ファッショニスタにはなれねぇ
はるな檸檬の『ファッション!!』を読む(ネタバレあります)。
私はファッションには疎い人間である。だから、『ハウス・オブ・グッチ』などは、私には観る資格がないと思い、例えリドリー・スコットを愛しているからと言って、やはり観る資格はないと思い、観ていない。
例えば、藤井大丸なんかいるだけで精神が殺られてしまう。
ブランドもそんなに識らないのだが、ラフ・シモンズとかは識っている。これは、『ブレードランナー』にインスパイアされた様々なファッションアイテムが発売されたことで識ったわけで、購入もしているが、然し、私のようなファッションに疎い人間に着こなせる訳もなく当然のこと箪笥の肥やしと化している。
無論、『ブレードランナー』とコラボしていなければ、永久に識る術はないだろう。
そんな私にも楽しく読めたのが、今作『ファッション!!』であるが、これは1巻目、物語はファッションオタクの新堂開君がメインとなって進んでいく。
開君は若い頃はファッションに情熱を燃やしていたが、今はその夢を諦めて、電飾の仕事をしている。が、ファッションショーに足繁く通い、会場ではVOGUEのUSA版のカメラマンに写真を撮られる程のファッショニスタである。
開君は真面目で、正義感の強い人で、漫画家の奥さんと一人娘と幸せに暮らしている。然し、今のファッション業界に忸怩たる思いを抱いている。
その彼が、友人のニット教室の生徒の展示会に顔を出すことになり、そこで、運命の出会いをする。展示をしている生徒で留学生のジャンは、非常に熱い男で、彼の熱さにジャンはやられてしまう。ジャンは、東京コレクションの支援枠の審査に受かり、開君に演出をお願いしたい、と言ってくるのだが……というお話である。
まず、Don'tファッショニスタである私にも、楽しく服飾業界に入り込めるのが漫画のいいところである。
今作では東京コレクションでファッションショーをやるのが如何に金がかかるのか、など、物語に上手く落とし込んでいて、ファッションに興味のない人にもすんなりと頭に入ってくる。
え、ショーをやるのに1000万円もかかるのか…、プレス費用高いなぁなど、業界お金話は常に面白い。
そして、今作は冒頭1ページ目に、ファッション、という言葉の意味が描かれる。
ファッション
①人々の間で流行している服装や装飾等のこと。
あるいは、はやりのスタイルや文化を意味する語。
②見せかけいるだけで、本当は見せかけどおりではない
または見せかけほどの程度に及ばないこと。
と、このような文章が並ぶ意味、今作は①の業界において、②の人物が跋扈していく、ホラーストーリーなのである。
光が強烈だと、それだけ大きな影が生まれる、とは使い古された陳腐な言葉だが、今作はまさにそのような作品である>
世の中には、サイコパスと呼ばれる人種が存在する。嘘を平然とつける人間である。サイコパスの恐怖、この漫画は、そのような類に属するのかもしれないが、然しまだ1巻目、今後どうなるかはわからないが、非常に読みやすい楽しい漫画である。
ファッショニスタを目指す人には、ぜひとも読んで頂きたい漫画である。