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エロサブカル。『素敵なダイナマイトスキャンダル』

『素敵なダイナマイトスキャンダル』をようやく鑑賞。

2018年の映画。公開当時、観に行こうかと思っていたが行けず、ようやく。
編集者の末井昭の自伝的映画。主演は柄本佑。監督は冨永昌敬。

R15指定映画、であり、まぁ、エロ雑誌、の話なので、当然だが、逆に、エロ雑誌、の話で、全年齢対象の映画を作るとなると、これはクリエイター、腕の見せ所。でも今回は、きとんとR15。

で、そんな映画、エロ雑誌の話、1960年〜1980年代を描いた作品。

主人公の末井昭は、7歳の頃に母親が隣家の息子と家出して、そして山中でダイナマイトで心中する。爆死する、ということだが、まぁ、末井の家は鉱山で仕事をしていたため、ダイナマイトが手に入ったわけだが、然し、ダイナマイトで意図的に心中する人は、そうはいないだろう。
ダイナマイトで心中するので、当然、はらわたがぶち撒けられて方方に血が飛び散った、陰惨な現場が登場するが、まぁ、グロはそれくらいで、あとはエロ、であるから、基本的には、エロ話。

主人公は、そもそも工場に憧れて上京するが、然し、工場は恐ろしいほどに軍隊的ですぐに幻滅し、逃げ出す。逃げ出した先には楽園なんてありゃしないのさ、とこれはガッツの弁、然し、けれども、エロ世界に行くので、楽園なのかもしれない。で、末井さん、グラフィックの文字に惹かれて、小さなグラフィック会社でポスターとかの絵を描く仕事、でも、なかなか芽が出ない、ここで出会った友人の近松さんに、創作論とか、芸術論とか、色々刺激を受けつつ、そして、彼が描いていたエロポスターで末井芸術が開眼、感動して、その会社を辞めて、キャバレーのポスターで糊口をしのぐ。
キャバレー、それからピンサロ、色々なエロポスターを描く。そして、それはだんだんエロ写真、エロ雑誌へと移行していく。それが面白いし、それが金になるから。
こうして、白夜書房が始まっていく。

全員悪人、的な、エロアウトレイジ。

エロ雑誌に限らず、雑誌が面白い時代、というのがあったと思う。1970年代、1980年代は間違いなく、雑誌が面白い時代、まぁ、雑誌、に限らず、黎明期、黄金期、的なものは、どの業界でもあって、ゲーム業界とか、1980年代〜2000年代初期くらいまでは、まさに時代の徒花咲いた的な、刺激過激あふれる世界だったのだろう。

まぁ、私は、今だって雑誌は好きだが、然し、けれども、それはWEBに取って代わられているし、雑誌も最近高いからな〜。

今作、エロ雑誌の映画なので、もちろん、ヌードがいっぱい出てくるし、柄本佑も、まぁ、この人は映画でよく脱いでいるし、濡れ場も多いが、今作でも、フルチンになっている。

中盤は、創刊された雑誌をベースに物語が展開していき、『ニューセルフ』、『ウィークエンドスーパー』、『写真時代』、など、『写真時代』は、当時35万部売れていた、というのだから、驚きである。

『写真時代』全号セットが売っていた。250,000円プラスタックスで275,000円なり〜、買えないなりよ、キテレツ〜。


2時間18分という長尺映画、138分、そのうち、中盤90分くらいは昭和青春ものとして頗る面白いが、後半30分くらいはしんどくなって来る。ちょい長くて、退屈になる。

青春映画、特に、業界もの、若者がある業界などに入り、そこで様々な経験をして、気づけば華やかりし時代は終わり、栄枯盛衰、ただ青春への追憶が残る、的なものとしての類型は出ないので、この30分の凋落シーンが結構しんどく、1時間50分くらいでまとめてくれたら、もう少し見やすくていいのになぁと思うのだが。
そういう長い映画で、デミアン・チャゼルとかは、『ラ・ラ・ランド』とか、『バビロン』とか撮っていたが、手触りは似てくる。

監督の冨永昌敬は『あの頃。』の脚本を書いていて、あれはモーヲタの映画だが、本質は同様。

私的には、ファミ通編集部とかゲーム業界系の青春映画を観たいところだ。

雑誌って、それぞれにカラーがあって、思想があって、信念があると思うけれども、闇鍋的な側面、怪我の功名などの、予想外、意想外の工夫で、とんでもなく面白くなる。

本当に面白い雑誌は、何故か、全ての記事が面白いという事象まで発生する。まぁ、エロ、と、金、が原動力ではあるのだが、有史以来、常に、それがパイオニアであり、地平を切り開いてきたわけで、その功罪は抜きにして、これも、一つの芸術物語だった。


 

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