西澤保彦『仔羊たちの聖夜』読了

再読。クリスマスイヴの夜、一人の女がマンション最上階から転落死した。偶然、現場に遭遇したタックとタカチ。状況は自殺だが結婚式を控えた彼女に動機はなかった。ならば殺人か? 事件を調べる二人は五年前にも同じ場所での高校生の飛び降り自殺を知る。

久々の再読本。クリスマス前なのでこれを選んでみた。法では裁かれない嫌悪感を催す邪悪が勢ぞろい。再読して意外だったのは酩酊推理が今回大人締め。どちらかというと章題に現れている「巡礼」通りに、タックとタカチが聞き込みをするという方が多かったところ。

その先には先にもいった、吐き気を催す邪悪な人物たちがいるのだが、タカチがそれを制裁するのが読んでいて気持ちがいい。別件と思われていた自殺が繋がっていくという、心地はまさにミステリのそれ。イヴで終わる幕切れも良し!





【ネタバレ注意】

本書の一番の見どころはやはり、別件と思われていた、五年前の自殺と一年前のイヴに起きた事件が繋がるところだろう。そこには、久作の祖母いち子の「悪意」が存在していた。

孫のために女性まで「やり与えてる」という悪意が……。

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