「人当たりがいい」の先へ進みたい
私は人当たりがいい。
自分で言うのはおかしいんだけど、いろんなコミュニティでそういう評価を受けるので、客観的に見てそうなんだろう。
たしかに私は、ポジティブな言葉を選んで相槌を打ったり、質問で相手の話を膨らませるのが平均よりできるほうだと思う。
学生時代のバイトから数えて7年間子供と接する仕事をしていたので、相手に不安を与えないコミュニケーションはある程度得意だ。
この「人当たりのよさ」は間違いなく私の長所ではあるのだけど、一方で自分の中では悩みのタネでもある。
「なんかいい感じに」「無難に」人と話せる。
この状態からもう一歩先に進みたいのだ。
いつも人とのコミュニケーションが「失敗しない」で終わってしまって、ほんとうに思っていることがうまく伝えられない。そんな自分にずーっとモヤモヤしている。
たとえば、少し前に会社の同僚と雑談していた時のこと。
「仕事の得意・不得意」について話す途中で、彼女がこう口にした。
「その場で臨機応変に動くこともできないし、かといって計画力もないし……要するに私って仕事ができないんだよなわはははは」
「そんなことないよ」
反射的に返した。大声で笑う彼女の眼の奥に、どこか自嘲的な影が潜んでいる気がしたから。
「そんなことない。この前のイベントの資料とかめっちゃよかったし……」
具体例を挙げて返すと、「まあ、あれはラッキーで~」と一度は乗ってくれた。
けれど最終的には「結局、自信を持てる部分が何もないんだよね」と自虐がぶり返し、次の打ち合わせが始まったため会話はそこで終わってしまった。
たわいもない雑談。相手は会話の内容すら覚えていないかもだけれど、私はその日帰宅してからも無力感で唇をかみしめていた。
お世辞じゃないのに。ほんとに尊敬してるのに。
気持ちが伝わった感触がみじんもない。
実際、彼女は「仕事ができない」人間では全くない。コミュニケーションスキルが高く社内外の折衝に不可欠な存在だし、PCスキルも高くて資料作りが速くてうまい。
そんなシゴデキウーマンが不当に自信を失っているのが悲しくて、私はどうにか彼女に「あなたはすごい」と伝えたかった。
けれど、届かないのだ。
「人当たりのいい」人間の言葉なんて。
相手をちょっと気持ちよくさせる無難な言葉がすぐに思い浮かぶ。「こう返せば波風が立たない」がそれなりにわかる。
でも、だからこそ、芯まで届く言葉を届けることが苦手だ。
そうするつもりがなくても、「取り繕ったような言葉」が出力されてしまう。なんかいい感じにその場を収めることができてしまう。
周りから褒めてもらえる「人当たりのよさ」を少し失ってもいいから、まっすぐ心に届く言葉を紡げる人になりたい。
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