向かってくる者を斬るより、逃げ回る者を斬る方が遥かに難しい。
伊藤一刀斎、彼は徳川将軍家剣術指南役であった小野忠明の師です。
小野忠明は2尺8寸の真剣で何度も一刀斎に挑みましたが、彼の着ている衣服にすら一度も刃がかする事無く負けたそうです。
その際、一刀斎は1尺3寸のただの薪を持って相手をし、小野忠明を何度も打ち負かし、後に忠明は一刀斎の弟子になりました。
しかし、一刀斎と言えども逃げ回る相手を斬るのには苦労したらしいです。
ある日、一刀斎の住居に盗賊がやって来ました。
一刀斎は直ぐにこれに気づき、盗賊を斬ろうと追いかけ回しますが、一向に斬れませんでした。
盗賊も逃げ疲れたのか、近くにあった瓶「大きい壺」の中に身を隠しやり過ごそうとしました。
一刀斎はそれに気づき、その瓶ごと盗賊を真っ二つにしたそうです。この刀は後に瓶割刀と呼ばれ、一刀流の後継者である小野忠明へと授けたそうです。
一刀斎も向かってくる者を斬るのは容易だが、逃げ回る者を斬るのには苦労したと小野忠明に語ったそうです。
警察官が現行犯を捕まえるより、逃亡犯を捕まえる方が難しいと言っていましたが、多分この一刀斎の話と同じ事なんでしょうね。