キキメと古書ぐらし
『百木田家の古書暮らし』の単行本1巻が発売されたので読む。
本屋さんを4件回って1件、ようやくの入手だが、こういう新しい作品は大抵そうである。
冬目景の新作だが、私はドラマ化すると見ている。
『正直不動産』はドラマ化した。おそらく、『刷ったもんだ』もドラマ化するだろう。『フールナイト』は映画化しそうだ。
3姉妹が主人公で、帯には恋愛群像劇とある。なるほど、読んでみてこれは古書はスパイス程度でしかないのかもしれないと思えた。思った以上に古書に関しての情報が薄い。
私としては古書に焦点を当ててほしいのだが、これはキャラクターに焦点が当たっているので、あくまでも人物の関係性を楽しむ漫画である。
古書に関しては疎い主人公たちが受け継いだ古書店を舞台にしているが、序盤に客のおっさんが古書用語をバンバン使う。
その中に、キキメという言葉がある。キキメとは、全集などの中の発行部数の少ない巻のことであり、コレクター泣かせのものである。
全集は、基本的には発行された最初の方は刷り部数も多いが、後半は熱心なファンしか買わないので売れない。ディアゴスティーニもそんなものだろうか。初めに売りまくるのである。
後半は部数が極端に少なくなるため、古書価が高くなる。このキキメが曲者で、蒐集の際に一揃えが10冊100,000円で売っていたとして、高いから単品で7000円や5000円のでコツコツ蒐めていくとする。発行部数が多い最初の巻は2,000円とかで買えて、いけそうな気がするわけである。然し、キキメの1冊が30,000円とか40,000円とかして、計画が崩壊する。
結局損をするわけだ。なので、全集などはまとめ買いが良い。
漫画でも、例えば昔、『ガンバ!Fly high』という漫画があって私は中古で集めていたが、当時はブックオフなどでシコシコ買っていた。中盤までの巻は比較的手に入るのだが、後半、特に25巻以降からはほぼブックオフにはなく、最終の34巻あたりは見つけるのが至難だった。漫画にもキキメがあるのである。
全集などではないが、三島由紀夫の『魔群の通過』という本は三島本を蒐めている人には難関だという。
初版は10万前後だが、この本の凄いのが帯の有無だろう。古本はカバーあり、カバーなしでは価値に雲泥の差が出るが、この『魔群の通過』初版帯付きは500,000円くらいする。帯、とはコミックスにもついているような、あんな帯である。それがあるかないかで、5倍10倍と値が変る。
なので、みなさんも漫画の帯は捨てないようにしたほうが良い。
まぁ、何百万部も売れている本には価値がないので、売れていない漫画、それも名作に成りえそうな作品に目をかけてやると、金の卵となって孵ってくるかもしれない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?