見出し画像

『昨日の葬列』の足跡を辿る 1

2週間にいちどくらいのペースでドライブに出かけている。そうしないと精神が死んでしまう。私の勤めている会社は隔週で土曜日も勤務があるため、唯一の休日である日曜日に出かけると月曜日の出勤がとてもしんどくなる。週1で出かけると確実に疲労が蓄積され肉体の死に近づいてしまうため、仕方なく2週にいちど出かけることにしている。

車で好きな音楽を聴きながら2〜3時間も走ると、心は平日のギスギスした気持ちや仕事で受けたストレスやその他諸々のこともなんとなく落ち着き、またなんとかやっていけそうな気持ちになる。余裕がある時は出先で気になる店に入ってお茶を飲んだり、地元のお菓子屋さんでお土産を買ったりする。そしてまた2〜3時間かけて帰路につく。お手頃な趣味である。


先日はあまりどこに行こうと考えずに休みの日を迎えた。それでふと『昨日の葬列』のことを思い出した。

ツイッターでフォローしていた写真家・道民の人さんが出した写真集だ。
私は先日ツイッターをやめてしまったのだが(それについてはまた今後書きます)、それは今は関係ない。こう、胸にぐっとくる写真を撮られる方だ。

まあ、今回この写真集を選んだのは特別な理由があるわけではなく、単に家から2~3時間車を走らせたところにある場所が写っていたからである。頃は初冬、夏から秋にかけて危険な蛇や蜂もおとなしくなり、路面に氷が張ることもまだない今の季節。今行くなら山だろう。私は思った。

先ほどの写真集『昨日の葬列』に「白石集落 四国山地を望む墓地・徳島県」というのがある。私はそこに行くことにしたのだ。この安易な決定が後に私をものすごく苦しめることになるのだが、この時の私はまだそれを知らない。

2時間ほど車で走っているときは平和だった。しかし、目的地まであと1時間くらいのところでカーナビがここを曲がれと示した道が「ここはちょっと……」と思うような急勾配の坂道だった。しかも狭い。私は迷わずその道をスルーした。初めに示す道を通り過ぎてしまうと、ナビゲーションシステムが次の候補を示してくれることがある。それを期待したのだ。
カーナビはしばらく道なりに走れと指示し、次にここを曲がれ、次はここを曲がれと指示した。そして、元の道に戻ってきた。ここしか行くとこはないのか……。意を決して坂を上りはじめる。あとはずーっと、とにかく狭い道だった。一度だけ対向車にあったが、運が良いことに民家の近くでちょっとした広場があったのでそこで待機してやり過ごせた。あとはとにかく対向車が来ませんように、と祈りつつ車を走らせた。

しばらく行くと、ここは車がしばらく走っていないのではないか、という道になってきた。でもナビはこの道で合っていると言う。季節が季節なので落葉がすごいのだけど、枯れ枝もいたるところに落ちている。まあいけるか、と車をそのまま走らせているとなんか車の底のほうがガガガガ……と言い出し、明らかに走りに影響している。まさかタイヤがパンクでもしたか、と車を降りてみると枯れ枝が車の底で変な風に引っ掛かり、それが異音の原因となっていたのだった。それでも意外とあっさり取り除けたので、今度はもっと慎重に車を動かし始めた。

ふと建物の影が見えたので車を止めた。

端山四国霊場 第七十五番 白石庚申堂

……端四国八十八か所、こんなとこにもあるのか……。
私は徳島県のつるぎ町にある「端(はば)四国八十八か所」を廻りはじめてまだ4か所しか廻れていないダメダメ人間なのだが、その八十八か所のひとつがこんな山の中にあったとは知らなかった。本当の八十八か所と違って一つの町の中にあるものだからと正直舐めてしまっていた。激しく反省したし、これは頓挫するかもしれないな、とそのとき強く感じた。

しかし、今日は端四国霊場廻りではない。今日の目標の場所まではまだまだ距離がある。わたしはまた車を走らせた。

そういえばマップを見たときにこの辺に小学校があったな、というところまで来た時、ちいさなプールが道路の横にあるのを見た。ああ、マップで見た小学校はこの辺なのか。
そう思いながらゆっくり車を走らせていると、狭い道から急に広い場所に出た。

一面落葉で金色になっている

三所神社、と書かれていた。神社はたいてい境内を掃き清めていたりするが、この一面の落葉があまりにも見事なのでこれはこれでいいものだなとしばらく見つめていた。落葉を踏んで荒らしてしまうのが惜しかったが、お詣りをさせていただく。帰りに坂道の落葉で事故しませんように、と祈ったがそのあと写真を撮らせてくださいともお願いし、勝手に来ておいて写真も撮って、その上事故しませんようにというのは利己的過ぎるかと思い直した。事故しないようにするのは自分であって、神頼みすることではない。なのですみませんでした、もしよければ事故しないように頑張るので見守ってくださいとお願いした。さっきの願いと変わらない気もする。

来た道と違うやや細い道には鳥居

神社は集落の中心にあったのか、やや広い場所にあり、そこから一段下がった場所に小学校を見つけた。神社も小学校横の施設(消防用倉庫など)も定期的にきちんと手入れをされているらしいが、小学校の校舎はかなり傷みが激しかった。

旧白石小学校(白石自主防災会避難所)

もしかしたら、奥の建物は旧校舎であまり使われていなかったのかもしれない。手前の建物は今でもそれなりに管理がされているのかも。奥はこじんまりした木造校舎で、そのまま保存されていたらとてもかわいらしかっただろうと思う。でもこれも住む人がいなくなった今では仕方がないことなのだ。

白くて小さな木造校舎

と、ここまで小学校校舎を眺めるのに夢中だったが、ふと足元を見ると至るところに鹿のフンがあった。鹿はまだましだけど、猪も絶対いるよね。やっぱりおっかないのは野生動物……。

元の校庭は鹿のフンだらけだった

続きはまた今度書きます。

いいなと思ったら応援しよう!