『デカメロン』読書メモ 第7日目

第6日目の話を読んで、『デカメロン』にはアンチ・キリストという隠しテーマがあるんじゃないかと思ってたら、7日目のまえがきにいきなり「悪魔大王(ルチーフェロ)と呼ばれる明けの明星」だけが空に輝いている描写があってどきりとする。
第7日目のテーマは「女たちが夫の留守にやらかした悪さの数々」。「悪さ」というのはつまりは不倫なんだけど、いままでも寝取られる話はいろいろあったけど、違うのは夫が徹底して酷い目にあうところ。嫉妬深くて妻を束縛する男もでてくるけど、そうじゃなくて何の非もない夫も出てくる。6日目の結びでこのテーマが提案されると、他の語り手たちは難色を示すんだけど、読者が抵抗を示すかもしれないというのを先回りしているんだろうか。
第1話:浮気がばれそうになるのを女房が機転をきかせる話。短い話だけど最後に別バージョンの結末が並べられている。似たような話があって1つにまとめられなかったんだろうか?

第2話:妻が浮気しているところに夫が帰ってくる。やっぱり妻が機転を利かせて難を逃れるんだけど、夫は妻には詰られるし浮気相手の男にもこき使われることになるというコキュ、寝取られ男を馬鹿にするおもしろさが主題。

第3話:名づけ子の母親を口説く僧の話だけど、話とは直接関係のない、僧侶の堕落に対する激しい批判が途中に入る。代父といえば肉親だからと母親は断るが、僧は妻と夫はもっとも近い肉親なのに一緒に寝ている、それならば夫よりは遠い関係である代父と寝ても問題ないではないかという変な論理を使って口説く。結局一緒に寝ているところにまた夫が帰ってくる。妻の機転で、僧は幼子を看病しに来たのだと誤魔化すことに成功する。

第4話:嫉妬深くて束縛する夫に対して、そんなに嫉妬するのなら本当に浮気してやろうという妻。浮気が見つかるが、逆に夫を計略にかけてひどい目に合わせる。

第5話:嫉妬が激しい夫にほとんど幽閉されている妻が夫に復讐する話。ほとんど監禁された状態でどうやって浮気するのかとか、浮気に感づいた夫が司祭に変装して証拠をつかもうとしたり。最後は夫が妻に嫉妬の激しさを説教され改心する。

第6話:この話も不倫現場を見つかりそうになって妻が機転を利かせる話だけど、相思相愛というわけではなくて、夫はとくに嫉妬深いとか欠点は語られないし、いやなやつである騎士に無理やり言い寄られた結果。しかし不倫現場を夫に見つかってしまっては自分が罪に問われるから、機転を利かして騎士を無事に逃がす。もっと長い話の一部みたいなかんじがする。

第7話:主君の妻に惚れた男が思い切って告白すると、妻はそれを受け入れて、夜になったら夫と一緒に寝ている寝室に来るようにいう。男が言われたとおりに寝室に行くと、夫が起きそうになったとたんに妻に腕をつかまれ「実はこの男に言い寄られたんです」と言い出す。騙されたのか、と男は肝を冷やすけど実は夫を騙すためだった。いきなり盛り上がるサスペンス、男に夫を殴るよう仕向けたり、寝取られ男の間抜けさというより妻のbadassっぷりが前面に出ている。

第8話:身分違いの結婚で不満のある妻が浮気をする。浮気の証拠を見つけたと思った夫は妻の母親や兄弟を連れてきて断罪しようとする。妻のほうはそれを逆手にとって、夫のほうが完全にやりこめられる。7話や8話は『ゴーン・ガール』を連想した。

第9話:ギリシャを舞台にした話。貴族である夫の部下に恋をした妻が思いをとげようとするが、部下のほうは試されているのかもしれないと疑ってOKしない。妻のいうことが本当であるか確かめるために、男が三つの難題を出し、妻がそれを見事に実行して結ばれる。『竹取物語』とか『トゥーランドット』とか女性のほうが難題を出す話はいっぱいあるみたいだけど、男女逆転してるのは珍しいんじゃないだろうか。

第10話:親友同士である2人の男、もしどちらかが先に死んだら、死後の世界はどうなっているか知らせに現れようと約束する。片方の男が名付け子の母親に惚れ思いを遂げるが、セックスのし過ぎで死んでしまう。約束通り死後の世界について教えて現れた男が、名付け子の母親と通じてしまったのはどんなに重い罪だろうと震えていたけど、実際のところはそんなことは罪でもなんでもないとわかったと語る。

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