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オッペンハイマーを観た

クリストファー・ノーラン監督の監督11作目の『オッペンハイマー』を鑑賞した。TOHOシネマズ二条のIMAXにて。

最近IMAXづいている。5月公開の『マッドマックス/フュリオサ』も当然IMAXだ。然し、最新版予告編を観ていると、なんか若干不安が出てきた。

で、『オッペンハイマー』。3時間。180分。長尺だ。
原爆の父、ロバート・オッペンハイマーの原爆開発物語と同時に、1954年の「オッペンハイマー事件」においてスパイ容疑をかけられて、そこで彼が聴聞会で査問される話を交錯させながら、汎ゆる時系列を弄りながら3時間展開させる、まぁ、ノーランの新しい時間操作型拷問映画である。
毎回、時間、において映画で遊ぶノーラン監督は、今回はもう、入り乱れまくる。シーンが、会話が。でも、まぁ、筋は丁寧なので、そこから落馬することはない。けれども、私なんか「オッペンハイマー事件」なんて全然詳しくないのと、誰が誰かわかりにくい為、会話についていくのに精一杯だった。

然しオッペンハイマー。女好きである。傍から見ていると結構なクズであり、まぁ、お前が悪いよね、的な反感を持たれることしばしばであるが、基本的には登場人物全員クズであり、唯一、同じユダヤ系のイジドール・イザーク・ラビだけがいい友人だったが、然し、それ以外は、完全に保身、嫉妬、野心、無知蒙昧、という、イカれた連中ばかりである。
その中でもオッペンハイマーも弩級のイカれ野郎であり、自分の犯した罪に悩み苦しむわけだが、まぁ、キリアン・マーフィーの演技、良かったね。

今作、なんか観たことある役者だなぁ……と思っていたら、ジョシュ・ハートネットが出ていた。私はジョシュ・ハートネットの若い頃がとても好きだったので、嬉しい再会である。それから、デイン・デハーンも、相変わらずのデコッパチのいけ好かない感じの役で出ていて、これも嬉しい。

久方ぶりの超大作出演のジョシュ・ハートネット。

あとはフローレンス・ピューはヌードになっていて、騎乗位シーンをかましていたが、最近、『ボーはおそれている』でも騎乗位のシーンがあって、最近のトレンドかなんか知らんが、私は映画のセックスシーンいらなくね?と思う派なので、こんなシーンいれるなら1分でも削って欲しいところだ。

然し、今作、初めての実験のシーンの演出は凄まじいものがあって、ここが一つのピークとなっている。
破壊、とは美しさを兼ね備えるものだが、原爆は人の手に余る。あれは神の炎だと言っても差し支えないだろう。人間には赦されない力だ。
それを生み出したオッペンハイマーが、広島と長崎への原爆投下後に幻視するシーン、ここも映画的に良い演出だった。

今作は、ロバート・ダウニー・Jr演じるストローズが薔薇の蕾よろしく、オッペンハイマーと話したアインシュタインが厳しい顔になり、その後現れた彼を無視させたことを筆頭に、オッペンハイマー潰しにかかるが、まぁ、その時の言葉は、ズロースト云々ではなく、もっと強大で禍々しいことについての話だったのがなんともいえないところだ。

然し、まぁ長い映画で、180分、前後関係入り乱れ&予備知識を必要としていて、人物も多いため、なかなかタフな映画であるが、まぁ、然し、俯瞰してみるといつものノーラン映画であり、相変わらず序盤〜中盤が素晴らしく、後半はやっつけ仕事になっていたため、そのノーランの特性を考えると、180分はやっぱり駄目なんじゃないカナ、と言いたくなること請け合い。

まぁ、恐ろしいのはこの原子爆弾という禍々しい悪魔兵器が産まれて80年弱、私は彼が言うNEW WORLD、新世界に生まれているわけで、産まれたときからそれが存在していた。
私は、ラストにオッペンハイマーが幻視するジャッジメント・デイのその上に生活しているのだ。

科学者、というものは、それが危険だと理解していても作りたくなるものなのだろうか。

美しい飛行機を作りたいとして戦争の流れを受けて零戦を作った『風立ちぬ』を想起させる映画である。
あれは宮崎駿の美しい映画だったが、今作はメフィストフェレスも裸足で逃げ出す地獄を生み出した科学者の物語であり、日米対を成すようだと感じた。

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