ラズパイ5:我が家で一番速いパソコン?
インターフェース(CQ出版)の5月号「ラズベリー・パイ5 大研究」を読んでいたら、ラズパイ5はずいぶん性能が良くなったようで、にわかに自分でもどのくらい速くなったのか知りたくなり、特に使い道も考えずに購入してみました。
ラズパイ5は速度が上がっただけでなく下記のような点も新しいです。
PCIe(PCI Express)のインタフェースを搭載した(色々なカードの起動も報告されているようです)
PCIeに接続したSSDからも起動できるようになった
RTC(Real Time Clock)が搭載された
電源スイッチが搭載された
一方、5V/5Aの電源が要求されたり、CPUの放熱がほぼ必須というようなマイナス面もあります。
何にしても、かなりデスクトップPCに近いものになってきたということなので、すでに色々と報告されていますが、自分でもインストールして、ベンチマークテストを行ってみました。
1.インストール
1.1 Raspberry Pi ImagerによるSDカードへの書き込み
WidowsパソコンでRaspberry Pi ImagerをインストールしてSDカードに書き込みます。
下記のように、デバイス、OS、書き込むSDカードを選択します。
ホスト名、ユーザ名とパスワードなどを設定して、書き込みを実行すると、指定したOSを自動でダウンロードしてSDカードに書き込みをしてくれます。
後は、ラズパイにSDカードを差し込んで、起動すればOKです。
1.2 日本語キーボード設定
日本語の設定は自分で設定する必要があります。
メニューのの「Preferences」ー「Raspberry Pi Configuration」を起動します。
「Localisation」タブの「Locale」を下記のように設定します。
「Keyboard」を下記のように設定します。
1.3 日本語入力環境
日本語入力も自前でインストールする必要があります。下記を実行すれば、「半角/全角」キーか「ctrl + スペース」で、英語と日本語の入力切り替えができるようになります。
$ sudo apt install fcitx-mozc
1.4 Xfceデスクトップ環境
私はXfecのデスクトップが好きなので変更しました。インストール方法はこちらをご覧ください。
1.5 PCIe接続のNVMe SSD
ラズパイ5で新たに追加されたPCI ExpressにNVMeSSDを接続しました。インストール方法はこちらをご覧ください。
2.ベンチマークテスト
ラズパイ5がどのくらいの性能なのかを我が家のパソコン(デスクトップとノート)と、手持ちのラズパイとで比較してみました。我が家のパソコン(デスクトップとノート)は2018年頃から6年以上使い続けているもので、それなりに古いです。
2.1 テスト環境
Raspberry Pi 5 Model B Rev 1.0
Broadcom BCM2712, Cortex-A76 64-bit @ 2.4GHz
8GB Memory
SD Card: HIDISC SDHC class10 32GB
SSD: Silicon Power M.2 NVMe 128GB (pciex1_gen3)
5V/3A ACアダプター電源
Debian GNU/Linux 12 (bookworm) 64bit
Raspberry Pi 3 Model B Plus Rev 1.3
Broadcom BCM2837B0, Cortex-A53 64-bit @ 1.4GHz
1GB Memory
Raspbian GNU/Linux 11 (bullseye) 32bit
Raspberry Pi 3 Model A Plus Rev 1.0
Broadcom BCM2837B0, Cortex-A53 64-bit @ 1.4GHz
512MB Memory
Debian GNU/Linux 11 (bullseye) 64bit
HP WS(2018)
HP Z2 Mini G3 Workstation
Intel Xeon E3-1225 v5 @ 3.30GHz
16GB Memory
SSD: SanDisk Ultra M.2 NVMe 500GB
openSUSE Tumbleweed
FUJITSU NOTE(2018)
富士通 LIFEBOOK WU2/B3
Intel Core i7-8550U @ 1.80GHz
20GB Memory
Windows 11, WSL2(openSUSE Tumbleweed)
2.2 UnixBench
主にCPUやOSの性能の指標となるUnixBenchを実行した結果です。
UnixBenchのテスト項目に関しては下記のページなどを参考にしてください。
トータルでの結果です。
値が大きいほど結果が良いことを表しています。
シングルプロセス、マルチプロセスは、測定時に1プロセスで行ったか、並列に複数(コア数)のプロセスを動作させたかの違いです。
マルチプロセスではデスクトップのHP WS(2018)と少し差が縮まりますが、どちらにせよ、raspi5Bは我が家のPCの中では一番性能が良いという結果となりました。
raspi3B+とraspi3A+は同じCPUですが、差が出たのは、搭載メモリの容量の違いやOSの違い(32bitと64bitやバージョン)によると思われます。
以上の結果は複数のテストのトータルの得点(指標)です。個々のテストの結果を以下に示します。
整数演算テスト(Dhrystone2)や、File Copy 4096bufsizeなどはWS HP(2017)の方が性能が良いです。それ以外は、同等かraspi5Bの方が性能が良いという感じです。特にFile Copy 256bufsize, Pipe Throughput, System CallなどはWS HP(2018)に比べてかなり良い結果となりました。
ラズパイ3同士だけを比較すると、raspi3B+とraspi3A+は総じて同等かraspi3B+の方が性能が高いです。ただ、整数演算テスト(Dhrystone2)だけはraspi3A+の方が性能が高いです。32bitと64bitのOSの違いでしょうか?
次に2Dのグラフィックスの性能比較です。UnixBenchにはグラフィックスのベンチマークもあるのでその結果です。FUJITSU NOTE(2018) はWindowsのWSL2環境のためグラフィックスのテストは面倒なため除いてあります。
結果です。
ラズパイの性能はHP WS(2018)に比較してかなり悪いです。
HP WS(2018)を除いて、ラズパイだけの比較をすると、raspi3B+に比較すると、raspi5Bは2倍程度の性能向上をしているようです。
各テスト項目毎の結果です。Images and bulitsの性能差がかなり大きいです。但し、Text描画の性能はHP WS(2018)と同等で、raspi3A+/B+より大幅に性能が向上しています。
2.3 ディスクアクセス(dd)
ディスクのアクセス速度を測定してみました。
10GBのファイルをddを使ってリード、ライトすることでシーケンシャルなデータの読み書きをしました。ブロックサイズ(読み書きの単位)は4KBと1MBとしました。
ファイルシステムはどちらもext4です。
Write test
$ dd if=/dev/zero of=tmpfile bs=4K count=2621440 conv=fsync
$ dd if=/dev/zero of=tmpfile bs=1M count=10240 conv=fsync
Read test
$ dd of=/dev/null if=tmpfile2 bs=4K count=2621440
$ dd if=tmpfile of=/dev/zero bs=1M count=10240
結果です。
ラズパイ5のSDカードは読み書き速度はかなり遅いです。
一方で、PCIeのSSDはかなり速いです。インタターフェース誌の記事では、810MB/s(Write)、866MB/s(Read)の速度が出ているようですが、同程度の速度が出ています。書き込み速度では、HP WS(2018)を超えていました。
2.4 Pi Benchmarks
Pi Benchmarksというサイトで使われているベンチマークプログラムを実行してみました。このプログラム(Storage.sh)では、hdparm, dd, fio, iozoneなどのコマンドを使って測定してトータルのスコアを求めているようです。
$ sudo curl https://raw.githubusercontent.com/TheRemote/PiBenchmarks/master/Storage.sh | sudo bash
結果です。
raspi5B SD card
Category Test Result
HDParm Disk Read 81.94 MB/sec
HDParm Cached Disk Read 78.44 MB/sec
DD Disk Write 25.3 MB/s
FIO 4k random read 2380 IOPS (9523 KB/s)
FIO 4k random write 451 IOPS (1807 KB/s)
IOZone 4k read 11238 KB/s
IOZone 4k write 2180 KB/s
IOZone 4k random read 8007 KB/s
IOZone 4k random write 1346 KB/s
Score: 988
raspi5B SSD
Category Test Result
HDParm Disk Read 799.92 MB/sec
HDParm Cached Disk Read 740.67 MB/sec
DD Disk Write 464 MB/s
FIO 4k random read 202772 IOPS (811089 KB/s)
FIO 4k random write 91838 IOPS (367354 KB/s)
IOZone 4k read 197162 KB/s
IOZone 4k write 190864 KB/s
IOZone 4k random read 67053 KB/s
IOZone 4k random write 212505 KB/s
Score: 49858
HP WS(2018) SSD
Category Test Result
HDParm Disk Read 1580.42 MB/sec
HDParm Cached Disk Read 1364.66 MB/sec
DD Disk Write 582 MB/s
FIO 4k random read 126419 IOPS (505679 KB/s)
FIO 4k random write 85690 IOPS (342761 KB/s)
IOZone 4k read 245940 KB/s
IOZone 4k write 258944 KB/s
IOZone 4k random read 56356 KB/s
IOZone 4k random write 310051 KB/s
Score: 57893
ラズパイ5のSSDはSDカードに比べて格段に速くなっています。HP WS(2018)のSSDに比べると全体的にはやや落ちますが、4K random readではラズパイ5の方が速い結果になっています。
2.5 コンパイル時間
ソースコードをコンパイルする時間の比較をしてみました。
対象としてはOpenCVとFFmpegのソースコードのビルド時間を測定してみました。
makeのジョブ数(並列度)は1と4としました。
$ time make
$ time make -j 4
結果です。
raspi5BとHP WS(2018)のコンフィグの条件はなるべく同じになるようにしましたが、色々とずれていると思いますので、この結果は参考程度にしてください。
自分は普段利用では、コンパイルしたりが多いのですが、まだまだHP WS(2018)を使った方が2倍くらい速いようです。特に、HP WS(2018)ではジョブ数(並列数)を4倍にすると処理時間も1/4程度になりますが、ラズパイ5では1/3程度にしかならなく、並列処理のパフォーマンスに違いがあるようです。
また、ラズパイ5はソースコードをSDカードに置いてもPCIe接続のSSDに置いてもほとんど変わりませんでした。コンパイルのような処理では、ファイルの読み書きの速度差は影響がないようです。
SSDをブートドライブにしてSDカードを無くした環境でも測定しましたが、速度はほぼ同じでした。
3. まとめ
ということで、ラズパイ5は演算性能的ベンチマーク(UnixBench)では我が家で一番速いマシンとなりました。また、PCIe接続のSSDはかなりの速度が得られているようです。ただ、全体的にはまだ速度が遅い部分(描画とか並列処理とか整数演算とかとか)があって、それが足を引っ張っている感じです。
体感的にもそんな感じかなと思います。
また、ラズパイ5は5V/5Aの電源を要求していますが、現状、入手できるACアダプターは3Aというのも問題かもしれません。今回は3Aの電源アダプターを使ったので、それが影響している可能性もあるかもしれません。
それにしても、2万円弱(SSDを使う場合には+1万円)でこの性能のパソコンが手に入るというのは、子供の頃にパソコン(マイコン)が数十万円もする時代の自分からすると、夢のような環境に思えます。
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