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『プリディスティネーション』的パラドクス『ターミネーター0』

Netflixで『ターミネーター0』を鑑賞。
8月29日に配信されたばかりのホヤホヤで、全8話、1話30分弱である。

まず、アニメーションである。プロダクションIGが制作している。
なぜ『ターミネーター』がアニメに……?



そういえば、今度、指輪物語、『ロード・オブ・ザ・リング』がアニメ化する。

監督は神山健治。然し、なんというか、若干、昔のアニメーション感が強く感じるが、私はローハンが好きだ。『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』、あれに関しては、ラストの攻城戦が見事だったではないか。あの、両軍が激突する前の、昂る緊張と、放たれた矢で起きる衝突からの、漫画みたいなレゴラス無双……。
まぁ、どうなるかは不明だが、今年の年末はこれで決まりである。

さて、話は『ターミネーター0』だ。
問題は、『ターミネーター0』だ。

『ターミネーター』はオリジナルは1984年に公開されて、これは、もう、実は、続編の、『ターミネーター2』の方が人気があるけれども、結局は繰り返しであり、お約束、やはり、1には勝てない。
『ターミネーター』は、絶望、こそが重要である。やはり、旧型といえ、ドラえもんばりに頼りになるT-800がいては、それは駄目だろう。
1は、カイル・リースである。ぶっちゃけ、ただの人間である。なので、頼りになっても、まぁ、念能力者ではない。そのカイルが死ぬ。そして、サラ・コナー一人で立ち向かう。そのシチュエーション。完璧である。そこに、タイムパラドクスの御伽噺をまぶして、美しさと不思議さが共存した運命が紡がれる。
1が完璧であり、1には空想の余地がある。

2は面白い。エンターテイメントに特化している。

3は、もはや、審判の日が来なくてニート状態のジョン・コナーの元にまたドラえもんがやってきて、どうやっても審判の日が来ちゃうんだよー、という話であり、あの映画は、90億円の興行収入を稼いだ。90億円、である。
2003年、公開当時は、まだ、洋画全盛期の最後の頃だ。最近は、再評価されているという。と、いうか、そもそも3も面白いのだ。

4は、未来だ。未来の話だ。3代目ジョン・コナーこと、クリスチャン・ベールがキレている。撮影の現場でもキレたらしい。問題になっていた。監督はマックG。私は、4が好きだ。2や3よりも好きだ。意外やソリッドで、この映画は、クリスチャン・ベールよりも、実は共演のサム・ワーシントンが主役だが、意欲作だった。機械との戦争が起きた時代を舞台にしている。面白い。マッド・マックスみたいだった。でも、なかったことにされた。

次は5だ。ジェニシスだ。新機動だ。でも、新機動は失敗した。今までの作品をなかったことにしようとした。でも、この映画がなかったことになった。なんか、映画館で観て、それなりに面白かった気がするが、ごめん、内容が思い出せない。

6だ。監督はティム・ミラーだ。『デッド・プール』の監督だ。
ジェームズ・キャメロンが出てきて、これは2の正統な続編だ、そんなことを自信満々に話していた。つまりは、6であるが、3でもある。ニュー・フェイトだ。新たなる運命だ。
これは、衝撃だった。CG合成か何かで作られたエドワード・ファーロングが、2の後、逃亡した場所のビーチか何かで、平和に過ごしている。すると、いきなりシュワちゃんがやってきて、ファーロングは撃たれる。死亡。
シュワちゃんは、いろんなタイミングでやってくるのだ。無理ゲーなのだ。
今回は、敵のターミネーターが全然魅力的じゃなかった。でも、味方側のグレースという強化人間がすごく魅力的だったし、映画としても、少なくとも、3や5よりは面白かった。でも、これもなかったことにされた。

シリーズ自体が、いくつもの運命のようだ。
貴方、何周目?そういう言葉が聞こえてくる。

で、問題は『ターミネーター0』だ。

『ターミネーター0』は、1997年の日本が舞台だ。然し、これは現実とはかなり異なった未来で、文明レベルは、それこそ90年代アニメで描かれる2020年とかそんな感じで、アシモみたいなロボットが店で働いていたりする。この時点で、もうこの世界には入り込めない。嫌な予感する。

そして、審判の日の後、2022年から、一人の女戦士が送られてくる。女戦士エイコである。
今作はシリーズ最高クラスのスプラッタであり、一般人が必要以上に血を出して死ぬ。脳みそも出るし、腕もちぎれるし、すごいことになる。然し、エイコは別だ。彼女は優秀な戦士であり、ガトリングガンで撃たれても全てかわす。これでまた嫌な予感がする。

主人公はエイコの他に、マルコム・リー、という、天才科学者もいる。この科学者は、まぁ、書くとめんどうくさいので、公式HPを読んで欲しいのだが、基本的に、コイツが開発したココロとかいうai的なものと、コイツの対話、それが物語の三分の一くらいある。なので、実は、今作のターミネーターは、会話劇なのである。嫌な予感がする。

まぁ、長くなるので割愛するが、今作は、ターミネーター、というよりも、私の愛する映画、『プリディスティネーション』の匂いが濃厚に香る。そんな映画だ。

『プリディスティネーション』は傑作だ。タイムトラベルをして逃げる爆弾魔を追う男が辿る数奇な運命を描いているが、これは、タイムパラドクスの御伽噺を究極にまで煮詰めたようなウルトラな映画で、私は愛して愛してやまない。

そして、『ターミネーター0』も、後半から、今流行りの並行世界、とか、マルチバース、的な展開、即ち、過去に戻ると、そこからまた別の新たな時間軸が産まれて、平行世界が誕生する、本筋の未来を変えることはない、的な、なんというか、それもまた妄想だよナ、と思うような、そういう理論の話を延々としている。

で、1、は、サラ・コナーと、ジョン・コナーに送られた過去に来たカイル・リースが結ばれて、ジョン・コナーを宿す、という、そういう不思議が描かれるわけだが、今作も、まぁ、同じような感じ、しかも、もしかしてこれって、『灼熱の魂』的な……と、いう、とんでもない感じを匂わせつつ、8話が終わる。続けようとしている、のだが、次回作はあるのだろうか。

で、『ターミネーター』という作品は、1、2、この二本のフォーマットで既に完成しており、何よりも、絶望、恐怖、そこにまぶされた時間の不思議、これが重要であって、殺人マシーンには重さが重要だが、今回のアニメは絵柄も相まって、まるで重さがなく、あまりにも安っぽい。
そして、あまりにも、時間の不思議、平行世界の不思議、タイムトラベルの矛盾などを物語化することで、『ターミネーター』の本質から離れて言っているように思われる。
無論、ネットは1980年代、1990年代とは比べ物にならないほど成長し、幼年期の終わりを迎えているわけであるが、そこに絞るわけでもなく、非常に複雑な物語展開にしたことで、散漫な印象を受けてしまい、ターミネーターという主役があまりにも空虚になっていて、魂が違っている気がする。

ただ、正史ではないアニメーションであるから、まぁ、面白い試みだと思うし、声優さんは全員素晴らしい演技だった。

スプラッターターミネーターもいい感じなので、要素はいいのに、惜しいなぁ、と思った。

まぁ、とにかく、7だ。キャメロンは、これからアバターを3本作るわけだが、然し、次のターミネーターも構想中だ。楽しみである。いや、もう終われよ、と言いたい気持ちもあるが、やはり、ダダンダンダダン、あのBGM、また劇場で聞きたいなぁ〜。


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