11月22日(日本時間)に,来年1月末発表の「2023年アメリカ野球殿堂」の対象選手が発表されました!それに伴い,MLB30球団ファン合同noteでは,30球団note担当者とMLBファンによる模擬投票を実施します!
実はNYY担当とともにHoF担当も拝命していますので,今回のnoteでは,上記の模擬投票で対象となる主要選手の内10名の紹介や,投票を受ける上での懸念点,展望等を自分なりにまとめられればと思っています。
■今回の投票における特異点
2023年のアメリカ野球殿堂投票は,過去10年の投票と大きな違いがあるかもしれません。それぞれ2007年に引退し,2013年から殿堂入り候補者となった歴代最多762本塁打のBarry Bonds,CY賞7度受賞の大投手Roger Clemens,60HRを3度記録したSammy Sosa,通算200勝&3000奪三振のCurt Schillingといった超ビッグネームたちが10度目となる2022年投票においても落選し,今回の投票からは姿を消すこととなります。
これはいままでの10年間で票を奪い合う要因となっていた4枠が空くことを意味し,得票率を大きく上げる選手の台頭が期待されます。恐らく,これまで得票率が40%程度で伸び悩んでいた後述の選手らが一気に殿堂入りの門戸をくぐり抜けるのではないでしょうか。
■有資格2年目以降の主要選手
主要選手の定義は様々ですが,まずは2022年までに殿堂入り候補者となり,2023年も投票対象となっている選手の中から,前回の得票率が25.0%以上(4人に1人が投票している)となっている8人をピックアップしたいと思います。前回の得票率の降順で紹介していきます。
(1)Scott Rolen(スコット・ローレン)
2038試合 打率.281(7398打数 2077安打) 316本塁打 1287打点 118盗塁 899四球 出塁率.364 長打率.490 OPS.855 rWAR70.1
【受賞歴等:新人王,AS×7,GG×8,SS×1】
投票6年目(前回63.2%)
(2)Todd Helton(トッド・ヘルトン)
2247試合 打率.316(7962打数 2519安打) 369本塁打 1406打点 37盗塁 1335四球 出塁率.414 長打率.539 OPS.953 rWAR61.8
【受賞歴等:首位打者×1,打点王×1,AS×5,GG×3,SS×4】
投票5回目(前回52.0%)
(3)Billy Wagner(ビリー・ワグナー)
853登板 47勝 40敗 防御率2.31 WHIP0.99 422セーブ 903.0回 300四球 1196奪三振 rWAR27.7
【受賞歴等:最優秀救援投手×1,AS×7】
投票8回目(前回51.0%)
(4)Andruw Jones(アンドリュー・ジョーンズ)
2196試合 打率.254(7599打数 1933安打) 434本塁打 1289打点 152盗塁 891四球 出塁率.337 長打率.486 OPS.823 rWAR62.7
【受賞歴等:本塁打王×1,打点王×1,AS×5,GG×10,SS×1】
投票6回目(前回41.4%)
(5)Gary Sheffield(ゲイリー・シェフィールド)
2576試合 打率.292(9217打数 2689安打) 509本塁打 1676打点 253盗塁 1475四球 出塁率.393 長打率.514 OPS.907 rWAR60.5
【受賞歴等:首位打者×1,AS×9,SS×5】
投票9回目(前回40.6%)
(6)Alex Rodriguez(アレックス・ロドリゲス)
2784試合 打率.295(10566打数 3115安打) 696本塁打 2086打点 329盗塁 1338四球 出塁率.380 長打率.550 OPS.930 rWAR117.6
【受賞歴等:MVP×3,首位打者×1,本塁打王×5,打点王×2,AS×14,GG×2,SS×10】
投票2回目(前回34.3%)
(7)Jeff Kent(ジェフ・ケント)
2298試合 8498打数 2461安打 377本塁打 1518打点 94盗塁 801四球 打率.290 出塁率.356 長打率.500 OPS.855 rWAR55.4
【受賞歴等:MVP×1,AS×5,SS×4】
投票10回目(前回32.7%)
(8)Manny Ramirez(マニー・ラミレス)
2302試合 打率.312(8244打数 2574安打) 555本塁打 1831打点 38盗塁 1329四球 出塁率.411 長打率.585 OPS.996 rWAR69.3
【受賞歴等:首位打者×1,本塁打王×1,打点王×1,AS×12,SS×9】
投票7回目(前回28.9%)
■今回の投票で初登場となる主要選手
ここでは「主要選手」といいつつも,殿堂入りに届く可能性があると感じている『rWAR40.0以上』『2000本安打』『300本塁打』『200勝』『400セーブ』といういずれかの基準を1つでも満たす選手をピックアップ。なんとたったの2選手しか該当しませんでした。
(9)Carlos Beltran(カルロス・ベルトラン)
2586試合 9768打数 2725安打 435本塁打 1587打点 312盗塁 1084四球 打率.279 出塁率.350 長打率.486 OPS.837 rWAR70.1
【受賞歴等:新人王,AS×9,GG×3,SS×2】
投票1回目
(10)Francisco Rodríguez(フランシスコ・ロドリゲス)
52勝 53敗 防御率2.86 WHIP1.15 948登板 437セーブ 976.0回 389四球 1142奪三振 rWAR24.2
【受賞歴等:セーブ王×3,最優秀救援投手×2,AS×6】
投票1回目
■投票率の展望
◎冒頭の4枠に加えて,昨年だけで見ればDavid Ortizに投票された78%の得票分も空くことになりますから,Rolenのように10%程度の押し上げで75%に到達するような選手には大いにチャンスがありそう。しかし,HoFトラッカー(394人中309人の投票結果がまとめてある)を見てみると,「2022年投票でRolenに入れなかった」かつ「最大人数となる10人に投票した」というのは集計された309名中わずか9名のみ。つまりRolenに票を投じなかった90名程度のうち,80名はRolen投票する余地があるにも関わらず,彼をスルーしていたことになります。単純にRolenの票数が激増するとはいかないのかもしれません。
◎Heltonに関しては,BondsやClemensに投じていた記者からの支持が厚く,彼らが推移していた60%前半くらいはたたき出せそう。やはり争点となるのはクアーズフィールドだけではなく,「rWARが10.0程度上回っているWalkerが10年目までかかった」ということでしょうかね。
◎WagnerとK-RODについては表裏一体というか,Wagnerに入れる人はK-RODにも入れるし,K-RODに入れる人はWagnerにも入れそう。ただ,実績からみてK-RODには入れるけどWagnerには入れない人が居ても驚きません。両名ともに60%程度の得票と予想。
◎AJはステロイド時代の雄たちのスタッツに割りを食っている感じなので,彼らが消え去った今回投票では結構票を伸ばしていくのかなとも。すでに6回目の投票ということを考えると,50%~60%まで伸ばせないと今後厳しいような気もします。
◎A-ROD,Sheffield,Ramirezについては上で散々書きましたが,Bondsらが落選した今,票を伸ばすことはないと思います。Bondsらのように,「1回目では入れなかったけど5回目からはいれるよ」みたいな人もごくわずかだと予想しています。40%で頭打ちじゃないでしょうか。A-RODの印象アップ効果はそこまでプラスにならないとも思います。
◎Beltranは本当に読めません。ただ,1回目投票は様子見的なところもあると思うので伸び悩むと予想。30%-40%程度に収まるのではないでしょうか。そして2回目以降で5-10%ずつ得票率を伸ばしていくと思います。いずれは殿堂入りするでしょうね。
結論として,今回殿堂入りを果たすのはRolenのみと予想!これもギリギリ75%に達すか達さないかのレベルで均衡すると思っています!!
■筆者の投票結果
【12月1日更新】
今回私が模擬投票にて殿堂入りに票を投じたのは以下の陣容。10人ではなく8人としました。
迷わずに票を投じたのはScott Rolen,Todd Helton,Andrew Jones,Bobby Abreuの4人ですかね。
Rolenは安打数や出場試合数という懸念点を打ち消すほどの守備成績があることを勘案。rWAR70超えの選手がHoFとならないのはおかしな話です。
Heltonもロッキーズであったことはもちろん考慮しましたが,反対にあの時代クリーンであったことも考慮。一塁手でrWAR60はHoFに相応しいかと感じます。
AJは守備。圧倒的までな守備。「歴代№1の守備力を有した中堅手」として語り継がれるに相応しい実績かと思います。
Abreuは本記事にて取り上げることができませんでしたが,2000年代有数の走攻で高い水準のアプローチができた選手だと思っていますし,少なくともいままでの得票率が妥当とは思えません。
次点で「票を入れても問題ないよね」となったのがMark Buehrle,Francisco Rodriguez,Billy Wagnerの3人。
BuehrleはERAだけみれば平凡に感じるものの,ERA+は常に100超え。なによりキャリア16年で大きな故障をしなかったことで,デビューイヤー&引退年を除く14年全てにおいて年間200.0回超えを果たしている歴代屈指のワークホース。勝ち負けが薄れつつある中であっても,通算214勝という数字が輝きを失うことはありません。
K-RODとWagnerについては,400SVを超えているので自動通過させてやれよという感想しかないです。
そしてBeltranについては,文中に書いたとおりですかね。電子機器やリプレイルームを用いたサイン盗みはあくまでキャリア最終盤の出来事であって,彼が2000年代に残した実績は不変と思っています。それだけに,そんなくそつまらんことやめときゃよかったのにね。若手達が掴んだリングにアスタリスクを付ける後押しをしたのは間違いなくBeltranなので。
また,A-ROD・Ramirez・Sheffield・Pettitteといった禁止薬物使用歴のあった選手には一切票を入れませんでした。昨年の模擬投票においてはBondsらに投じていましたが,ここ1年の情報収集を元に「彼らはステロイド時代の被害者であるか」という観点から分析。結果として,どう論理立てても僕にはステロイダー達を擁護できないというところに着地しました。したり顔で「Bonds,Clemensらのいないクーパーズタウンなど虚構(キリッ」とか抜かしてたのが恥ずかしくなりますね。絶対掘り返すなよ。
このことから分かるようにHOUの2017年サイン盗みはドーピング使用より軽量な部類と思っています。
以上が私の模擬投票結果となります。
最後に
ここまでお読みいただきありがとうございます!今回,取り上げる上で全員の詳細なモーメントという面ではあえて全く触れることはしませんでしたが,実際には数字だけではない様々なファクターで投票が行われると思っています。
投票において「正解」は存在しないと思っていますので,投票にチャレンジされる方は色々な観点から投票してみてください!(因みに・・最大で10人選べますが,別に5人だけでもいいし極端な話1人だけでも投票は可能です。私も今回は人数を絞って投票しました。)
BBWAAの記者のように投票結果をツイートしてみると反応も得られると思いますので是非!
<参考>