パスアンドゴー。
"パスを出したら前線へ抜ける、味方が繋いだボールを受け直してシュート。立ち止まるな、パスアンドゴーだ。"
2010年12月、私はとある女子フットサルチームの門戸を叩いた。どうせやるなら強いところ、ただ強すぎないところ。そんな基準で東京都1部のチームを選ぶんだから、今思うと図太い神経をしている。
案の定、既存の選手は多くがJリーグクラブの女子チーム出身。小さい頃からボールを蹴ってきたとはいえ、遊びでしかなかった私とはまるでポテンシャルが違った。仕事の忙しさも相まって、結局2シーズンで限界を迎えた。
辞めるか否かのタイミングで、友達が指揮する男子チームを手伝うようになった。いずれ仕事が落ち着いたら、チームを変えてでも選手としてやり直すための勉強のつもりだった。ただ、気づけばそのまま6シーズンが経っていた。
正直支える側としての立場も馴染んでしまい、このままスタッフとして続ける覚悟は座り始めていた。ただ、1つだけ、どうしても足が向かない場所があった。選手時代に練習していたコートだ。
練習試合がそこであっても、「遠いから」「別件があって」などと毎回欠席を出した。強く意識しているつもりはなかったけれど、気づくと真っ先に「✕」をつけて、穴をあけた分は他の活動日に「○」をつける癖がついていた。
2018年10月、私は選手時代と同じコートへ足を踏み入れた。あの頃と同じ監督が立っていた。当時のコーチは男子チームの選手として現役を続け、ゴールに向かって何度もシュートを打っていた。
戻ってきちゃった。
あんなに避けていたはずなのに。
自分のフットサル人生を良く言うつもりはないけれど、選手を退いてからもブランクなくスタッフに就いた。プレーヤーとしてのボールは味方に預けてしまったけれど、競技に関わる人間として前へ向かって走ってきたつもりだ。
ーパスを出したら前線へ抜ける、味方が繋いだボールを受け直してシュート。
再び目の前に転がってきたボールを受け、同じコートで、今度はスタッフとしてシュートを振り抜いた。2019年12月、チームはリーグ優勝を飾った。
前へ抜けろ。
大好きなフットサルに捧げてー。