テレマークスキー用具について:ブーツ編
クロスカントリースキー用のブーツでもテレマークターンは出来ますが、ここではより滑走性を求めたテレマーク用に売られているブーツについて書いてみます。
革靴
革靴の良さは、
なんと言ってもその軽さからくる軽快感でしょう。また、靴底に自然なしなりがあるので、スキーを履いてもそのままで歩いても違和感のない歩行ができます。東京の自宅からブーツを履いて飛行機に乗り、北海道で滑りを楽しまれそのまま帰られた方もいらっしゃいます。
技術的なことで言えば、後ろ脚=内脚の足首を曲げたり捻ったりという運動がしやすいので、テレマーク独特の後ろ脚=内脚の使い方を覚えるのには向いています。
滑りに関しては、余程の急斜面や高速で滑ることを除けば、すべて練習次第と言えます。その昔は革靴でもカチカチのバーンの上でレースをしていたわけですし、深雪だって問題なく滑っていました。ただし、極端なカービングスキーやファットスキーを履くときにはプラブーツにしたほうが良いと思います。それは、それらのスキーがより大きな力を雪面から受けるため、現行で手に入る革靴ではその力を受け止めきれないからです。革靴でも滑りに向いたものは足首周りにプラスティックの補強が内蔵されています。そのことにより足首周りの剛性感は出るのですが、テレマーク・ポジションでは拇指球を含めた足指の付け根部分でブーツが曲がることを求められるためその部分にはプラスティックの補強が入っておらず、大きな力を受け続けると革靴に捻れの力が強くかかり、雪面からの大きな力に負けうまくスキーを操作することが出来ません。また、このことを繰り返していると、革靴がへたってしまうのを加速することにもなります。
革靴の弱点は、
防水性が悪い。革そのものの防水性は各種のオイルやフルカバーのゲーター=スパッツでどうにかなりますが、革のアッパーと靴底をつなぐための縫い目からどうしても水が進入してきます。とくに春山ツアーでは対策が必要です。一番の解決方法は、靴が濡れることには目をつぶって、足を濡らさないためにゴアテックスやその他の素材でできたオーバーソックスをソックスとブーツの間に履くことです。私も、縫い目のための各種目止め材なども使ってみました。初めは効果がありますが、何度か滑るうちにその効果も無くなってしまいます。
プラブーツに比べ保温性が良くありません。真冬に初めてプラブーツを履いた時の暖かかったこと。今でも忘れられない記憶です。革靴の上にカバー=ゲーターをすると幾分保温性が上がりますがプラブーツのインナーにはかないませんね。
しっかりと足にフィットするよう靴紐を結ぶのが難しい。とくに指の力の弱い方は、折角滑り向きの革靴を手に入れても、しっかりと靴紐を締め上げられなくてはその性能も半減してしまいます。
革靴の手入れワンポイント
使ったあとは中敷き=インソールを抜いて乾かすことを忘れないで下さい。簡単にカビが中底に生えてしまいます。乾いたら靴紐をしっかり締め、次の出番までそのまま保管します。このようにすることで補強のプラスティックに締まった形の癖がつき、靴紐の締め上げの少しは手助けになります。
時々保革油を塗りましょう。防水性が高く、革を柔らかくすることがないものを塗って下さい。蜜蝋=ビーワックスが入った保革油がおすすめです。また、メーカーによっては専用の保革油を販売していることもありますのでショップで尋ねてみて下さいね。
時々塗ると言ってもそれほど頻繁に塗る必要はなく、靴全体を覆うようなフルカバーのゲーターを付けている場合はシーズンの初め、または途中で1回塗るぐらいで、後は春先など靴がすっかり濡れてしまった場合はその都度塗って、使い終わって保管するときにもう一度塗ります。
靴全体が濡れたり乾いたりを繰り返すとハーフサイズぐらい靴が縮んでしまうので、購入の際にはつま先に余裕のあるサイズのものを購入しましょう。ちなみに私は、スニーカーが26cm、プラブーツがUS7で革靴がUS8のものを使用しています。
プラブーツ
プラブーツの良さは、
革靴に比べ、ブーツ全体の剛性が強いため、スキーヤーの動きや加えた力がしっかりとスキーに伝わります。
プラブーツが世に出だした頃は靴紐で締め上げるタイプのものもありましたが、現在は金属やプラスティックで出来たバックルで締めるものだけになりました。これにより、指の力の弱い方でもブーツをしっかりと締め上げられ、そのブーツの性能を十分に使うことが出来るようになりました。
現在販売されているプラブーツのインナーは、「サーモインナー」と呼ばれる、暖めることでスキーヤーそれぞれの足の形にフィットさせることが出来るものがほとんどです。革靴も使えば使うほど自分の足に馴染んでは来るのですが、このサーモインナーの効果にはおよびません。このフィットするインナーのおかげで革靴の頃のような足の痛みを訴える方が少なくなりましたし、靴擦れ=マメが出来にくくなったと感じています。私自身も革靴の頃はカカト周辺に靴擦れをつくってしまうことが度々あり、ツアーに出かける時にはいつも靴擦れ防止パッドやダクトテープをカカトに貼って予防していました。プラブーツを履くようになってからはほとんど靴擦れすることがありません。ただし、プラブーツの保温性の良さから春先は足が蒸れやすいので、靴擦れが出来やすい方は予防策をとっておいた方が良いですね。
革靴とは違い縫い目がないので、外部から水が浸透してくることがありません。また、インナーブーツが保温効果の高い材質で出来ているので、革靴に比べ保温性が良いところも良いですね。それと、保革油などを塗る必要がないので手入れが簡単だというメリットもあります。
プラブーツの弱点は、
プラブーツは「skiモード」と「walkモード」を切り換えられるようになっています。歩行や登行の時にはwalkモードにするわけですが、革靴のようなブーツの底の自然なしなりがないので、革靴に比べると少しぎこちない感じになります。とくに春ツアーでの登山道や林道歩きなど、雪上以外での歩行ではその差が歴然です。
技術的なことで言えば、後ろ足がつま先立ちになりやすいので基本的な後ろ足の使い方を覚えづらいようです。
skiモードでは足首の前後方向への動きが制限=ほぼ固定されてしまいます。この為、足首を使うイメージが出来上がっていないとテレマークポジションを取ろうと後ろ脚=内脚の膝を曲げると、足首を曲げる運動が伴わないのでカカトが上がり過ぎ、つま先立ちになりやすくなります。それでもブーツの剛性が高いのでどうにかスキーを操作することが出来てしまい、結果なかなか足首の使い方を覚えられないことになってしまうことも少なくありません。
プラスチックなのでいつの日か分解バラバラになってしまうと言われていますが、今のところ、ブーツ全体が崩壊してしまったという話は聞いたことがありません。それよりは、使い込むうちに蛇腹=つま先の曲がる部分に亀裂が入ったり、崩壊し穴が空いてしまったと言う事例は実際に見ています。蛇腹の山折りと谷折りの部分が白く変色していたら要注意です。滑るにせよ歩くにせよ、一日に何百回何千回とストレスのかかる部分ですから、日頃から状態を確認する習慣をつけましょう!
プラブーツの手入れワンポイント
防水性がよいからと言ってそのままにしておいてはいけません。できれば毎回、少なくとも2~3回使ったらインナーを取り出して乾かしましょう。思いのほか、シェルとインナーの間に水が溜まっています。そのままにしておいては保温性が悪くなるばかりかカビてしまうこともあります。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?