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【NBA】愛すべきフランチャイズの裏切り者達~前編~【ケビン・デュラント】

(注釈)愚生NBA観戦歴1年程度のにわかファンなので間違い等はご愛嬌でお願いします😎 

 長いキャリアの一渡り,もしくは大半を一つのチームで過ごした選手を「フランチャイズプレイヤー」と呼ぶ。ニューヨーク・ヤンキース一筋でプレーしたデレク・ジーターや先日不慮の事故で亡くなったロサンゼルス・レイカーズのコービー・ブライアントなどがそれに該当するだろう。ひとえにフランチャイズプレイヤーといっても様々な評価を受けているであろうが共通して言えるのが「ファンから愛されている」ということだ。どんなときでもファンと苦楽を共にしたフランチャイズプレイヤーが地元に愛されない道理はないだろう。

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 近からずも遠からず,「フランチャイズプレイヤーになれなかった選手」も多数いる。チームに残りたかったが契約をもらえなかった選手や志半ばにして他球団にトレードされた選手もいるだろう。そういった選手は大抵,ファンに惜しまれつつも円満にチームを去って行くものだ。

 そして中には「フランチャイズプレイヤーになるはずだった選手」も存在する。キャリアの中盤にかかるまでは地元に愛され,ファンからは熱い声援を送られ,これからもチームを背負っていくと思われていた選手達である。ある人は勝利を欲して,ある人は巨万の富に目がくらみ,チームを去った。そういった選手は総じてこう呼ばれている。「裏切り者」と。

  今回のNoteではそんな「裏切り者」達がチームを去った経緯,そしてその後を前編・中編・後編に分けて簡単にまとめさせていただきたい。最初に断っておくが私はこういった裏切り者と蔑まれるようなスポーツ選手が大好きで堪らない。そのため冠には「愛すべき」と付けさせていただいた。ただし彼らを好きになれない読者の方々は「愛すべき」ではなく「許されざる」裏切り者達と読み替えてほしい。

愛すべき裏切り者達


Case1. Kevin Durant

 7フッター(213cm)の巨躯から精密に,残酷に繰り出されるペリメーターからのショットを見せたかと思えば次のプレイでは華麗なペネトレーションで敵陣を切り裂いてワンハンドダンク。多彩かつ堅実なスキルを併せ持つ歴代屈指のスコアリングマシーン。それがケビン・デュラントである。
 非力な身体能力からは想像も付かない類い稀なる得点力を見せつけたKDは2007年のNBAドラフトにて全体2位指名を受け,シアトル・スーパーソニックス(現オクラホマシティ・サンダー)に入団を果たす。ドラフトの瞬間からチームのエーススコアラーとなることを期待されたデュラントの脅威は凄まじく,当時のエースSGであったレイ・アレンがトレードされるなど,「KD(ケビン・デュラントの愛称)のチーム」を作る準備が始まったのだ。

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 初年度の07-08シーズンは見事期待に応え,平均20.3得点を挙げる活躍をみせて新人王獲得&オールルーキー1stチーム入りを果たす。09-10シーズンは最年少でのリーグ得点王に留まらず,チームとしてもドラフトで加入したラッセル・ウエストブルック,ジェームズ・ハーデンらと共に大躍進。3年目にしてプレーオフ進出を果たす。10-11シーズンも得点王に輝くがチームはウエスタン・カンファレンス・ファイナルにて惜しくも敗退。そして11-12シーズンには3年連続得点王に輝き,遂にファイナルに駒を進めたのである。ここで対するは前年度ダラスに屈辱を味わされたレブロン・ジェームズ率いるマイアミ・ヒート。初戦はデュラントの活躍もあり,白星を挙げたものの,優勝を渇望する「キング」の前に4連敗を喫し,涙を呑んだ。

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 けれどもデュラント,ウエストブルック,ハーデンという若手トリオを擁するサンダーが来年以降も優勝候補であることは誰の目から見ても疑いようのない事実であった。だがここでサンダーは大きな決断に出る。契約延長に成功したデュラント,ウエストブルックを裏腹に,オファーを出し渋ったことで契約延長に失敗したジェームズ・ハーデンをヒューストン・ロケッツにトレードしたのだ。後年,この3人がそれぞれ『MVP』『得点王』を受賞することを考えるとNBA史上最高のBIG3となっていたかもしれない。

 13-14シーズン,ウエストブルックを怪我で欠く中,デュラント自身はキャリア最高のシーズンを送り,見事シーズンMVPを受賞。母への感謝を語ったスピーチは全NBAファンの涙を誘った。後に起きることを考えれば,デュラントがキャリアの中で最もファンに愛されていたのはこの瞬間だったかもしれない。

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 そして15-16シーズン,優勝リング獲得への最大のチャンスが訪れる。シーズン67勝15敗のランを記録し,プレーオフでは順当にカンファレンス・ファイナルへ進出。相手は前年度の王者であり,NBA史上最高の73勝9敗を記録したゴールデンステート・ウォリアーズとの対決となった。サンダーはデュラント、ウェストブルックによる獅子奮迅のパフォーマンスにより一時は3勝1敗と王手をかけた。しかしここから歴代最高クラスのシューターであるステフィン・カリーとクレイ・トンプソンによる逆襲が始まりまさかの3連敗を喫す。一度は掴みかけたファイナル進出への切符は無残にも消え果てた。

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 「デュラントは優勝できない」「いつまでも現役№2の選手」と囁かれ続けたデュラント。この敗戦により,彼は最も困難かつ簡素な選択をするのであった。

 2016年7月4日,FAとなっていたデュラントはカンファレンス・ファイナルで自らを叩きのめしたゴールデンステート・ウォリアーズと契約を結んだのである。先述したが当時のウォリアーズには2年連続でシーズンMVPを獲得した歴代最高シューターであるステフィン・カリー,カリーにも劣らないシュート力を備えたクレイ・トンプソン,ハッスルとディフェンスでチームを支え最優秀守備選手に輝いたドレイモンド・グリーンらが既に在籍していたのだ。これには当然ウォリアーズファンを除くNBAファンの多くは理解を示せず,大きなバッシングを受けることとなる。

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 そして翌年2月11日,移籍後初めて迎えたオクラホマでの試合では「見た目は立派だが中身はスカスカ」という皮肉を込めて,デュラントを『カップケーキ』と揶揄するファンで会場が賑わった。デュラントがボールを持つ度にブーイングが繰り返されるが,非情にもシュートを落とさないのがこの男。また,怒りを覚えたのはファンだけではない。

 辛苦を共にした親友であるウエストブルックもこの移籍には激怒。時には激しいトラッシュトークで試合が中断するなどヒートアップした。

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 同年のオールスターでは同じウエストの選手であるにも関わらず,「デュラントとは一緒にいたくない」との想いからか,ウエストブルックだけ反対側のコートでシュート練習を行う光景も見られた。それだけに彼の移籍は受入れることができなかったのだろう。

 一方,シーズンではデュラントを加えた無敵のウォリアーズがリーグ1位の成績でレギュラーシーズンを終えると,プレーオフでは自身2度目のファイナルへ進出。相手は2012年に苦杯を呑まされたレブロン率いる前年王者のキャバリアーズ。ここでデュラントは平均35.2得点8.4リバウンドに5.4アシストという記録的なパフォーマンスを見せ,見事4勝1敗でキャブスを退け優勝を果たす。またNBAファイナルMVPも受賞するなど,自身にとってはレブロンを倒し,ようやくNBAファンに認められる存在となったと感じていたはずだ。

 しかしこの年のオフ,彼の人間性を疑うような事件が勃発。俗に言う「裏垢事件」である。

★デュラントの『裏垢事件』とは
 デュラントはツイッターのヘビーユーザーとしても知られており,日々NBAファンとリプライを通じて交流を行っていた。
 2017年9月,一人のNBAファンから「なぜOKCを去ったの?」といったリプライが届く。普通であればスルーされそうなこのツイートになんとデュラント本人から返信が届いたのだ。内容は以下のとおり。

 「彼はサンダーとその監督の元でプレーするのが好きじゃなかったんだ。ロスターはそんなに良くないし,デュラントとラス(ウエストブルックの愛称)だけだった。もしラスがいないと考えたら彼らがどれだけ酷いか分かるだろう。KDは彼らとともに優勝出来ない。

 お気づきの方もいるかと思うがデュラントから届いたリプライの内容は何故か3人称で語られており,まるでデュラントとは別の人間が返信をしているような素振りであったのだ。

 これはデュラントが普段から使用していた思われる裏垢で返信したつもりが,アカウントの切り替えを間違え,本垢のまま返信してしまったと推測されている。(後日デュラント本人も認めている)

 謝罪を行ったものの,前年の移籍騒動も相まってデュラントの人気は失墜。歴代トップクラスの嫌われ者となってしまったのだ。

 しかし17-18シーズンでは憎たらしいほど安定した成績を残し,再びファイナルに進出。またもやレブロン率いるキャバリアーズと対戦するもKDの活躍もあって連覇を成し遂げる。個人としても2年連続のファイナルMVPを獲得した。

 この辺りからデュラントを取り巻く環境は少し変わってきただろうか。ウォリアーズ移籍後には自身の活躍により連覇を成し遂げた。だがしかしウォリアーズは「ステフィン・カリーとクレイ・トンプソン,ドレイモンド・グリーンが作り上げたチーム」であってデュラントはあくまで外様。ファンに最も好かれているのはカリーであってデュラントではなかった。

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 18-19シーズンには当時最高のセンターであったデマーカス・カズンスが新たに加入し,ウォリアーズはスターティングファイブ全員がオールスターというスーパーチームを作り上げた。順調なチーム状況とは裏腹にチームメイトであったグリーンとKDの関係が徐々に悪化。同点で迎えたラストショットの機会にグリーンがエースであるKDにボールを渡さなかったことが原因で試合中に口論へ発展。ただ,後にスティーブ・カー監督が語ったように,チーム練習の際にも同じような光景があったとのことで,これはその延長線上に過ぎないものだったかもしれない。

 そんな中,再びプレーオフに進出したウォリアーズはカンファレンス・セミファイナルでジェームズ・ハーデン率いるロケッツと激突。激闘の末,勝利を掴むものの,KDは第5戦にてふくらはぎの損傷を負ってしまう。KD不在の中,5年連続でファイナルに駒を進めたウォリアーズはトロント・ラプターズと対戦。しかしKD不在の中,1勝3敗と王手をかけられてしまいデュラントは5戦目に強行出場。これが凶となり,第2クォーターで右アキレス腱断裂の大けがを負ってしまい,ウォリアーズもラプターズに王座を奪われるという結末を迎えた。

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 サンダーと去ったときとは違う感情があっただろうか。19年オフ,デュラントは3年間在籍したウォリアーズを去り,ブルックリン・ネッツと契約。同じくスーパースターであるカイリー・アービングと共に再出発する決断をした。

 成程この移籍は既存のスター選手がいないチームをあえて選んだと言えよう。GSW移籍時にはすでに生え抜きのスターが何人もおり,NBAファンのみならず,GSWの一部ファンからも認めてもらうことができなかった経験がある。それならば良い若手は多くいるものの,スター不在のネッツに移籍し,長らくチャンピオンリングが遠ざかっているニューヨークに優勝をもたらそうという思惑があるだろう。確かにアービングがいるとはいえ,ネッツで3度目の優勝を果たした暁にはこれまでKDにつきまとった悪印象は振り払われるだろう。19-20シーズンは怪我やコロナウイルス感染症の影響により全休したものの,来季からは遂に新天地でのKDを拝むことができる。

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 そこで気になるのが古巣であるサンダーとの関係だ。すでにサンダーからはウエストブルックが去り,新体制の様相を見せている。かつてKDへブーイングを送っていたサンダーファンにも時間という薬が効き始める頃合いだろうか。GSW移籍直後はデュラント本人にも「いずれはサンダーに戻ってプレーしたい」という感情があったそうだが,オクラホマでの自身の母へのバッシングなどもあり,今では一切復帰するつもりはないとのこと。あれだけ多くの物をオクラホマへもたらしてくれたKDへの手向けがないまま彼のキャリアの終焉が近づくのはなんとも悲しい。

 ある選手は『I’m back.』との一言で現役復帰,ある選手は『I'm coming home.』の一言で古巣に復帰。どちらもその後優勝を果たしている。今の所は現実的ではないだろうが,ネッツ在籍中にサンダーファンと再び傷を埋め合い,契約満了時にオクラホマへ帰還。その時にはまたウエストブルックとプレーするなんてことがあればNBAファンとしては僥倖であろう。かつて成し遂げられなかった二人での優勝を再びオクラホマで成し遂げて欲しいと願うのは私だけではないはずだ。

 前編はここまで!中編ではサンアントニオを去ったあの現役選手をまとめたいと思います😎(更新時期は未定。)

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