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「悪い円安」について考える

アメリカでインフレが進みFRBの量的金融緩和が縮小に転じたことを受け、急速に円安が進んでいます。2022年4月28日には一時130円台となり、5月後半でも127-128円/ドル程度となっています。 円安の原因についてはいろいろなエコノミストがいろいろなことを言っていますがリーマンショック以降は為替レートは相対金利差に動かされる傾向が明らかなので、アメリカの金融緩和縮小が円安の主要な要因でしょう。ただし、これがどこまで進むか落ち着くかの予想は非常に困難であろうと思いますし私は

    • 読書ノート「世界インフレの謎」(著:渡辺努 講談社現代新書)

      1.はじめに本書は2022年10月20日に発行されました。私が手にしているのは2022年11月4日に発行された第2刷です。著者は本書の帯によれば日本における物価研究の第一人者と目される経済学研究者とのことです。本書は2023年現在においても世界を覆い続けている今次のインフレについて俗説を排して実証的に原因を明らかにするものです。 2.本書の概要(1)なぜ世界はインフレになったのか まず現在のインフレが始まる前は日本以外の先進国でも低インフレ化が懸念されていました。その要因

      • 読書ノート「チョムスキーと言語脳科学」(著:酒井邦嘉 インターナショナル新書)

        1.はじめに本書は2019年4月10日に出版されました。私が手にしているのは2022年1月26日付けの第4刷です。本書は、アメリカの言語学者ノーム・チョムスキーを自然科学としての言語学を初めて確立した者として、その思想の原点と脳言語科学の成果を紹介するものとのことです。 2.本書の内容(1)普遍文法 著者は、チョムスキーが言語学を文系の一分野から自然科学にしたといい、その理論はダーウィンやアインシュタインと並ぶ革新性を持つといいます。 著者は、サイエンス(ここでは自然科学

        • 読書ノート「未来は決まっており、自分の意志など存在しない。」(著:妹尾武治 光文社新書)

          1.はじめに本書は2021年3月30日に出版されました。著者は知覚心理学の研究者です。本書の内容と主張はタイトルに集約されているとおりです。著者はこれを心理学的決定論と呼び本書の副題にもなっています。本書のはじめに、この本は著者の個人的思想を書きたいように書いたトンデモ本であり科学的に全く正しくないという趣旨のことが書かれています。ただし反科学的なことが書いてあるというものではなく、科学的知見を前提としつつ科学では探り切れない原理を考えてみようということだと思います。 私が

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        • 読書ノート「世界インフレの謎」(著:渡辺努 講談社現代新書)

        • 読書ノート「チョムスキーと言語脳科学」(著:酒井邦嘉 インターナショナル新書)

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          2020年度の妊娠届出数及び人工妊娠中絶数の状況

          以前、拙稿「気になる統計 新型コロナウイルスの流行による少子化への影響」で取り上げた妊娠届出数の続報が5月26日に厚生労働省から公表されていました。同時に人工妊娠中絶数の状況も公表されています。それぞれ公表資料にグラフが掲載されているので引用します(引用元「令和2年度の妊娠届出数の状況について 」「令和2年度の人工妊娠中絶数の状況について 」)。 両者を見くらべると多少形は違いますが、どちらも昨年5月から低下して10月頃までいったん上がり11月にまた下がるものの12月には2

          2020年度の妊娠届出数及び人工妊娠中絶数の状況

          気になる統計 消費者物価指数 全国(2021年4月分)

          2021年5月21日に総務省から消費者物価指数(4月分)が公表されました。ウェブサイトに掲載されている情報を引用すると次のとおりです。 1月からの総合指数の動きをみると物価下落基調が続いているようですが実はこの期間に下落の中身が転換しているのす。ポイントは生鮮食品を除く総合(コア)と生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)の差の動きです。1月はマイナス0.7、2月はマイナス0.6、3月はマイナス0.4、4月はプラス0.1です。コアとコアコアの差はエネルギーの影響を表しま

          気になる統計 消費者物価指数 全国(2021年4月分)

          気になる統計 月別自殺者数について(2021年4月末の速報値)

          2021年5月14日に警察庁から4月の月別自殺者数(速報値)が公表されました。本年の推移をグラフにまとめると次のとおりです。 厚生労働省のウェブサイトに情報が取りまとめられているの引用します。 対前年同月比に着目した報道等を見聞きすると自殺者がどんどん増えているような印象を受けますが例年自殺が多くなる3月と比べると今年も対前月では自殺者数が減っていることが分かります。また昨年は最初の全面的な緊急事態宣言の影響で4月と5月の自殺者数が例年の傾向と比べ大きく減っていたことも分

          気になる統計 月別自殺者数について(2021年4月末の速報値)

          気になる統計 宿泊旅行統計調査(2021年3月・第1次速報)

          2021年4月28日に観光庁から「宿泊旅行統計調査(2021年3月・第1次速報)」が公表されました。3月の延べ宿泊者数は2,726万人泊で前年同月比+13.9%となりました。 ここで注意しなければいけないことは昨年の3月は既に新型コロナウイルス感染症の影響で観光が大きく落ち込んでいたことです。したがって前年同月比というのは大きく落ち込んだ数字からの変動を表しています。公表資料に時系列データのグラフが掲載されているので引用します。 延べ宿泊者数は1月、2月の緊急事態宣言下よ

          気になる統計 宿泊旅行統計調査(2021年3月・第1次速報)

          月例経済報告雑感(2021年4月)

          2021年4月22日に内閣府から4月の月例経済報告が公表されました。景気の現状に関する基調判断は3月と変更ないようですが個別には設備投資が「このところ持ち直しの動きが見られる」から「持ち直している」に上方修正されています。一方で輸出は「このところ増勢が鈍化している」から「増加テンポが穏やかになっている」と霞が関文学すぎてよく分からない文言に変更されています。 そういうことで景況判断には大きな変化がないのですが月例経済報告関係資料に興味深いグラフが掲載されていたので引用します

          月例経済報告雑感(2021年4月)

          quan(久遠)成実図Q&A

          先週「久遠成実とダブルビッグバンについて考える」という記事を書いてみて自分で読み直してみたところ我ながらよく分からんなーとか詰めが甘いなーと思うところが多々あったので特に誰からもご意見・ご感想はいただいていないのですが自分自身が抱いた疑問をもとにQ&Aで補足・訂正していこうと思います。 quan(久遠)成実図再掲 Q1 原球Qって何ですか?宇宙の始まりが点だとすると時間も空間も値が0の原点となります。しかしこのような点では物理法則が適用できなくなるようです。幸い量子力学で

          quan(久遠)成実図Q&A

          気になる統計 貿易統計2021年間3月分速報

          2021年4月19日に財務省から貿易統計2021年3月分速報が公表されました。2021年3月の輸出額は7兆3,781億円で前年同月比プラス16.1%、輸入額は6兆7,144億円で前年同月比プラス5.7%、貿易黒字額は6,637億円で前年同月比プラス8756.6%です。 輸入も増えていますがそれ以上に輸出が大幅に増えたので貿易黒字額が大きく伸びました。先月は世界的な半導体不足で自動車生産が停滞して輸出額が減少していました。半導体不足が解消されたという話は聞かないのですがメーカ

          気になる統計 貿易統計2021年間3月分速報

          久遠成実とダブルビッグバンについて考える

          まず初めに本記事は仏教哲学でも物理学でもなんでもない個人の形而上学的随想もしくは妄想の産物であることをお断り申し上げます。 私は文系人間ですがブルーバックスなどの自然科学系の本も大好きでよく読んでいます。また哲学・思想系では西洋哲学よりも仏教哲学の方が気に入っています。自然科学は形而上学を排し観察された事実に基づいて自然の原理を究明するものであり、また仏教は戯論といって形而上学議論を嫌い、悟りの智慧においては戯論は寂滅するといっています。そうしたことは承知の上で私は楽しい形

          久遠成実とダブルビッグバンについて考える

          気になる統計 月別自殺者数(2021年3月速報)

          2021年3月9日に警察庁から月別自殺者数(2021年3月速報)が公表されました。3月の自殺者数は1925人(対前年同月167人の増、対前月283人の増)でうち男1270人(対前年同月20人の増)うち女655人(対前年同月147人の増)となっています。 厚生労働省が直近5年の状況をまとめているので引用します。 例年3月は自殺が増える傾向にあり、直近5ヶ年の3月との比較では3番目の高さになっています。男女別に見ると男性は直近の傾向と大きな違いはないと思われ、またしても女性の

          気になる統計 月別自殺者数(2021年3月速報)

          気になる統計 新型コロナウイルスの流行による少子化への影響

          たびたび拙稿で紹介させていただいている財務総合政策研究所「人口動態と経済・社会の変化に関する研究会」の第4回が3月23日に開催されていたようです。 資料のみが掲載されて議論の内容は分からないのですが「新型コロナウイルスの流行による少子化への影響」という報告の中の妊娠届出数と出生数を並べたグラフが興味深いので引用します。 少子化が進んでいるので毎年だんだん減っていくのは仕方ないことですが2020年の妊娠届出数の推移をみると5月から例年の傾向を大きく逸脱して減少していることが

          気になる統計 新型コロナウイルスの流行による少子化への影響

          気になる統計 2020年賃金構造基本統計調査

          2021年3月31日に厚生労働省から2020年賃金構造基本統計調査の結果が公表されました。一般労働者の賃金は、男女計307.7 千円、男性338.8 千円、女性251.9 千円で男女間賃金格差(男=100)は74.4 となっています。 前年と比べると男性、女性それぞれの賃金がわずかに上昇しているのに全体の賃金に変化はないようです。若干妙な気がしますが2020年から推計方法が変更されたらしく単純に連続させることはできないようです。男女間格差は前年の74.3から0.1ポイント改

          気になる統計 2020年賃金構造基本統計調査

          気になる統計 令和3年地価公示

          2021年3月23日に国土交通省が令和3年地価公示を公表しました。同省ウェブサイトに詳細なデータが掲載されるとともに調査結果の概要をまとめた資料が掲載されています。本年の公示地価の全国平均は6年ぶりに下落に転じ、用途別にみると住宅地は5年ぶり、商業地は7年ぶりの下落となりました。 都道府県別にみると住宅地の地価が上昇している都道府県数は前年の20から8に減少、商業地の地価が上昇している都道府県数は前年の24から7に減少しました。住宅地、商業地ともに上昇しているのは北海道、宮

          気になる統計 令和3年地価公示