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K 映画『台風クラブ』20231013@ユーロスペース

台風クラブ感想
1985年の映画の4Kレストア版をユーロスペースで鑑賞。

台風が吹き荒れる田舎のもと、背景も個性もバラバラな中学生たちが一つになっていく様子は、同年代にアメリカで公開されていた『ブレックファストクラブ』を思い起こさせた(鑑賞中は公開年を調べられなかったのでどっちが先なんだろうと思っていたが、奇しくも全く同じ公開年であるという)。

この作品の面白いところは三上と理恵の対比だと思う。

三上は聡明な家系のプレッシャー、自由に生きる同級生たちと過ごす時間が終わり都会に出ると言う不安を勉強することで紛らわしている。彼女もいる。一方、理恵はみんな憧れの聡明な三上くんと付き合っているが、親からの愛情が足りず、やり場のない感情を抱えている。二人とも家庭環境と友達関係の中での不安を抱えている。

しかし、台風が近づくと二人の動きは大きく変わる。
台風が迫るが、台風を気にせず勉強に打ち込む三上と物憂げに窓の外を見る理恵
窓を閉める三上。窓を開ける理恵。

三上は台風の中で学校に取り残され、奔放な同級生たちと一緒にいるがしきりに帰ろうと言う。しかし、そんな三上も何も考えず楽しそうな同級生たちに影響され、台風の目に入るころにはついに歌い、踊りだし、その後何も見出せない自分や同級生に絶望し、自死しようとする。

一方、理恵は台風がきたとわかり、友達や田舎から離れ、都会に向かう。綺麗な服などを買ってもらったり楽しんでいた理恵だったが、大学生なのかよくわからない男の家で過ごすうちに、田舎が恋しくなり、嵐の中に飛び出す。理恵は嵐の中で泣きながら彼らと同じ歌を歌い、元いた場所に帰るために走り回っている。

この2人の関係は台風の目の中(田舎)と台風の外(都会)でうまく対比され、
楽しく安全な田舎で抱えるやり場のない虚しさと嵐の吹き荒れる危険な都会でしか見出せない大切なもの、これらを三上と理恵の視点から描いていた。

三上は死ぬ時(死んだかわからないけど)上半身が埋まり、地を見ていた。

理恵は田舎に戻った時、水たまりに下半身が埋まり、空を見ていた。

嵐に飛び込み本当に大切なものを見出せた者と安全圏の中で見出せなかった者の対比だとしたら、辛辣がすぎるかもしれないけど。



あきら、お前は幸せそうでいいな。


K

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