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とぶ理由

「とぶ」というのは、空だけのことではなく
「誰にも告げずいなくなる」という意味もある。
(男はつらいよのフウテンの寅次郎のように
かえるところがある人がいなくなることは
「とぶ」とは言わない・・・)

職場からとぶ
家族からとぶ

とぶ理由はさまざま。
鳥がそうであるように、とんだとしても
どこかで一度、休める場所を探すことになる。

「仲間に会うなっていうのはさ
俺にとっては、心臓なしで生きていけって言われているようなもんなんだ」

けれども、大抵の場合、その止まり木は
「禁断の木」と言われる場合が多いので
そこに居ることを、
多くの支援者と言われる周囲の人たちや世間は許さない。

だから、また とぶ。
とぶごとに心がすさんでいく。
こころの傷口をふさぐために
仲間がほしくなる。
けれど、そういう「仲間」や「安らぎ」は
まぼろしや幻想で終わることが多い。

本来、人間は「とぶ」生き物ではないので
「とび続ける」ことはできず
いずれは、大地に足を2本ついて
生きていく方が、性にあっている、
安心できると感じるようになる。

しかし、その場所が見つかるまでが至難の業だ。

運よく安心できる場所を見つけて
自分が居たいと望んでも
倒産・身近な人の死などで
無くなってしまうこともある。

とんだことのない人には
とぶ理由がわからない。

すべてがイヤになってしまったからか?
本人の無責任さなのか?

そうではない。

「周りの人を傷つけたくないから」
「寝坊して欠勤してしまったんだけど、どう誤っていいかわからなかった」
「こんな自分なのに、過大評価されて困った・・・どう断ればいいかわからなかった
(計算もできない自分が、責任のある仕事を任されてしまった)」
「みんなの期待が重荷になった」

以外と多いのは
・他人との争いを避けたい
・周りの人とどうコミュニケーションしたらいいか分からくなった。
・NOとうまく伝えられない

という3つである。

「ちがうんだよ!そうじゃない!」と
自分の気持ちを相手に伝えることができないのは
自分が相手より、弱い立場、支援される側にある場合が多い。

「言っても分からない人に、何度も説明していたらキレそうになる。
ちゃんと説明してくれないとわからないとか
何で言ってくれなかったのって言われてもさ・・・
ちゃんと言葉で伝えることができていたら、してるよ」

どう説明したらわかってもらえるのかが、分からないってこと?

「そう、だって最初から相手が、俺のことを
”こうするべき” とか "こう思っているはず” とか
決めてかかっているわけだからさ
俺が、それ以外のことを言うと
相手が、”なんで???” ってなって
なんで?なのかを説明しだすと
今度は ”そんなのありえない!” って
最初の ”こうあるべき、こう思っているはず” ってところに
逆戻りするんだよね」

なるほど・・・

「施しとか憐みはいらねぇ。一緒に飯食って、何もしなくても気ぃ使わなくていい場所でゆっくり寝たい。」
「支援じゃないんです。僕に必要なのは教育なんです。生きている知恵というか、新しい学びなんです。」
「ひとりで、ずっといたら、さみしくなった。誰かがいるのに誰とも話ができないってことが一番つらいんだ。」

どう表現すれば、
「とんだ」経験のない人たちに
とぶ気持ちを想像してもらえるのか・・・

とびたくてとんでいるわけではない。
やむをえず、とんでいるんだ・・・

空を飛ぶことにあこがれ、
飛行機を発明した人類なんだから
とぶ人の気持ちも、きっと想像できると思うんだけどなぁ・・・