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西欧中世都市形成論について、いまある知識をもとにした小察。―《森本芳樹氏・宮松浩憲氏らの著作をもとに。》その一…。―

 わたしがいま読み進めている、中世都市形成論ないしその歴史的存在についての書籍に、九州大学出版会の、《西欧中世における都市=農村関係の研究, 1988 / 2 / 29 初版発行 森本芳樹編著》というのと、《西欧ブルジョワジーの起源 ブルグスとブルゲンシス, 1993 / 2 / 28 初版発行 宮松浩憲 著》という2冊がありまして、前者は複数の研究者方の論文集、後者は、宮松浩憲氏の 500 p 弱の大著となっております…。「西欧中世における都市=農村関係の研究」森本芳樹編著 | CiNii Research と、宮松浩憲著『西欧ブルジュワジーの源流 : ブルグスとブルゲンシス』 | CiNii Research というのがそれです。

この二冊に加え、最近は、CiNii 図書 - ヨーロッパ中世都市の起源 という、瀬原義生氏の大著を購入し、すこし、読み始めたばかりであります…。瀬原氏は、京都大出身ですね。立命館大学でながく教鞭をとられたようです…。

ちなみに、森本芳樹氏は、東京大学経済学部を卒業してから、大学院、のちに、九州大学でながく教えられ、九州大学名誉教授ですね。また、宮松氏は、北九州市立大学から大阪大学、九州大学にすすまれ、久留米大学で教鞭をとられていますね。

ともあれ、冒頭に述べた2冊をパラパラとよんで、その内容についての、引用・要約をたよりに、この記事を書かせていただきます…。まず、森本氏編著の作品について書かせていただきたいとおもいます…。 

 西洋史テーマの一つに、西欧中世都市の起源論というのがありますよね…。
 ローマ時代、存続していた都市は、キウィタスなどと呼ばれ、古代の商業網の中で存在していました。
 中世前期のゲルマン民族の流入のなかで、キウィタスは防壁を強化しながらも、つぎつぎと衰退していきました。
 これにかわり、中世において、都市的な存在として誕生するのが、ブールです。修道院や司教座、領主層の所在地などを中心に、商工業をともなった中世的都市すなわちブールが発展していきました。

ドイツ・ベルギー学界によって先行された中世都市形成期の研究では、地誌論と共同体論が、相互に関連しながら中心主題を構成していきました。2核構造、すなわち、前都市的核と、その近くに出現する、ブルグスなどと呼ばれるあたらしい定住地を、西ヨーロッパに共通の現象として理論化したのは、ピレンヌです。彼によると、10 世紀末からの商業復活に伴い、唯一の商人形態である遍歴商人が定住を開始することによって、前都市的核のそばに商人定住地が出現すると解かれています…。

2つの核は対立する性格をもち、封建的社会秩序に適合した前都市的核は、商業を単に結晶させる点に過ぎないのにたいし、自治都市を積極的に創出したのは「近代的」社会秩序に適合した商人定住地で、12 世紀からその本格的囲壁建設は、前都市的核が維持していた軍事的役割をもうばう…。他方、コミューン闘争は司教座都市に限定され、都市共同体の形成はむしろ、商人定住地の自然的発展の結果であったと、ピレンヌはのべています…。

これにたいしては、反論があり、10 ・ 11 世紀の都市領主の時代と、それに続く共同体の時期とに、都市の発展時期を分け、後者において全市民を包含した誓約共同体の結成があり、都市領主に対する革命的運動の中で実現したという説。また、さらに、前都市的核と商人定住地は協働しており、10 世紀からの商人定住、その囲壁建設と前都市的核との領域的合体・商人と新移住者を包含するブルゲンシスの出現による共同体の全都市化、それにつづいて誓約共同体が成立したという説もうまれました。
(引用:西欧中世における都市=農村関係の研究 森本芳樹編著 九州大学出版会 1988, Ⅳ 中世盛期アンジューのブール 宮松浩憲 1. 序論より。)

ベルナルド・ダッディ作 「慈悲の聖母」より、フィレンツェの眺め wikpedia より 。

上記のイメージは、ベルナルド・ダッディ - Wikipedia という画家の、作品です。都市の歴史 - Wikipedia に掲載されています。肖像権などご容赦ください…。すこし息抜きに、イメージをひっぱってきました…。

 次に、西欧中世農村について…。このあたりから、有料エリアとさせていただきます…。

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