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立花隆

ジャーナリストの立花隆氏が亡くなった。

「知の巨人」とも言われ、生物学、環境問題、医療、宇宙、政治、経済、生命、哲学、臨死体験など執筆分野が幅広い人だ。

田中角栄の金脈問題で田中角栄首相退陣のきっかけを作ったことでも有名だ。

立花氏の著書はいくつか読んだことがある。その中でも特に記憶に残っているのが、「脳とビッグバン」と「精神と物質」だ。前者は中学生だった頃、幼稚園の時からお世話になっている近所の病院のおじいちゃん医師に「最近、数学や物理学に興味がある」と言ったら、私にくれた本だ。脳とビッグバン、すなわち、人体と宇宙という異なるテーマを一冊で取り扱った本である。中学の時の私には難しい内容だった。しかし、親しい医者からプレゼントされたということが嬉しかった。今では宇宙の研究を仕事にしている私だが、この本の影響が多少はあったのかもしれない。また、脳についてもずっと興味がある。脳と宇宙、この2つはいつまで経っても謎が尽きない分野である。そんな異なる2つの分野をまとめた「脳とビッグバン」、また読みたくなった。

次に「精神と物質」。この本は個人的にオススメな一冊である。利根川進が1987年、「抗体の多様性生成の遺伝学的原理の解明」で日本人初、さらには単独でノーベル医学生理学賞を受賞した。その利根川氏への20時間に及ぶインタビューをまとめたのが「精神と物質」だが、分子生物学から利根川氏の研究の話まで分野外の人にも分かりやすく書かれている。しかし、その内容は決して平易な言葉で書かれているのではなく、きちんと専門的な話をしているのだが、それでも分かるのだ。ここに立花氏の圧倒的な勉強量・知識量とその表現力を垣間見ることができた。また、利根川氏の生い立ち、研究に対する姿勢などもこの本から知ることができ、研究者になった後にこの本を読み返すと、考えさせられる部分も多々あった。今でこそ脳神経科学に転向した利根川氏だが、この当時から脳に興味を持っていたことも分かる。

立花氏の本は内容が難しいものも多い。しかし、その著書は理系や文系と言った分断にとらわれず知を探求した内容となっており、氏の著書からは知的刺激を受けることができる。知の巨人が一人去ってしまったことは大変残念である。

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