トーン&ボリュームコントロールの試作(その3): D級アンプを追加してスピーカーを鳴らす
三菱のM62421を使ったトーン&ボリュームコントローラーの続きです。
パワーアンプを追加してスピーカーを駆動できるようにしました。また、ラズパイなどから電源を取って使えるように、+5V電源で動くようにしました。
使用部品
パワーアンプには秋月電子のPAM8012使用2ワットD級アンプモジュールを使いました。このアンプの電源は5Vですが、これまで作ってきたトーン&ボリュームコントロール用のM62421は9V電源のための、5Vから昇圧するために同じく秋月電子のISL97519A使用可変昇圧電源キットを利用しました。
基本的には、昇圧電源キットの出力を9Vが出力するように調整して、D級アンプモジュールの入力にこれまでに作ったM62421の出力をつなげれば良いだけです。
改造
PAM8012使用2ワットD級アンプモジュールでは入力のカップリングコンデンサ(Cin)に0.1uFが実装されているため、周波数特性はデータシートによると下記のような感じになります。自分で実測してみてもほぼ同じ特性でした。
低域の特性を改善するため、基板の0.1uFのコンデンサーを取り外して、外付けでコンデンサ(今回は1uFの積層セラミックコンデンサを使用)を取り付けてみました。
D級アンプモジュールは下記の写真のようにコンデンサを取り外します。小手先が細めのハンダコテをコンデンサに当てて、新しいはんだを少し溶かしてあげれば、コンデンサが浮き上がってきて簡単に取り外せると思います。
外した端子間を細いワイヤでショートするようにはんだ付けすれOKです。
回路
全体の回路図は下記のようになります。回路図では+5V系と+9V系のグランドを区別して書いてありますが、実際には共通となります。
ATMEGA328-MINIの電源は+5V端子からの供給にしたので、プログラムの書き込みでUSBポート(シリアル端子)をつなぐ場合には、この+5V端子からの供給線は抜いた方が良いでしょう。
ブレッドボードの配線はこんな感じとなりました。
ISL97519A使用可変昇圧電源キットは基板上にスイッチを取り付けるようになっていますが、必要無いので取り付けていません。
特性
スピーカー端子に8.2Ωの抵抗を取り付けて入出力の電圧特性を測定した結果です。
約1Vp-pの入力まではリニアに出力され、それ以上では約3Vrmsの出力で頭打ちになります。なので、3x3/8.2≒1Wの最大出力と仕様通りとなっています(2Wというのは4Ω負荷の場合です)。
ゲインに換算すると下記のようになり約18dB(≒8倍)と仕様通りです。
周波数特性です。入力を0.3mVp-pとした場合です。
モジュールのオリジナルでは200Hz以下で落ちていた部分が、コンデンサ(Cin)を交換することで20Hz以下くらいになりました。ほぼデータシートの特性と同じ感じです。
なお、測定にはデジタルマルチメーターを用いたので、高域側の特性はアンプの特性とデジタルマルチメータの特性が混ざっているので参考程度にしてください。
試聴
ラズパイ5に取り付けているIQaudioのオーディオボードPi-DAC+の出力をこの試作機につないで動かしてみました。電源もラズパイのGPIO端子の+5V出力から取っています。
1個300円のアンプですが、狭い部屋で普通に聴くには十分な音量と音質です。思いのほか良い音です。最近(でもないのかもしれないけど)のD級アンプはすごい。
入力のコンデンサを交換する改造が必要だったかどうかは、はっきり言ってよく分かりません。改造してもしなくても自分レベルの耳では聴感上はあまり変わらないような気がします。接続するスピーカーにもよると思いますけど。
録音レベルの低い部分を音量を上げて聴きたい場合にはゲイン不足を感じる場合もありますが、それは入力部分のレベル上げが足りないせいだと思われます。M62421のボリュームコントロールはゲインを上げる回路は無く、減衰動作のみなので、プリアンプとして入力信号のゲインを上げる回路が必要なのかもしれません。