【HOF】闘将Jim Leylandが時代選考で殿堂入り【Short】

現地12月3日、時代選考委員会(Era Committee)によって、パイレーツ・マーリンズ・タイガースなどで数々の勝利を積み上げた監督Jim Leylandが殿堂入りとなりました。

先日取り上げたのはBBWAA(全米野球記者協会)による投票で引退選手の殿堂入りを決めるもの。今回の時代選考委員会とは監督や審判、エグゼクティブを含む野球関係者に対してもスポットを当てた殿堂入り選考となります。ここに加えて、BBWAAでの記者投票では落選となったものの、時代選考によって殿堂入りを果たす選手もいます。例えば通算493HRを放ったスラッガー・Fred McGriffは、同時期に引退を決めた1990-2000年代の大スターに悉く票を奪われることとなり、10年目の投票でも75%を下回って落選。しかし昨年の時代選考ではMcGriffの長きに渡る功績が認められたことで見事殿堂入りを果たしたのです。

時代選考における特徴は他にもあります。少し前までは殿堂入り候補者の対象が多い故に、
・Early Baseball (1871年~1949年まで)
・Golden Days (1950年~1969年まで)
・Modern Baseball(1970年~1987年まで)
・Today's Game (1988年~現在まで)
との4つの時代に分類し、毎年違う時代の英傑にスポットを当てた選考を行っていたわけですが、昨年からはこの辺りにも変更が加えられており、
・1980年~現在までの引退選手
・1980年~現在までの監督・エグゼクティブ・審判等
・1980年以前の選手(ニグロリーグ含む)・監督・エグゼクティブ・審判等
の3カテゴリを3年毎のサイクルで選考する形
となっています。

また、BBWAAにおいては400人を超える記者投票によって判断されますが、ベテランズ委員会では殿堂入り済みの選手やエグゼクティブ、野球歴史家などが加わった16人が委員となり、そのうち12名(75.0%)以上の可決があれば晴れて殿堂入りとなります。

今年の選考委員の名前も壮観そのものであり、Jeff Bagwell、Tom Glavine、Chipper Jones、Jim Thomeといった直近10年で殿堂入りを果たした名手が並べば、まさに2020年にMarvin Millerと共に時代選考で切符を掴んだTed Simmonsの名も。ある意味で時代を創った前コミッショナーBud Seligや3連覇の名将Joe Torreといったメンバーも見逃せませんよね。

そして今年度の殿堂入り候補者となったのは1980年から現在までに活躍した監督・エグゼクティブ・審判等といった非選手たち。今回16名中15名からの信任を得て殿堂入りを果たしたJim Leylandのほかに、116勝マリナーズを率いるなど通算1,835勝を手にしたLou Piniellaや、かつて巨人でもプレーし「ミラクルメッツ」で知られるWS優勝をもたらしたDavey Johnsonが登壇するも残念ながら落選。1980年代後半の労使紛争を追っていた身としては、Giamattiがコミッショナーに就任したことで空席となったNL会長に就任していたBill Whiteの名が気になりました。Whiteが主導となって、ナリーグ地区再編を強行したFay Vincentにボイコットを巻き起こしたことは以前noteでも触れたとおり。もちろん首謀者的立ち位置にいたのは「ザ・グレート・レイクス・ギャング」と称された5名にはなるのですが、Whiteの反乱もその後のBud Selig就任の遠因とはなっているため、やっぱりSeligはWhiteに票を投じたのかな?と気になりました。(以下参考)

そしてJim Leylandといえば時には厳しい物言いも厭わない闘将であり、1986年~1996年まで務めていたパイレーツ監督時代にはコーチや記者に悪態をつくBarry Bondsに対してDon't f*ck with me(ふざけるなよ)」と一喝。有頂天になりつつあったBondsの人間性を一皮むかせた人物とも言えます。パイレーツを地区3連覇に導いた確かな実力もあり、John. W. Henry時代のマーリンズ監督に就任すると1年目の1997年にWS優勝。2006年から2013年までタクトを振ったタイガース時代は最も皆さんの印象に焼き付いているかもしれません。在りし日のMiguel CabreraやJustin Verlander、Prince FielderにMax Scherzerといった蒼々たるメンバーをまとめ上げ、2012年には再びワールドシリーズの舞台まで上り詰めました。

以降、2017年には威信とプライドを取り戻すために結成されたWBCアメリカ代表の監督に就任。アメリカのために本気で戦える選手をリクルートし、見事に優勝トロフィーを手にしました。Leylandによって2017年大会優勝がアメリカにもたらされていなければ、2023年WBCの熱量もここまでのものにはならなかったのかもしれません。

これほどまでに偉大なLeylandですが、彼自身は殿堂入りすることを全く予想だにしていなかったようでESPNの取材には以下のような談話を述べています。

"I thought when I didn't get [the call] by a quarter of seven, it wasn't going to happen," Leyland said. "So I went up just to rest a minute and get my thoughts together. When my son came up, the phone rang and it was the Hall of Fame. I couldn't believe it. There was definitely a tear in my eye."(原文)

「19時15分までに電話をもらえず、もうだめだと思っていた。それで、少し休んで考えをまとめるために二階に上がった。息子が上がってきたときにちょうど電話が鳴って、殿堂入りだと。信じられませんでした。私の目には確かに涙が浮かんでいました。」(筆者意訳)

Longtime manager Jim Leyland selected to Baseball Hall of Fameより引用

確かに、リビングで電話を受けたのではなく、寝室で吉報を受け取っている様子が掲載されています。この写真、なんか面白くて癖になります。

来年7月21日にはLeylandの殿堂入りスピーチが行われる予定でありますが、彼と並んで殿堂入りを果たす選手は誰になるのでしょうか。BBWAAによる投票結果も来年1月23日に発表されます。

(以下、参考文献)


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