ミドルエイジ
本も映画もハッピーエンドが好きだ。ハッピーエンドににたどり着くまでがつらすぎるものも耐えられない。コメディが安心。
艷やかなシーンは苦手だ。
北杜夫が著作のなかで、世間には艷やかなシーンが溢れているから自分は書かない、ということを言っていてのそうだ!まったくその通り!と膝を叩く思いがした。
艷やかシーンが評価されたり、艷やかシーンを演じた女優が一皮向けたと評価されたりするのがとても不思議だ。ものすごく恥ずかしくて居たたまれなくなってしまう時間をやり過ごすことになるが、映画や小説の分野の専門家のような大人にはどのように見えているのだろう、と思っていた。
結局そのまま見る目のない大人になってしまった今も艷やかなシーンはやっぱりとても恥ずかしい。そんな雰囲気になったらささっとブラックアウトだかフェードアウトして、すぐに次の朝を迎えて鳥がさわやかにさえずってるくらい、くるみにくるんでもらえるとありがたい。
音楽もラブソングは、こんなドラマのような人生を生きている人がいるのか…!と経験が追いつかないままに中高年。
ヤバイTシャツ屋さんの「王道ラブソングに歯向かう」「理屈っぽいぐらいなら安っぽいがいい」(大分略)を聞いたとき北杜夫以来の膝を叩く思いがした。
北杜夫はでも、『夜と霧の隅で』ではマイルールを破ってしまったと言っていた気がするけれど。
そのくせ少女マンガは大好きだ…。岩本ナオに河原和音が大好きだ。
なのに恋愛ドラマは苦手という。
あるなしクイズはともかく、艷やかなシーンはやっぱり必要なのだろうか。嗜むにはやっぱり恋愛経験が足りないのか。シミやらシワやらは増えていく一方だというのに、度胸も度量も精神の深さも至らぬミドルエイジ。人生の醍醐味を逃してるのかしらん。