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「おすそわけ」匿名配送の副産物
緊急事態宣言のころ、北は北海道から南は沖縄まで、文字通り全国から「たすけて」の声とともに「おやつ」希望のメッセージが鳴り響いた。一体何が起こっているのか?どうやら地元の支援活動や行政窓口が動けなくなっているようだ。
地域のお寺と地域の相談窓口や地域住民の関心を繋げていくのが「おやつ」の活動。その前提は今でも変わっていないが、つなぎ先がない状況で、何もしないわけにもいかない。SDGsといわれなくとも、僕たちの活動は「だれひとりとりのこさない」活動なんだ、と事務局一同覚悟を決めて、即日連日で、全国各地へ直接「おすそわけ」する直接支援活動にかじを切った。
2025年2月。直接支援活動を通じて「おすそわけ」をお届けした世帯は15,000世帯。様々な事情で複数回のお届けをしながら、必要な助けへと「はしわたし」を試みている世帯も多い。
ご賛同いただいた全国の寺院のネットワークがありながら、直接「おすそわけ」を送ることができるのはNPO法人の事務局がある奈良のお寺からのみ。勇気を振り絞って「たすけて」の声とともにお預かりした個人情報があるからこそ、「おやつ」を届けることができるからだ。
感染症拡大でお寺の法務も手探り状態。こういうときは掃除が捗る。メルカリでコミック全巻セットを探していたら(おいw)、匿名配送の機能を知った。これやん。
近況報告にと訪れた中川淳さん(中川政七商店会長)に繋いでもらい、メルカリ曾川景介さんに相談。メルカリの仕組みは他社展開できないが、クロネコヤマトのAPIで実装できるかもしれない。とヒントを貰う。
お盆の手伝いでお寺に来てくれていたNAIST(奈良先端科学技術大学院大学)の学生に、件の課題を話してみたら「それならコード3行でできますよ」と。
ゆうたな(笑)
そこから2ヶ月、コード3行ではできず、徹夜続きで完成したのが全国のお寺から最寄りの家庭へ匿名で「おすそわけ」する仕組み。コロナ禍の活動を支えてくれるシステムとなった。
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匿名配送の仕組みには副産物が2つある。個人情報に配慮するという導入理由だったが、どうやらその距離感が求められていたようだ。「近所のあのひとが」ではなく、「どこかのだれかが」見守ってくれているのがちょうどいい、と。めっちゃわかる。
もうひとつがちょっとやっかい。匿名配送の仕組みで届く荷物はすべてシステムを運営する法人に課金される・・・(汗)。導入当時、ここはすごく悩んだポイントだが、「おすそわけ」してくださるお寺の負担をできるだけ抑えることで、圧倒的に足りていない「おすそわけ」を増やすために、法人負担を決断した。(今回のクラファン、ぜひご寄付でお支えしてください)
一足飛びに顔が見える関係で助け合えたらいいんだけど、そんな簡単にはいかないのがこの世界。まずは匿名で繋がり、いつの日か、ご縁がととのい、顔が見える日が来る。
いや来なくても、どこかでだれかがたすけくれる、どこかのだれかをたすけられる。匿名での支え合いが当たり前になればよい。
息子が箱を開けて「わー!これ好きなやつや!知らない人やのにお菓子くれるなんて優しいね。とっても嬉しい気持ち。」と言っていました。優しくしてもらったから、誰かに優しく出来る人になってねと息子に話しました。
子供たちが嬉しそうに目をキラキラさせていました。「お菓子1つだけ買って」と言う子供に、いいよと言えない自分を毎日せめていました。生活が苦しいことは恥ずかしいことだと思い今まで誰にも相談できずにいました。おすそわけが届き、嬉しくて涙がでました。
親の都合で子供を悲しませたくないという理由で今回申込みをさせていただきました。母子家庭の証明を出していないのに即日届き、涙が出ました。毎日仕事と家の往復で、子供の宿題を見るのがやっとで辛いこともありますが、気持ちが救われます。
コロナ禍の緊急対応から生まれた、全国のお寺から匿名で地域のご家庭へ「おすそわけ」する仕組み。全国2,100のお寺から1万5,000世帯のご家庭へお届けできるようになりました。
さまざまな統計によれば、30万世帯を超えるひとり親家庭への「おすそわけ」が必要。まだまだこれから。次の10年で実現できるとよいね。匿名の活動といえば、あしながおじさんやタイガーマスクがあるけど、おやつの活動もそれぐらい多くの方に「どこかで誰かが、知らないもの同士で助け合う」仕組みになれるとよいね。 若い事務局メンバーたちが、次の10年で実現したいことを語り合っていました。
あ、もうひとつ、副産物がありました。匿名で「おすそわけ」するってことは、自分がこれをやった!を手放せるんです。これが実は大事なポイントなんだと思う。てばなす。つながりましたね。
たよってうれしい、たよられてうれしい。たくさんのうれしいが生まれる社会になりますように。応援よろしくお願いします。
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