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【連載】残された人生は大学卒業まで!? #144 バンドメンバーへ

 大学生になってバンドを組んだ。今までずっとピアノしか弾いたことがなかった自分にとっては、誰かと違う楽器を同じ曲で合わせることが新鮮でたまらなかった。

 今出てる曲をコピーして演奏するコピーバンドから始まり、初ライブのために自分たちのオリジナル曲を作り、演奏した。オリジナル曲を演奏して相手のリアクションを見ることが楽しくて、見てる人が楽しそうならとても嬉しかった。

 そこから少しずつ足を伸ばして、一ヶ月に一回のライブが二回に増え、県外へライブへいき、遠征ツアーまで組むことができた。自分たちが楽しく曲を合わせて演奏している範囲からは考えられないくらい大きくなり、ほぼバンドのことしか考えられないような日々が訪れた。

 自分たちで曲を作るのが楽しくて、思いついたときに作っているスタイルが、ライブが増えていくことで時間がなくなり、だんだんと同じセットリストでライブを回すようになってしまった。曲を作る時間がなくなり、毎回代わり映えしないライブをしていると、お客さんがどんどんと減っていき、お金がどんどんとなくなってしまい、大変な日々を送ることになった。

 楽しくやっていたことが、いつも何かに追われているような焦燥感にかられるようになってしまった。

 でも音楽をしている時は楽しくて、ライブでステージに立っている時だけは自分たちが何よりも正義で、今もずっとずっとバンドは続けている。

 2020年はご時世もあり、ライブ活動ができない中でようやく自分たちの曲に真摯に向き合うことができ、新しい曲をたくさん作り出そうとすることができた。

 今まで自分たちが作った曲を見つめ直すたび、どれだけあの頃時間がなかったんだろうという曲ばかりで驚く。今ならこんな曲絶対書かないのにとか、なんでこんなメロディーにしたんだろう、もっとやりようがあっただろうと思うものもたくさんある。

 でも、あまりそれを書き直したくはない。あの忙しかった頃に生み出した曲たち、その時の感性を大切にしたい。でも、恥ずかしい。

 自分たちよりもたくさんのライブを重ねているバンドは山のようにいたし、その人たちが毎回ライブで新曲を持ってきているのを見ると不思議でたまらなかったし、なぜ自分にそれができないのだろうと悩む時もあった。

 しかし、どんな時も自分の作る曲を待ってくれていたバンドメンバーがいた。どれだけ遅くなっても、どんな曲を作ってきても、全否定せず静かに待ち続け、曲に新しいスパイスを加えてさらにいいものを作ってくれた。

 バンドメンバーのおかげで成り立つ曲をいっぱい書いた、あの忙しい時期を一緒に走ったメンバーが今も真剣に音楽に向き合ってくれる。 

 バンドって楽しいのかな?これやっててお金減るだけだしやめようかな、なんて思う時もあったけど、不思議とメンバーと離れることだけは嫌だった。ずっとこのメンバーで音楽を続けていきたいと思える人たちだった。

 音楽性も合わないし、性格も何一つ合わない、凸凹なメンバーだらけだけど、不思議と居心地がいいのである。

 どんな時もずっとついてきてくれた、一緒に頑張ってこれたメンバーと自分に必ず日の目を見させてやりたいから、ずっと音楽を続ける。売れさせるや金儲けをするという目的ではない。ただただずっと自分の大好きな音楽をこのメンバーでやりたい、それだけなのだ。


 BU(◎)DOH

あなたの一存で、これからの旅路を一緒に作っていけたらいいと思います。