「お酒は太る」は本当?酒席を乗り切るコツを管理栄養士が解説
お酒は、以前は「酒は百薬の長だから少量の飲酒はむしろ健康に良い」とも言われていましたが、最近は「少量でも飲まない方がいい」という研究結果が増えています。
また、糖質制限ダイエットが流行るようになってからは、栄養相談でも「糖質を減らしたいから、ビールではなくてハイボールにしている」という話題がしばしば上がります。
そこでこの記事では、「お酒はどれくらいなら飲んでOK?」「お酒は本当に太るの?」など、アルコールに関する疑問についてお話しします。
適正飲酒は純アルコール20g以内
厚生労働省は、「節度ある適度な飲酒」として、純アルコールで約20g程度(以内)を目安としています。その上で、女性では20g以上、男性では40g以上を、生活習慣病のリスクを高める飲酒量としています。
大前提として、お酒は適量を守って楽しく飲みましょう。
「でも、乾杯だけで、純アルコール20gになってしまう」というのは、残念ながらその通りです。ぜひ覚えておきましょう。
とはいえ人によってアルコールの代謝能力は異なるので、もしも、もう少し飲みたい場合でも、爽やかな気分で終えられる程度にし、翌日はお酒を控えるなどして、調整してくださいね。
飲酒量が増えるほど、生活習慣病だけでなく、認知症、うつ、ガン、肝臓疾患などさまざまな疾患との関連する(*)ことも、ぜひ覚えておくと良いでしょう。
お酒(を飲む機会)は体重が増えやすい
では「お酒は太るのか?」という疑問ですが、「適量飲酒を前提とした時、お酒(を飲む機会)は体重が増えやすい」といえます。
お酒そのものからのエネルギー
まず、お酒のエネルギーを見てみましょう。アルコール1グラムは約7kcalですが、一部は熱として消費されるので、アルコール1グラムあたり大体5kcalほどだと言われています(**)。
さらに、醸造酒であるビールや日本酒は、原料の栄養素もエネルギーに反映されます。たとえばアルコール分5%のビール350mlは約140kcalですが、内訳は以下の通りです。
蒸留酒である焼酎やウイスキーの場合は、他の栄養素を含みません。
しかし、醸造酒に比べるとアルコール濃度が高い分、少量でもエネルギーが高くなりがちな点に気をつけましょう。(ウイスキーダブル60mlで、ビール350mlと同じ約140kcal)
当然、飲酒量が増えれば体に蓄えられるエネルギーも増えますから、適量飲酒が大切です。
お酒を「割る」液体からのエネルギー
次に、「お酒を何で割るか」も重要です。
糖質を含まないはずの焼酎も、飲みやすくて糖質たっぷりの甘い酎ハイに変われます。
つまり、体重や血糖値が気になる場合には、なるべく水や炭酸水、ウーロン茶などノンカロリーのもので割ることをおすすめします。
料理・おつまみからのエネルギー
さらに、おつまみからのエネルギーがあなどれません!
お酒の有無に関わらず、宴席では普段よりも食べる量が増えるという方がほとんどでしょう。
冬の宴会では、鍋料理など野菜をたくさんとれる料理も増えますが、宴会料理の全体的な傾向としては、唐揚げやポテトなど、高カロリーで見栄えがする揚げ物が多くなります。
コース料理では一人当たりの量が、1,000kcalを超えることが珍しくありません。
大皿料理の宴席では、種類がたくさんあると量が把握できなくなりますし、長い時間をかけてちょこちょこ食べるので、知らず知らずのうちにいつもよりたくさん食べがちです。ダメ押しに、「残っているの誰か食べて〜」で、満腹でも頑張ってしまう方もいらっしゃるでしょう。
つまり、お酒そのもののエネルギーと、おつまみのエネルギー、どちらも普段よりもオーバーしやすくなるのが「お酒は太る」と言われる正体です。
お酒を楽しみながら体重管理するには
「お酒は飲みたい、でも体重をコントロールしたい」という場合は、次の中から、楽しみたい気持ちとのバランスに応じて選ぶと良いと思います。
・適量を参考に、ゆっくり飲む。割る時はノンカロリーの液体で。
・おつまみには、枝豆や漬物など、カロリーが低いものや野菜を選ぶ。
・イベント前後の食事量を減らして調整する。
実際に10kgの減量に成功された方でも、毎日350mlの缶チューハイは欠かさなかった例もあります。つまりはやり方次第です。
お酒はあくまで適量飲酒をすすめますが、「宴席ではいつもよりたくさん食べたい」という場合は、前後の食事で調整してやりくりしましょう。
あまりに空腹で参加すると食べすぎてしまうので、事前にナッツや大豆など、血糖値をあまり上げずに空腹を満たせる食べ物をお腹に入れておくのもおすすめです。
また、同席者の中で、「この人みたいな体型になりたいな」と思う人と同じ物を飲み食いしたり、痩せている人にメニューを選んでもらったりするのもおすすめです。
楽しい宴席では、飲み食いの熱意をおしゃべりの熱意に回しましょう。
義理で参加する宴席では「食べるくらいしか楽しみがない」ではなく「この会によって太るのはもったいないぞ」と思いながら参加できるといいですね。
お酒とも上手に付き合って、健やかに生活していきたいですね。
引用文献
*厚生労働省eヘルスネット.アルコールと健康障害
**厚生労働省eヘルスネット.アルコールのエネルギー(カロリー)