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クラシックテレマークとモダンテレマーク

現在私たちが目にするテレマークターンは、一度世の中から消えたテレマークとは滑り方が違うものです。場合によっては前者を「モダンテレマーク」、後者を「クラシックテレマーク」と分けて呼ぶこともあります。

「クラシックテレマーク」は19世紀後半ノルウェーのテレマーク地方で生まれた回転技術です。スキーの回転技術の元祖とも言えます。同時期に「クリスチャニア」も生まれたわけですが、こちらはヨーロッパアルプスに伝わり一層の発展を遂げて今日のアルペンターンに至ります。

しばらくの間これら二つの回転技術は平行しておこなわれるのですが、いつしか「クラシックテレマーク」は記憶の片隅に忘れ去られてしまうことになります。第二次大戦後はまだ教えられていたようで、私がテレマークを始めた頃、北海道の年配の方々に「私もやったことがあるよ」とか、「なんで今頃そんな古いスキーしてるんだ?」などと声をかけられたことがあります。

なぜ教えられなくなったのかは分かりませんが、ヒントは私が見た戦前の技術書に書いてあった「テレマーク転倒」という言葉ではないかと考えています。「テレマーク転倒」とは皆さんも一度は経験していることですが、前脚に乗りすぎて後ろスキーを引っかけたり、前スキーの外エッヂを引っかけてターン外側へ飛ばされるように転ぶことを意味します。技術論が悪かったのか、道具としてのスキーそのものの性能が悪かったのかその原因は分かりませんが、スピードを出しても安定感の高いアルペンに比べ、いつまでも越えられない壁をもったテレマークでは自ずと消えてゆくことも理解できると思います。

時は過ぎ1970年代のアメリカでテレマークは「モダンテレマーク」として生まれ変わります。初めの頃はクロスカントリースキーを使っていたことやまだまだアルペンターンで滑ることもあったためか、「テレマークスキー」と呼ばれる以外に「クロスカントリーダウンヒル(XCD)」とか「ノルパイン(ノルディックとアルパインの造語)」、「アルノデスキー(アルペンとノルディックの造語)」などと呼ばれることもありました。

では、なぜアメリカでテレマークが再興することになったのでしょうか?1950年代から始まった「ビートニック」やその後の「ヒッピー文化」に影響された人々が、大量消費文化の一つであるスキー場から離れ、クロスカントリースキーを使いバックカントリーへその遊び場を求め始めたことが一つの要因であると私は考えています。その波に「モダンテレマーク」はうまく乗ったのですね。かく言う私も、志は違いますがクロスカントリースキーで野山を遊ぶことからテレマークを始めた一人です。

クロスカントリーの用具から始まった「モダンテレマーク」も月日の流れとともに専用の用具ができ、新しい技術論もできました。「細板」から「太板」へ、「革靴」から「プラブーツ」へと用具は変化しアルペンに追いつくほどに滑られるテレマーカーも出てきましたが、「心にあるもの」はあの時と同じであり続けたいと思う今日この頃です。

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