見出し画像

【HOF】2025年殿堂入り投票の展望(+模擬投票のお知らせ)

例年1月に発表されているBBWAAの全米野球殿堂入り投票については当noteでも取り上げているところでありますが、先月11月19日に2025年の殿堂入り候補者が発表されました!恐らくですが、こと今回の投票は日本の野球ファンからの耳目を最も集めるバロットになることは確実。
今回のnoteでは、殿堂入り投票の展望に加え、毎年恒例の「①MLB30球団ファン合同note企画担当者」及び「②読者のみなさま」による模擬投票をご案内させていただきます。

「②読者のみなさま」におかれましては、下記Googleフォームリンクからも投票可能となっておりますので、熟慮の上、ご回答をお待ちしております!!!

■アメリカ野球殿堂入り(Hall Of Fame)投票の概要

・ 殿堂入り選考の対象となるのは、MLBで10年以上プレーした選手のうち、引退後5年以上が経過した選手。
・ 選考対象となった選手は全米野球記者協会(BBWAA)の適性審査委員会殿堂入り候補者とするか否かが議論される。候補者として認められると、殿堂入りの可否を問う投票にかけられる。
・ BBWAAに10年以上所属している記者(約400名)に投票資格が与えられ、通常25~40人の候補者のうち最大10人までの名前を書いて投票する。
得票率75%以上の候補者が殿堂入りとなる。
・ 得票率5%以下の候補者はその回限りで候補から外される。得票率5~75%の候補者は次年度の審査・選考に持ち越されるが、10回目までに75%の得票が得られなければ11回目からは候補から外される。この候補者については一定期間を経た後、ベテランズ委員会(いわゆる時代選考)で殿堂入りが審査されることになる。

以上のスキームからも分かるように,殿堂入り(HoF)とは非常にシビアな制度設計の上で成り立っており,MLBでプレーした選手に送られる最上級の栄誉。他スポーツに目を向けても、ここまで難易度の高い殿堂入りシステムは無いかもしれませんね。


■有資格2年目以上の選手をおさらい

2024年以前からHoF投票の対象となっていた選手の成績詳細については下記noteにまとめてあるため,併せてご覧ください。そのため,有資格2年目以上の選手については,成績よりも昨年度の投票結果にフォーカスした展望を記します。

【HOF】2023年殿堂入り候補者のおさらい&展望!
【HOF】2024年殿堂入り投票の展望(+模擬投票のお知らせ)

2023年はScott Rolenの1名のみに留まった一方、2024年は3人のレジェンドがクーパーズタウン行きの切符を手にしました。もともと初年度での殿堂入りが確実視されていたAdrian Beltreは既定路線であったものの、ロッキーズのフランチャイズプレイヤーであったTodd Helton、そして比較的時間がかかると目されていたJoe Mauerの資格1年目での殿堂入りは多くのファンに衝撃と感動を与えることに。

2024年HoF投票結果(5.0%未満者除く)
Baseball Referenceより引用

一方、殿堂入りまで僅かに5票届かなかったのが大守護神のBilly Wagner。とはいえ、歴代8位となる通算422SVの実績は色褪せることなく、23年から20票近くを伸ばしていたことからも、最終10年目となる今回投票での殿堂入りは濃厚かと思われます!

また、年々得票数を伸ばしながら殿堂入りを狙うのはおなじみAndrew Jones。楽天イーグルスで晩年を過ごしたパワーヒッターの印象が強いですが、全盛期は歴代屈指の中堅守備でならした大名手。同ポジションにおける通算dWAR24.4は歴代1位であり、8年目の今回もどこまで得票率をアップさせられるかに注目が集まります。

そして今年一番予想の難しいと思われるのがCarlos Beltranでしょうか。引退時点においては「殿堂入り確実」とされていたものの、2019年オフに発覚したサイン盗みスキャンダルにおける主犯格として名前が挙がったことで過去2年は46.5%→57.1%と、まだまだ殿堂入りに必要な得票数に遠く及びません。一方で、禁止薬物使用者には見られないようなペースで票数を伸ばしたのも事実であり、もしかすると今回ギリギリで75%を上回る公算も…?

その禁止薬物使用者といえば、こちらもBALCOスキャンダルで薬物使用が発覚したGary Sheffieldが最終10年目においても63.9%で失格に。無論、後ろを追いかけるManny RamirezやAlex Rodriguezらの今後を揺るぎないものにしたとも言えます。(これまで記者の投票に一貫性があったかは別として。)

そしてMauerと同じく有資格1年目ながらも28.8%に留まったChase Utleyにも注目。通算rWARに加え、キャリアにおける単年rWARの上位7番目までを通算した「WAR7」においてもMauerを上回っていることから、もう少し票数が伸びてもいいのかなと思いました。無論、WARが全てを物語るものではないというのは承知の上ですが。
そのほかで言えば、通算実績は申し分ないものの、なぜか票数が減少しているBobby Abreu,Mark Buehrleの2人の行く末も気になるところです。

■今回の投票で初登場となる主要選手

例に漏れず、引退後5年以上が経過かつ、今回の殿堂入り投票にて初めて投票対象となる選手について、3名だけピックアップしてまとめていきます。(少なくてごめんなさい🙇)

■用語集
rWAR(Baseball Reference算出のWin Above Replacement)
oWAR(  〃  のOffensive WAR)
dWAR(  〃  のDiffensive WAR)
WAR7(キャリアにおける単年rWARの上位7番目までを通算した指標)
AS(All-Star Gameへの選出)
GG(Gold Glove賞の受賞)
SS(Silver Slugger賞の受賞)

(1)Ichiro Suzuki(イチロー)

2653試合 打率.311(9934打数 3089安打) 117本塁打 780打点 509盗塁 647四球 出塁率.355 長打率.402 OPS.757 rWAR60.0
【受賞歴等:MVP×1、首位打者×2、盗塁王×1、AS×10,GG×10,SS×3】
投票1年目(前回--.-%)

☆殿堂入りすべき理由
・27歳とプライムタイム中盤でようやくMLBでベールを脱ぐも、WAR7=43.7というインパクトを残して一世を風靡。
・rWAR60.0自体は歴代194位ながらも、2018年に92.9%を得たVladimir Guerreroを僅かに上回る点からも、殿堂入りには十分な数字。
・加えて年間最多262安打、10年連続200安打、通算3000安打といった安打記録の数々を保持しており、NPB合算の4367安打は世界記録。
・更に、2003年から計測開始となったDRSにおいては外野手歴代5位となる+105を計測しながら、史上39人しかいない通算500盗塁を達成した守備走塁のスペシャリスト
・後にMLBを志す日本人選手に大いなる影響を与え、MLBにとって日本人野手の価値を知れ渡した先駆者的存在であることは見逃せない。
・(もちろん、こんなものでは語りきれませんがこのへんで…)

殿堂入り 満票を妨げる理由
・個人的には文句なしの初年度殿堂入り。ただ、それだけだとつまらないので、代えて「満票を妨げる理由」を下記に連ねます。
・イチローを上回るrWAR93.5&3166安打&DRS+200を記録したAdrian Beltreでさえも95.1%に留まったことを考えると、「Beltreに投票しなかった人の食指を動かす必要がある」という難題に突き当たる。Beltreもイチロー同様に非アメリカ人というバックグラウンドを持っていた点も忘れてはいけない。
・そもそも満票を得たのは歴史上でMariano Riveraのみ。注釈付ならばDerek Jeterもですが。レギュラーシーズンのみならず、プレーオフモーメントとチャンピオンリングを数々兼ね備える彼らと比較した際、PS出場がそもそも1回に留まったイチローが満票を得るかと言われると…。

(2)CC Sabathia(CC サバシア)

561登板 251勝 161敗 防御率3.74 WHIP1.25 3577.1回 1099四球 3093奪三振 rWAR61.8
【受賞歴等:サイ・ヤング賞×1、最多勝利×2、AS×6】

☆殿堂入りすべき理由
・先発投手として歴代64位に位置する3577.1回を投げ抜いたイニングイーターで、怪我を抱えつつもデビューした2001年から2013年の全てで規程投球回を達成したワークホース。Sabathiaより上位の63人中、殿堂入りを果たしたのは40人。
・一方、3093奪三振は歴代18位の大記録であり、3000奪三振を記録しながらも殿堂入りを果たせていないのは訳アリのClemensとSchillingのみ。左腕に限ればRandy Johnsonらに次ぐ歴代3位。
・2008年にはTDLでブリュワーズに加入すると、ワイルドカード争いの懸かった後半戦を17登板 130.2回 ERA1.65で投げ抜き、チーム28年ぶりとなるPS出場を演出。さらにFAでヤンキースに移籍すれば、初年度からエースとしてWS優勝に貢献。「史上最高のTDL選手」「最高のFA獲得選手」との言われがあるほど短期の支配力も見事
・標榜すべきはWAR、投球回、奪三振、時代背景等で近しいJohn Smoltzか。同氏は2015年の初年度投票において82.9%を獲得しており、Sabathiaも同等の得票率は見込めるのでは。(もちろんSmoltzにはATL王朝を作ったレガシーやクローザー転向の成功というインパクトも占めたのは言うまでも無く)

★殿堂入りを妨げる理由
・同様に理由をつけるのは難しいが、殿堂入りとなった先発投手の平均rWAR73.0に対して、SabathiaはrWAR62.3とやや開きがある点は憂慮すべき?
・FIPが3.50を下回ったのはわずかに5シーズンのみで、支配的な投球が長期に渡ったわけではないとも言える?一方でFIP-でみれば平均を上回ったのはキャリア終盤の5シーズンのみ。やはり時代背景等に鑑みても、常にリーグ上位の投手であった。

(3)Dustin Pedroia(ダスティン・ペドロイア)

1512試合 打率.299(6031打数 1808安打) 140本塁打 725打点 138盗塁 624四球 出塁率.365 長打率.439 OPS.805 rWAR51.9
【受賞歴等:MVP×1、AS×4,GG×4,SS×1】
投票1年目(前回--.-%)

☆殿堂入りすべき理由
・主力としてワールドシリーズを2度制覇した時代有数の二塁手。通算WAR51.9は二塁手歴代23位ながらも、WAR7においては歴代16位に位置するなど、全盛期の成績は見劣りしない。
・Pedroiaの使用したWilsonのA2000が今なお守備職人御用達グラブとして人気を博すほどの名手。統計開始以降においては通算DRS+99(二塁手歴代4位)、通算UZR87.5(同歴代2位)と傑出した数字を残している。

★殿堂入りを妨げる理由
・短期間で残した実績は見事ながらも、キャリア後半にクロスプレーで負った左膝の怪我によって35歳で引退。ボーダーの一つである通算2000安打にも到達できず。
・安打数は同程度も、WARやWAR7、そして守備指標においても格上的存在のChase Utleyが昨年HoFバロットに登場するも僅か28.8%の得票に留まったほどの状況。Pedroiaだけが票を伸ばすイメージがわかない。

(4)その他、今回登場する選手

上記ではまとめきれませんでしたが、イチロー同様にマリナーズ史に残る投手としてサイヤング賞の受賞歴を持つFélix Hernándezも登場。そしてこちらも攻守強打の二塁手として鳴らし、キャリア終盤にはWBCアメリカ代表にも選出されたIan Kinslerの名前も挙がっています。

そしてNYYファンとしても注目なのがCurtis Granderson。20-20を3度達成した実力者であることももちろんですが、東日本大震災の復興支援として野球教室を開催するなど、日本人にとっても縁深い選手。玄人ファンの愛する希代のユーティリティーことBen Zobristも登場。カブスの呪いを解いた一打は、スポーツ史に深く刻まれています。

その他にも、メイクアップが及んでいれば殿堂入り級の成績を残せていたのではと思わされるHanley Ramirezや、まさかのオリックス加入で人気をあつめたAdam Jonesの名前も連なっています。

■模擬投票のお知らせ

本日12/18(水)~12/29(日)にて,読者の皆さまも対象とした殿堂入り模擬投票を実施します!投票結果については集計後,MLB30球団ファン合同note企画公式アカウントにて発表させていただきます。主な留意事項は以下のとおり。

・お一人様につき,投票は1度限りとしてください。
・候補者の中から最大10名(10名以下であれば人数は問いません)の選手に投票可能です。
・選手成績についてはお手数ですが,原則ご自身でお調べの上,投票ください。(Baseball ReferenceのHoF専用ページでも確認も可能です)
・選考に当たってコメントがあれば別途記載してください。(選んだ理由・選ばなかった理由・自分の中の基準等)
・今回いただいた投票内容,選考理由等については後日アップする集計記事にて掲載させていただく場合があります。
・今回の企画は「殿堂入りの模擬投票」であり,「殿堂入り選手の予想」とは異なるものです。投票に正解は存在しませんので,お気軽に参加ください!

上記ご確認の上,ご参加いただける場合には下記リンクよりお進みください。沢山の方の投票をお待ちしております!!

【以下、参考となりそうな記事】


いいなと思ったら応援しよう!