【前編】東京の中心で最先端のファッションを染める老舗染工場が描くものづくり| UCHIDA DYEING WORKS にインタビューしてきました!
こんにちは、Buddy's編集部です!だんだん夏に向けて暑くなってきましたね。
今回は「UCHIDA DYEING WORKS」さんにインタビューしてきました!
▼インスタグラムアカウントはこちらhttps://www.instagram.com/uchidadyeingworks/
「UCHIDA DYEING WORKS」さんとの出会いは、MEGURIWA(めぐりわ)さんが2020年11月20、21日に開催した「Meguriwa展」でした。
今回のインタビュイーは株式会社内田染工場代表の内田光治さんと、UCHIDA DYEING WORKSプロデューサーの茶畑ゆかさん(ucou Co.代表)です。
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インタビュー|染工場の「ものをつくらないものづくり」
井上:昨年11月に開催された、SDGsを実現するアクションとして注目される「サーキュラー/バイオエコノミー」の実践者を集めた展示会、Meguriwa(めぐりわ)展にお邪魔し、初めて「UCHIDA DYEING WORKS」さんを拝見しました。
会場で内田さんや茶畑さんとお話させていただく中で、取り組みについてもっとお話を伺いたいと思いインタビューをお願いすることになりました。まずは立ち上げた経緯からお伺いできればと思います。
内田:まず、背景となっている工場について説明させてください。UCHIDA DYEING WORKS は(株)内田染工場が2019年に始動させたオリジナルブランドです。
内田染工場は東京の中心にあり、若手職人が多く活躍する111年の歴史を持つ染工場です。
染屋にはそれぞれ得意分野があって、糸染や生地染中心の染屋が多い中、内田染工場はガーメントダイと呼ばれる製品染に特化した工場になっています。
量産型の染やブリーチから、職人の手作業を要する特殊加工まで幅広く対応し、かつ、スピード感のある納期を実現するための努力を怠らないようにしています。
デザイナーが求める未開拓の表現に挑戦することは我々の喜びでもあり、こういった姿勢が評価されてか、数多くの日本のトップブランドのガーメントダイを担当させていただいています。
その内田染工場をそのまま表現するようなブランドを作っていきたいということでUCHIDA DYEING WORKSという名になりました。
茶畑:UCHIDA DYEING WORKSを創始する前、ガーメントダイを主体とした染工場である内田染工場のものづくりって何だろうと考えた時、まずはじめに、形は必要なのか、という問いが自分の中にありました。そして、内田染工場のものづくりとは、「ものを作らないものづくり」なのではないか、と考えるに至ります。
井上:「ものを作らないものづくり」とは何でしょう?
茶畑:UCHIDA DYEING WORKSで最初に発表したのは、染で古着のシャツをアップサイクルした製品群です。「新品よりも面白い」をコンセプトに、使い古された古着や、ほんの少しの傷等が原因で市場に出せなくなってしまったB品を、製品染ならではのアプローチで染めつけたり、脱色したりしながら再提案しています。
染屋なので染で表現し、その表現に形はできるだけ組みこまない方がやろうとしていることがクリアになると思いました。なので、あたらしく衣服等をデザインすることはせずに、既にある「形」である古着やB品をそのまま使っています。
これにはファッション界における大きな問題点への意識もあって、それに対する自分たちなりの取り組みの方向性を考えるきっかけとなりたいという思いがありました。
世界に不要となった服が溢れていることはご存知かと思います。大量生産・大量廃棄によって不要となった衣服、しかもファストファッションの台頭により、あまり良質でない衣服がかつてないスピードで増えています。
その中で、新たにブランドを作ろうとした時に、新たな服や、何か形をつくる必然性があるのかどうか真剣に考える必要があると感じました。
染だけの表現で、世界に溢れている不要な衣服=古着を積極的に使っていきたいと考えました。これはとても良い意味で繋がっているし、まずそこからスタートしてみようと思いました。
だから、新たに形は作らない、今ある形をつかうものづくり、つまり「ものを作らないものづくり」が自分たちのものづくりのスタート地点だなと思ったのです。
SDGs的に言うと、
環境問題対策の優先度は「リデュース(削減)、リユース(再利用)、リペア(補修)、リサイクル(再生)」の順に高い
と環境活動家のアニー・レオナードは指摘しています。
UCHIDA DYEING WORKSの古着のアップサイクル製品は、ゴミとなる不要衣類の「リデュース(削減)」、そして「リユース(再利用)」につながるし、こういった視点からサーキュラー/バイオエコノミーの実践者のひとりとしてMeguriwa(めぐりわ)にお声をかけていただきました。
井上:なるほど、それであの場でお会いすることになったんですね。UCHIDA DYEING WORKSで取り組んでいるSDGs的な視点についてもう少し詳しくお伺いしたいです。例えば、草木染なども使われるのでしょうか?
インタビュー|「UCHIDA DYEING WORKS」と環境配慮
内田:最近、草木を使った染技法の開発も進み、よく使われるようになっています。
ですが、草木など100%天然染料で染める中では堅牢度がやはり問題になります。そのため、草木の色あい + 化学薬品といった在り方が主流です。
一方、自分達が100年以上取り組んできたのは化学染料で、だからこそ出せる色、堅牢度、スピードがあると思っています。
茶畑:そうですね。化学染料だからこそできるアップサイクルの形があるとは思っています。堅牢度の面からも、現代の市場から求められる水準に草木染は届かないし、草木染「風」にすることも意味がないので、内田染工場がこれまで取り組んできた化学染料の長所は長所としてちゃんと受け止めたいな、と。
内田:一方で、どうやったら染屋が環境負荷を減らせるかということは重要な問いです。そこで私たちは、機材の増設を積極的に行なっています。
例えば、私たちの工場は東京にあるのですが、東京都では排水は中和して流せば問題ないことになっています。下水道が完備されているからです。
工場エリアにはいくつか排水ピットがあります。そこからポンプアップして中間槽にうつし、排水処理をします。その後中和槽にうつして中和処理をしてから下水に流すのですが、その能力をより高めるために、最終的な中和槽をもうひとつ増設しました。
また、染色には大量の水を使うのですが、世界的に不足しつつある淡水(飲める水)の汚染は染色業界がトップだと言われています。
実際、染色に限らず繊維業界は水と密接にかかわりがあります。水なしでは糸を作ることすらできません。
水があるから繊維を糸にできるし、その糸に色をつけることもできる。ただ、その水は有限であり、世界的に不足が問題になっている。ただ、水の使用量を減らすチャレンジは始まっています。そのための機械を導入しました。
井上:それはどのような機械でしょうか。
内田:ナノバブル発生装置(e-flow)というスペイン製の機械です。染料を含んだ水を細かなミスト(噴霧)状態にし、その中に衣服を入れ染め付けることができます。霧が充填したような空間に衣服を置き、着色させると言った方がイメージが湧きやすいでしょうか。
この機械を使うと染めるために使う水の使用量を約10分の1にできる試算になっています。その分、均一に染まりづらい等の特徴もありますが、この染色技法もUCHIDA DYEING WORKSの製品づくりに導入していければと思っています。
井上:これは画期的ですね!
内田:そうですね。まだ一台しかないですが、自分たちの中で環境問題を捉えるために、実用に向けた実験を重ね始めています。
井上:やはり、ヨーロッパではこうした機械の開発が進んでいるのでしょうか。
内田:そうですね。進んでいると思います。最近では岡山のジーンズ工場でも採用されているということを耳にします。
岡山はストーンウォッシュと呼ばれる、石を機械の中に入れて衣服にダメージを与える加工をすることが多い産地なのですが、石を使わないでも似たような風合いが出せるということで採用されているようです。
井上:このような、水の使用量を10分の1にするような機械の導入などは日本全体の動きなのでしょうか。
内田:いえ、そうでもなくて東京では今のところうちだけで、あと岡山で2社程度ですね。これから増えていくとは思います。
機材面では省エネタイプのボイラーも導入したのに加え、熱交換の考え方を活かして省エネに取り組もうとしています。
たとえば現状、ただ捨ててしまっている余った蒸気を再利用したり、井戸水の配管を利用することでエアコンを使わずに工場内を冷却させるアイディアが出ていて、それらを取り入れることでより環境負荷を減らしていきたいと考えています。
染工場である以上、100%地球環境に影響を与えないようになるというのは難しいのですが、設備面含めて自分たちでできることを積極的に取り組んでいこう、と考えています。まずはやれるところから、ということですね。
次回予告
今回のインタビューではまず導入として、「UCHIDA DYEING WORKS」さん設立のきっかけやどのような形で環境への配慮を考え始めているのか、についてをお聞きしました。
後編ではもっと深掘りをしていきたいと思います。SDGs と、UCHIDA DYEING WORKS が考える「豊かさ」についてお話を伺います。
次回の記事もお楽しみに!
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