKを彷彿とさせる虚無的な感情表現で見事に演じていて、キャリア最高の空洞演技を見せている(褒め言葉である)。そしてこの『ファーストマン』もまた傑作であり、どんだけ作品選びがすごいねん…という思いを抱かずにはいられない(そもそも監督は『ラ・ラ・ランド』のデミアン・チャゼル。二人の蜜月がこの作品を生んだ)。

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無論、蜜月といえば、ニコラス・ウィンディング・レフンというキ○ガイ映画を作り続ける西欧の天才を忘れるわけにはいかないだろう。レフンと組んだ『ドライブ』のライアン・ゴズリングの格好良さは破格である。
何よりも、レフンのあの、無機質かつセルロイド的ともいえる麗しいマネキンめいた世界観に、ゴズリングは最高級にハマっていて、ドライバーという名もなきキャラクターに抒情性を与えている。この映画も傑作であり、おいおいゴズリングよ、あんた何本傑作を物にしているんだよと、私は呆れ果てている。

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そして、再びレフンと組んだ珍作『オンリー・ゴッド』において、ライアン・ゴズリングはまた虚無僧的演技を見せているが(本当に空虚な役をやらせたら神である、神という最上級の言葉を使うのは憚られるが、ライアン・ゴズリングは神である)、今作のメイキング映画で、レフンが妻に対して「今回の映画は駄作だよ、糞が!絶対失敗するよ!」とナーバスになっているのに、ゴズリングはニコニコと話を聞いている様子がない。ライアン・ゴズリングを悪く言う業界人はいないという、そういう話も耳にするのもうなずけるほどに好青年である。

ライアン・ゴズリングは、おそらく私の人生において、死ぬときまで思い出す俳優になっている。なんといっても、『ブレードランナー2049』のKであるから。

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そして、なんと今度は『狼男』に主演するといい、その監督は、『ブルーバレンタイン』、『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』のデレク・シアフランスだという。なんということだ…。

とにかく、私が今観たい映画は、生まれる前から傑作を約束されているこの『狼男』、宮崎駿の『君たちはどう生きるか』、そして、Amazonで製作されるという、危険きわまりない駄作の香り漂うリドリー・スコット御大も関わる『ブレードランナー2099』であるが…。とにかく、『狼男』が早く観たい〜。

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