矢野徹「ウィザードリィ日記」ほか:パソコン黎明期を記した体験記
ファイナルファンタジーをⅠから始めていて、パソコン黎明期のことを思い出し、本箱から矢野徹の「ウィザードリィ日記」を取り出して、30年ぶりくらいに読み返してみました。
「ウィザードリィ日記」は、SF作家で翻訳家の矢野徹がウィザードリィにはまった1986年5月から1887年6月までの日記。ウィザードリィの話が3分の1、ウィザードリィにかかわる妄想が3分の1、普段の様子(パソコン以外も含む)が3分の1という感じの内容です。
ハードとしては、富士通のワープロオアシス100F2、NECのPC-8801MK2MR、PC-9801VM2など、ソフトとしては、サムシンググッドの即戦力MR、アスキーのTHE WORDのことが多いが、それ以外も多くのソフトの話が出てきます。
当時63歳だったようですが、ウィザードリィを最後まで終わらすというだけでなく、CP/M、MS-DOS、さまざまなアプリケーションソフトを利用するなど、パソコンという新しいものにチャレンジする旺盛な好奇心と行動力は大したものです。
日常生活を記した部分には、SF関係の著名人の名前もちらほら出てきて楽しい。また、当時のさまざまなソフトやハード、当時の販売店の批評なども楽しい。
ちなみに、私はウィザードリィは少しやりましたが、あまりにモンスターが強すぎて、すぐに全滅してしまうため地下1Fで諦めてしまいました(「ウィザードリィ日記」にちょろっと出てくる「ザ・ブラックオニキス」は最後まで行ったなあ)。
その後、J-3100SXを使うようになり、IBM-PC版のTRILOGYを購入し再チャレンジしようとしましたが、全く進みませんでした(英語がよう分からんかった)。今では3.5インチのフロッピーディスクは読み取れなくなってしまいましたが、パッケージは捨てずに残っていて、本棚の飾りになっています。
話がそれてしまいましたが、当時のことを色々調査して書物としたノンフェクションも面白いですが、「ウィザードリィ日記」のような個人の体験を記したものの方が読んでいて面白く感じます。
パソコン関係で個人の体験を綴ったものとしては、西和彦の「反省記」、クーロン黒沢の「マイコン少年さわやか漂流記」も好きです。
「反省記」は、西和彦の半世紀にわたる波乱万丈の自伝書。パソコンの黎明期(マイコンからパソコンへ変わるころ)からの筆者の体験が興味深く書かれています。行動力や実行力がすごいです。
西和彦のことはアスキーの創業者でマイクロソフトと関係していて、MSXの統一規格を作った人という程度は知っていましたが、当時の各メーカーの様々なパソコンのコンサルティング(NECのPC-XX、沖電気のif-800、エプソンのHC-20などなど)や、半導体などまで企画・開発していたとは知りませんでした。
マイクロソフトのビル・ゲイツとの関係の話も面白いですが、CSKの大川功の付き人のようなことをしていたようで、CSKがMITのメディアラボに多額の出資をしたときのことや、セガのドリームキャストのことも書かれていて面白かった。
「マイコン少年さわやか漂流記」はクーロン黒沢の、マイコンとゲームの歴史を綴ったものです。
ハードの経歴としては、NECのPC-6001(パピコン)から始まり、PC-8801、コモドールのAmigaまで。それらのハード用のアングラなゲームソフトや怪しげな販売店、コミケでのゲーム販売などなどに関する体験が綴られています。
ちょっと犯罪めいたことも書かれていますがその辺は読み流すとして、そこまでディープな体験はしていない私でも、そんな感じだったなーという点も多く、当時の雰囲気が思い出されます。
今ではメジャーな会社(エニックス、アスキー、光栄、CSK、電波新聞社・・・)が、初期にはしょうもないゲームを販売していたこともわかり面白いかと思います。
レトロゲーム、レトロパソコン、エミュレータ等に関して興味がある方は一読されると参考になる本かと思います。